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面影は寂しげに微笑む
 けたたましいベルの音に、明実は目を覚ました。
 デジタル表示は七時ジャスト。
 まだ朦朧とする頭をどうにか持ち上げると、明実はベッドに別れを告げた。
 ダイニングキッチンからは、心地よい包丁のリズムが聞こえてくる。
「おはよう、お姉ちゃん」
「おはよ、美由紀」
 美由紀は手慣れた手つきで大根の葉を刻むと、鍋の中へ投入する。
 テーブルの上には、既に目玉焼きとシュリンプサラダ、焼鮭が並んでいる。
 朝が弱い明実の代わりに朝食を作る。それが姉妹同居の条件だと、明実は美由紀に言ったことがある。もちろんそれは冗談だったのだが、結果としてそれは守られ続けている。
 そんな条件など言わなければ良かった。
 憔悴している美由紀の顔を見て、明実は激しく後悔していた。
 明実は忌々しげに、玄関脇に置かれた大きなゴミ袋を睨んだ。
 明実の気持ちなど知らず、半透明のゴミ袋から透けて見える写真の中の男は、満面の笑みを浮かべていた。

 電車が東京駅に到着すると、大勢の人々が吐き出される。
 丸の内北口改札から外に出ると、強い日差しが容赦なく降り注ぐ。
「ねえ、地下から行こうよ」
 貰ったばかりのフリーペーパーを団扇代わりにしながら、明実は美由紀に提案した。
 丸の内・大手町・新橋・日比谷は東京駅を中心とした地下道が充実しており、その気になれば一度も地上に出ることなく済ませることも出来る。信号も日差しも風もない。
「ううん。日差しを浴びないと腐っちゃうから」
 美由紀は力なく笑い、明実の提案を却下した。
(やっぱりダメか……)
 明実は笑顔で美由紀に従いつつ、その胸の内は重く沈んでいた。
 暑いから、地下の方が便利だからというのは方便だ。
 美由紀もそれをわかっている。
 それなのに、美由紀は地上を歩くことを選んだ。
 明実は、ただ黙って美由紀に従うしかなかった。

 炎天下を五分程歩くと、見慣れた九階建てのオフィスビルが姿を現した。
 古ぼけたそのビルが、彼女たちの勤める会社の入っている『第三大手ビルヂング』だ。
 それは同時に、嫌でもそれを眼にすることを意味していた。
 ビルの片隅に置かれた、真新しい花束とジュースやビールの缶。
 美由紀の歩みが止まり、その視線は花束に向けられている。
「行くよ!」
 明実は美由紀の手を取り、強引に歩き出した。
「……うん……」
 明実に引っ張られながら、美由紀も後に続く。
 しかし、その視線はあの一角に向けられたままだった。

 美由紀が都心の大学を選び、明実と同居するようになってから、もう六年になる。
 一緒の時間が長いと、互いの環境について話をする時間も自然と多くなる。
 美由紀はキャンバスライフを楽しげに語り、明実は酔っぱらいながら会社の愚痴を話した。
 美由紀が明実と同じ会社に就職したいと言い出した時、明実は強く反対した。
 反対したが、内心は嬉しくて仕方がなかった。
 スーツに着られている美由紀の姿は微笑ましくもあり、明実の自慢でもあった。
 入社二年目で社内恋愛の彼……隆史を紹介された時、明実は自分でも驚くくらい狼狽したのを覚えている。
 決して美形ではなく、どちらかというと目立つ良さも悪さもない、素直さだけが取り柄のような、頼りないやせっぽちの男。
 本人を目の前にして、これの何処が気に入ったの? と美由紀に確認したこともあるくらいだ。
 その度に隆史は、申し訳なさそうな顔をして笑っていた。
 さんざん文句を言いながらも、明実は二人を応援していた。

 だが、隆史は一人で去った。
 メッセージを何一つ残さず、綺麗に磨かれた革靴だけを残して、彼は飛んだ。

 隆史の家族とは決して仲が悪くはなかったが、彼が何も話さずに別れを告げたことが蟠りとなり、まともに話をすることもなくなってしまい、葬儀も辞退した。
 会社も過労によるストレス障害や鬱の可能性を調査したが、同僚や上司から聞き取りを行った結果、そのような兆候は見受けられなかった。
 目に見えて疲弊していた美由紀に対し、会社は休養を取るように勧めたが、美由紀はそれを固辞した。
 仕事に打ち込むことで忘れようとしたのか、隆史が仕事をしていた場所に居続けることで何かを得ようとしたのか、それは明実にもわからなかった。
 ゴミ袋に思い出の品々を詰めたのは美由紀自身だった。
 そして、それを集積所へ出せずにいるのもまた、美由紀自身だった。

 昼休み、明実はデスクに座り、答えの出ない考え事を繰り返していた。
 もし〜だったら。もし〜していれば。もし〜じゃなければ。
 いくら身内でも、その痛みが完全に理解できるわけではない。
 あんな奴忘れてしまえと、はっきり言ってしまいたくなる時もある。
 しかし、それが当事者以外だから言える言葉だということは、明実自身が一番理解している。
 側にいてあげるくらいの事しかできない。
 明実は涙が出そうになるのを堪え、わざと大きなあくびをした。
 その時パソコンの画面上に、新着メールが届いたことを知らせるメッセージが表示された。
 差出人は美由紀だった。
『書類が片付かない(>_<) 遅くなるから先に帰っててm(_ _)m』
 ふう、とため息をつき、返信ボタンを押す。
『無理すんなよー(#゜Д゜) オムライス作っといたげるよん(´ε` )』
 送信ボタンを押し、大きく伸びをする。
(あれこれ考えてないで、出来ることをやるしかないか)
 明実は自分に活を入れると、手つかずだったおにぎりを頬張った。

 終業のチャイムが鳴り、明実は美由紀に『おさきー(´∀`*)ノシ』とメールを送るとパソコンの電源を落とし、会社を後にした。
 あの場所を避け、明実は地下道を歩く。
「まるでモグラやミミズみたいね」
 初出勤で地下道を利用した時、美由紀は笑っていた。
「あんたね、東京を支えるサラリーマンの皆さんに謝んなさい! せめてオケラか働きアリにしなさい!」
 明実がそう応えると、美由紀は「そっちの方が酷いって」と言いながら大笑いしていた。
(オケラで構うもんか)
 一秒でも早くあの花束から遠ざかりたくて、明実は早歩きで地下道の人波を追い越していった。

 鍵が開く小さな音に、明実は目を覚ました。
 いつの間にか眠っていたらしい。時計を見ると午前零時過ぎを指している。
 玄関の方を見ると、美由紀がヒールを脱いでいるところだった。
「あ、起こしちゃった?」
「いや、起きて良かったよ。このまま寝続けたら夏風邪ひいちゃってた」
「それじゃ、ちゃんとベッドで寝なよ」
 そういう美由紀の笑顔に、明実はどことなく違和感を感じた。
「……何かいいことあった?」
「ううん」
 応える美由紀の笑顔が柔らかい。
「そう……それじゃ、先に寝るね。オムライスはちゃんとチンしてね。食べ終わったらお皿は軽く水で流してから流しに漬けて」
「わかってるって。おやすみ、お姉ちゃん」
 美由紀に背中を押され、明実は自室に押し込められてしまった。
(なんだろう。吹っ切れたのかな?)
 明実は頭をひねりながら、ベッドに横になった。

 いつも通りのけたたましいベルの音で、明実は目を覚ました。
 昨晩はアルコールを摂取していなかったのに、酷く頭が重い。
 美由紀の小さな変化についてあれこれ考えて、なかなか寝付けずにいた所為だった。
 扉の向こうからは、包丁の心地よいリズムが聞こえてくる。
 そしてハミングも。
「おはよう、お姉ちゃん」
「お、おはよ」
 晴れ晴れとした美由紀の笑顔に、明実は一瞬言葉を失った。
「また二日酔い? 今朝はしじみ汁だからすっきりするよ」
「あ、いや、そういうわけじゃ……」
 テーブルの上には野菜スティック、ほうれん草のおひたし、ぶりの照り焼き、そしてしじみ汁が並んだ。
 明実はそれらを五分で平らげ、一息つく。
 ふと玄関先を見ると、あのゴミ袋がない。
「美由紀、あれ……」
「さっき集積所に出してきた。燃えるゴミはこっちに移したけど」
 そういって美由紀は、キッチン脇の生ゴミの箱を指さした。
 燃えるゴミ……思い出の写真や手紙が、生ゴミと一緒にあの中にある。
「美由紀、あんた」
「大丈夫だから」
 明実の言葉を制し、美由紀は宣言するかのように応えた。
「でも……」
「もう、大丈夫だから」
 そう言いきる美由紀の顔には、無理も覚悟も隠れていない。
 まるで何もなかったかのようにすっきりとしている。
 その姿に、明実は何も言えなくなった。

 改札を出て信号を渡り、二人は見慣れた通りを歩く。
 やがて『第三大手ビルヂング』が見えてくる。そしてあの花束も。
 それらの花束は会社の同僚やプライベートでの友人が供えたものだ。
 勿論、美由紀が供えた花束も、その中に混じっている。
 その花束の前を、美由紀は素通りした。
 明実は一瞬、自分がまだ寝ているのではないかと疑った。
 しかしそれは夢などではなく、美由紀はセンサーに入館証をかざすと、ビルの中へ入っていく。
 明実は慌ててその後に続いたが、酷く混乱していた。

 明実の混乱はずっと続いた。
 そのメールが来るまで、自分が業務をこなせていたのかどうか、全く覚えていなかったくらいだ。
 メールは美由紀からで、『しばらく残業が続きそう(>_<) ごめんねm(_ _)m』と書かれていた。
 文面にもおかしいところはない。
 何があったのかはわからないが、美由紀は隆史の思い出と決別した。
 それは喜ばしいことに違いなかった。
 だが、唐突すぎる。
 もしかしたらずっと考えに考えて、たまたま今朝から吹っ切ることにしたのかも知れない。
 だとしたら不器用な美由紀のことだ、無理をしているのがあからさまにわかるはずだ。
 新しい恋が始まったのだろうか。
 隆史と同じくらい素朴だけが取り柄の美由紀が、そうサバサバと気持ちを切り替えることなど出来るんだろうか。
 恋は病気だ。美由紀でもどうにかなってしまうものなのかも知れない。
 だけど……。
 そこまで考えて、明実は自分が何故モヤモヤしているのか気づいた。
 隆史に同情していたのだ。
 自分勝手に人生を閉じ、妹を捨てた男に同情していた。
 明実はそんな自分に腹を立てた。

 それから数日、明実は美由紀に干渉するのを控えた。
 朝は美由紀の笑顔を見ることが出来たし、メールもまめに送信してくる。
 美由紀の残業はそれからも続き、別々の帰宅になっていたが、気にしないよう努めた。
 姉の手前、ばつが悪くて残業と言い訳し、誰かと語り合っているのかも知れない。
 いずれその時が来れば、自分で話をしてくれる。
 明実はその時を待つことに決めた。

 そんな日々が十日程過ぎた。
 朝、明実はベルの音が鳴るよりも早く目を覚ました。
 朝が弱いのは相変わらずだったが、眠りは深く、疲れや頭痛などはなかった。
 キッチンからは楽しげな歌声が聞こえてくる。
「おはよ」
「おはよう、お姉ちゃん」
 美由紀が笑顔で応える。
 その目の下に隈が浮かんでいる。顔色も心なしか青白い。
「美由紀、あんた、疲れてない?」
「ちょっとね。でも大丈夫。無理はしないから」
 笑顔に曇りはないが、やはり顔色が悪い。
「残業なんか、あんたんとこの狸部長に押しつけちゃえばいいのよ。とにかく早く帰って早く寝ないと、若い時の無理は三十越えたら一気に倍返しだからね」
「さすが経験者。説得力のあるアドバイス、痛み入ります」
「こらっ!」
 笑いながらも、明実の心配は晴れずにいた。

 その夜も、美由紀は深夜に帰宅した。
 明実は寝付けずに、自室のベッドで美由紀の足音を聞いていた。
 シャワーを浴び、食事を終え、美由紀が自室に入ったのを確認すると、明実は目を閉じた。

 翌朝、いつも通りの時間に目を覚まし、朝食を摂り、二人で駅に向かう。
 何気ない会話、笑う美由紀、釣られて笑う明実。
 どちらも上の空の、流れだけの会話が続く。
 美由紀は浮かれている。
 一方の明実は、今日成すべき事を整理していた。

「どういう事なんですか?」
 開口一番、明実はその男……美由紀の上司である狸部長こと建部部長に食ってかかった。
 昼休み、他の部長連中と共にランチを食べてきた帰りを明実は待ち構え、捕獲したのだ。
「どういう事と言われても」
「美由紀のことです。あの子だけ毎日終電近くまで残業させて、ご自分は会席料理ですか!」
「い、いや、アケちゃん、ちょっと落ち着いて……」
「その呼び方はやめてください。もう建部さんの部下じゃないんですから。それよりも、残業のことです!」
 明実は建部に迫った。
 明実より年齢も体積も二回り以上ある建部だが、明実の迫力にすっかり気圧されている。
「だから、儂は日向君、いや、美由紀君に残業はさせていない。あんな事があった後だ、上層部からも問題が起きないよう配慮しろと念を押されている」
 建部の言葉に嘘はないと、明実は確信した。
 建部が本当のことを言う時、言う必要のないことまで喋りまくる癖を、彼の部下だった頃から見てきたからだ。
「わかりました。あと、部内で妹にちょっかい出してる奴はいませんか?」
「いい子だから隠れファンは多いだろう。だが、こんな時を狙う非常識な輩は儂の部下にはいない。これは断言してもいい」
 変に生真面目で仁義に篤いところが部下に好かれていることを、当の本人は知らない。
 明実は建部に深々と頭を下げた。
「失礼の数々、本当に申し訳ありませんでした。もし妹に何かありましたら教えてください」
「わかってる」
 建部は笑顔で応えた。
「失礼します」
 明実は再び深々と御辞儀をすると、その場を後にしようとした。
「明実君」
 建部が彼女を呼び止めた。
「はい?」
「君もあまり根を詰めず、無理をするな。儂から見れば、君も相当疲れているように見える」
 その顔には、父のような優しさと労りの気持ちが浮かんでいた。
「……ありがとうございます」
 美由紀は三度、頭を下げた。

 オフィス中のスピーカーから、定時終業を告げるメロディーが流れる。
 窓の外はうっすらと夕景に変わりつつある。
 明実は退社すると道路向かいのビルの影に隠れ、『第三大手ビルヂング』の正面玄関を見張った。
 地下一階には地下道へと直結する出入り口があるが、美由紀はそれを利用しないと、明実は確信していた。
 やがて、美由紀が正面玄関から出てきた。
 美由紀はやはり花束には目もくれず、信号を渡ってくる。
 明実はとっさに物陰に隠れたが、美由紀はその横を通過せず、明実が隠れているビルの正面へとまっすぐ歩いていく。
(そっか、ここのコーヒーショップ)
 このビルの一階は有名なコーヒーチェーン店が入っている。
 明実は慌てて、店内が見渡せる場所に移動した。
 美由紀は窓辺の席に座り、文庫本に視線を落としていた。
 傍らにはマイカップ。恐らく中はミルクラテだろう。
 どうってことのない、ありふれた風景。
 自分の時間を有意義に使っているだけにも見えるし、誰かとの待ち合わせかも知れない。
(わたし、何をやってるんだろう……)
 植え込みの縁に座って携帯をいじるふりをしながら、妹を尾行している自分の姿を顧みて、明実は惨めな気持ちになった。

 オフィス街を行き交う人々にとって、そこは居場所ではない。
 好きな飲食店も居酒屋も、便利な書店も足つぼマッサージもある。
 丸の内や大手町にある殆どのビルの地下には、必ずと言っていい程コンビニが入っている。
 しかし、それらは一時的な器に過ぎない。
 午後八時を過ぎ、路上を歩く人影もまばらになると、それが顕著に表れる。
 電光掲示板のように灯っていた窓の明かりが次々と消され、皇居沿いの道路を通る車も少なくなる。昼間の喧噪は彼方へと去り、足早に帰る人々の背中を夜風が撫でる。
 足を止める人は殆どなく、そのいずれもがすぐに歩き去っていく。
 同じ場所にずっと居続けているのは、美由紀と明実だけだ。
 美由紀は時折ミルクラテを口にしながら、文庫本のページをめくる。
 窓のすぐ向こう側に見える花束のことを、気にするそぶりも見せずに。
 明実は興味のない携帯サイトを流し見ながら、トートに突っ込んだマイボトルを取り出し、すっかり温くなった麦茶で乾きをごまかしていた。

 間もなく深夜十一時になる。
 殆どのビルは明かりが落ちて夜景に溶け込んでいる。『第三山手ビルヂング』も同様だ。
 路上に添えられた街路灯が、嫌みのようにあの花束を照らしている。
 その時、美由紀の元に店員が歩み寄り、なにやら話しかけた。
 美由紀は店員に御辞儀をすると文庫本にしおりを綴じ込み、マイカップの中身を飲み干して流しで中を洗い流し、ペーパータオルで拭き取るとトートの中に仕舞った。
 再び店員に御辞儀をすると、美由紀は店から出てきた。
 それを見計らって、店の照明が落とされる。
 美由紀はまっすぐ、街路灯に照らし出されたあの場所を見つめていた。
 あれだけ意識していなかったはずのあの場所に、愛しげな視線を送っている。
 明実は植え込みの裏側に隠れ、その様子を伺った。
 信号が変わり、美由紀は駆け足で花束の側に駆け寄る。
 恋人がそこにいるかのように。
 街路灯が笑顔の美由紀を照らす。
 しかしその笑顔は花束に向けられているのではなかった。
 美由紀は花束に背を向け、街路灯の明かりが降り注ぐ、何もない路上の中空を見つめていた。
 やがてそこに、うっすらと影が姿を現した。
 影は徐々に大きくなり、美由紀よりもやや背の高い、黒い固まりになった。
(え……?)
 明実は息を飲んだ。
(あれはまさか……隆史の……霊?)
 美由紀は黒い影に寄り添うように立ち、満足げな微笑みを浮かべている。
 明実は我慢できず、信号が変わるのを待たずに横断歩道を駆け抜け、美由紀へと駆け寄る。
「美由紀!」
「あ、お姉ちゃん」
 突然の姉の登場に驚くそぶりも見せず、笑顔の美由紀が振り返った。
「ほら、隆史さん」
 美由紀は笑顔であの影を指す。
(……!)

 それは隆史の影などではなかった。
 無数の微少な羽虫が作り出した虫柱だった。
 それが不定形に流動を繰り返しながら、そこに留まっているだけに過ぎなかった。

 明実は美由紀の両肩を掴み、大きく揺さぶった。
「美由紀! しっかりしてよ! これはあいつじゃない! ただの虫よ!」
 しかし美由紀は笑顔を浮かべたまま、少し困ったような顔になるだけだった。
「やだなあお姉ちゃん。ちょっと隆史が留守にしたからって、そんなに怒らなくてもいいじゃない。隆史も困ってるじゃない」
 ねえ、と、美由紀は虫柱に向かって苦笑する。
 ただの虫の固まりの中に、美由紀はあの愚直な笑顔を見ているのだ。
 あの残業の夜、たまたま美由紀はこれを目撃したに違いない。
 そこに面影を求め、刹那の逢瀬を重ねるためだけに、毎日、あの店で待っていたのだろう。
 それを思うと明実は堪えきれなくなった。悲しみと怒りが一気に溢れ出た。
 彼女は虫柱の前に立つと、それを蹴散らし始めた。
「何なのよあんたら! 何でこんなところに出てくるの! 消えろ!」
 わめきながら、明実はがむしゃらに手足を振り回す。
 その頬に涙が伝い、視界が朧気になっても構わず、彼女は虫を追い立てた。
 やがて影は四散し飛び去っていった。
「ほら、あれはただの虫で……」
 振り返った明実が眼にしたのは、路上に横たわる美由紀の姿だった。

 過労だと医師は診断した。
 個室のベッドで眠る美由紀の傍らには、数本の栄養点滴がぶら下がる点滴台が鎮座している。
 明実は朝まで美由紀の寝顔を見ていた。
 ただの幻を追うだけなら、こんなに窶れるはずがない。
 美由紀はちゃんと、隆史の死を理解している。
 一方で、それが受け止められない自分がいて、その二つの気持ちがお互いを騙し合おうとして、それが彼女に無理をさせた。
 結局、自分は何もしてあげられなかった。
 明実はそれが悲しかった。
 朝になり、明実は室内の電話から建部部長に連絡を入れた。
 建部は多くを聞かず、美由紀の療養休暇を承諾し、傷病手当申請書を発行するよう総務に取り計らってくれると約束してくれた。
「君も美由紀君に付き添うんだろ? 君の部署には儂から伝えておく」
「ありがとうございます。それでは失礼します」
 明実は何度も頭を下げ、電話を切った。

 正午を過ぎても、美由紀は目を覚まさなかった。
 それだけ疲弊していたのだろう。
 明実は滋賀に住む母に電話し、美由紀が退院次第、すぐに帰郷する旨を告げた。
 母は上京すると言い出したが、明実はそれを止めた。
 優しいが物言いがストレートすぎる母を、今すぐ美由紀に逢わせたくはなかったからだ。
 もしかしたら、明日にでも無理矢理上京してきてしまうかも知れない。
 その時は部屋の整理や雑務をお願いして、なるべく双方が落ち着く時間を稼がないと。
 電話を切ると、明実は大きな溜息をついた。

 消灯のアナウンスが流れ、間もなく廊下の蛍光灯が切られた。
 室内の明かりを消し、明実は付添用ベッドに横になる。
 窓の外から、廊下の非常灯の淡い光が差し込み、ベッドの上の美由紀の頬を仄かに照らす。
 四本目の大きな点滴パックがその胸元に影を落とす。
(このまま眠り続けた方が、美由紀にとっては幸せなのかも)
 ふと、明実の脳裏にそんな思いが過ぎる。
 痛みも感じず、何の影響も受けず、辛い過去を忘れて眠り続けることが、今の美由紀に必要な癒しなのかも知れない。
 例え、そのまま目覚めなかったとしても。
(でも……)
 明実の心はそれを拒んだ。
 今はそれが必要でも、いずれ目覚め、そして立ち直って欲しい。
 そして一緒に笑い、一緒に泣きたい。
 わたしには美由紀が必要だ。
 美由紀は、わたしの愛する妹だ。
(……そう思うのは、わたしの我が儘なんだろうか……)
 美由紀の寝顔は、明実に何も応えてはくれなかった。

 ぴちゃ……ぴちゃ……。
 規則的に繰り返す水垂れの音に、明実は目を覚ました。
 いつの間にか眠っていたらしい。
 室内はまだ暗い。
 水音は美由紀のベッドの方から聞こえてくる。
 ベッドを見ると、そこに美由紀の姿はなかった。
 引き抜かれぶら下がったた点滴針からしずくが滴り、床に水たまりを作っていた。
 明実は飛び起き、トートを掴むと病室から飛び出した。

 深夜の『大手第三ビルヂング』前に明実を乗せたタクシーが到着したのは、それから数分後だった。
 漆黒の墓標のようなビル前には誰もいない。
 街路灯に照らされたあの一角にも、美由紀の姿はない。
 あの忌々しい虫柱もなかった。
 上を見上げるが、そこにも人影はなかった。
 明実は正面玄関に向かい入館証をセンサーにかざすと、自動ドアが静かに開いた。
 運良くエレベーターが一階に待機しており、明実はすぐに飛び込み、最上階のボタンを押した。
 エレベーターは静かに上っていくが、今はその中途半端な速度が忌々しい。
 ゆっくり切り替わる階数表示に明実は苛立った。
 そしてエレベーターが最上階の九階に到着すると、明実はすぐ隣の階段を駆け上がった。
 屋上へと続く扉のドアノブは破壊され、床に転がっている。
 ドアノブの傍らには、『立ち入り禁止』の金属製の立て札が転がっている。
 その皮肉を笑う余裕などなかった。
 明実は扉を押し開いた。

 冷たい夜風が明実の頬を撫でる。
 空には雲一つなく、いくつもの星々と巨大な月が瞬く。
 その月光に照らされた白いシルエットが、屋上を覆うフェンスの向こう側に立っている。
 パジャマ姿の美由紀だった。
 緩やかなウェーブがかかった黒髪が風に揺れる。
「美由紀!」
「お姉ちゃん。待ってたよ」
 その笑顔が、月光に透けるかのように儚い。
「美由紀……帰ろうよ。一緒に岐阜に帰ろう。お父さんもお母さんも待ってるよ。秋の宵祭、美由紀も楽しみにしてたでしょ。リンゴ飴も綿菓子も五平餅も買ってあげる」
 なんて薄っぺらい言葉しか出てこないんだろう。
 明実は悔しくて、悲しくて、ぼろぼろ涙を流した。
 ゆっくりフェンスに近づき、二人の距離が縮まる。
 美由紀も泣いていた。泣きながら、真っ直ぐ明実を見つめ返していた。
 明実の手がフェンスに触れる。その指先に美由紀の指が重なり、そこから仄かなぬくもりが伝わってくる。
「……お願い……生きて……」
 絞り出すように、明実は訴えた。
 美由紀は困ったような、それでいて嬉しいような、そんな笑顔を見せた。
 そして、明実の指からぬくもりが離れてゆく。
「彼が待ってるの……。ごめんね、お姉ちゃん」
 明実に背を向け、美由紀は闇夜に身を委ねた。
「美由紀っ!!」
 明実はフェンスに縋った。

 ゆっくりと美由紀は落下していく。
 あの街灯が指し示す場所へ向かって。
 そこに佇む影があった。
(あれは……!)
 虫柱ではなかった。
 寂しげな笑顔を浮かべた隆史が両手を広げ、そこにいた。
 美由紀も両手を広げ、隆史へと向かってゆく。
 その時、明実は見た。
 隆史の笑顔が歪むのを。
 そして隆史だったものは輪郭を崩し、美由紀を包み込むように広がった。
 まるで、獲物を捕らえようとする掌のように。
 次の瞬間、鈍い音がオフィス街に響いた。
 その音が響く前、明実は確かに聞いた。
『違う……!』
 美由紀の最後の叫びを。

 明実がビルを出た時、既にその近辺には人だかりが出来ていた。
 人垣をかき分けると、その中心に美由紀が横たわっていた。
 美由紀の姿は驚く程綺麗なままだったが、純白のパジャマは深紅に染まり、それは彼女の周囲にも広がっていた。
「美由紀、美由紀……!」
 明実は美由紀の傍らに座り、その手を握りしめた。
 大きく見開かれた美由紀の瞳には、深い絶望の色が刻み込まれていた。
 遠くからサイレンの音が近づいてくる。
 人垣は離れてゆき、一瞬、静けさが戻った。
 その静寂の中に、何かが混じっている。
 明実は奇妙な違和感を覚え、耳をそばだてた。
 ぶう……うん。
 微かに、何かが聞こえる。
 明実は周囲を見渡し、言葉を失った。
 血だまりの上に無数の虫が飛来し、その血をすすっていた。
 それは、あの虫柱を作った虫達に間違いなかった。
 硬直する明実を尻目に、虫達は己の腹を満たすと、群れを成して虚空の彼方へ飛び去っていった。
(最初から、このためだけに……!)
 虫達の消えた夜空を見上げた体制のまま、明実は意識を失った。

 それから数日のことを、明実は余りよく覚えていない。
 目を覚ますと病院のベッドの上で、かつて美由紀がしていたのと同じ栄養点滴がその傍らにあることに気づいた。
 美由紀の葬儀は両親が済ませていた。故郷の岐阜で、密葬に近い形で執り行ったのだという。
 あの夜倒れてから、それだけ長い間、明実は眠り続けていたのだ。
 目覚めてからも、明実の感情は時を刻むのを忘れたかのように凍り付いていた。
 どれだけの騒ぎになったのか、病床の明実には知る由もなかった。
 一度、建部部長が見舞いに訪れたが、その顔色から、尋常ではない苦労があったことが容易に想像できた。
「申し訳ない。今月いっぱいで依願退職という形にして欲しい。ありとあらゆる手当をつけるよう、社長には確約して貰っている」
 言いづらそうに建部が切り出した話も、明実はすんなりと受け止めることが出来た。
「わかりました」
「体調が回復次第、簡単な引き継ぎと挨拶をしてもらう事になる。それと……入館証を今、渡して欲しい」
 それも当然のことだ。明実はトートをたぐり寄せ、入館証を取り出すと建部に手渡した。
 六年前の入社時に撮影した、社会人のヒヨコだった自分の姿がそこに写っていた。
 建部はそれを受け取ると、嗚咽を漏らした。
「すまない……儂は何の力にもなってやれなかった……君のことも、美由紀君のことも、救ってやれなかった……」
「いいんです。これは……仕方がなかったんです」
 そう思うしかなかった。

 二週間後、明実は退院した。
 マンションへ帰宅すると、既に殆どの荷物がなくなっていた。
 両親が全て片付け、必要なものだけを岐阜へ送付したのだろう。
 翌日、明実は身辺整理のために出社した。
 六年間に蓄積してきたものは、一日で片付けるには多すぎた。
 それでもどうにか整理をつけた頃には、既に夜の帳が窓の外を覆っていた。
 建部部長に連れられて、明実は正面玄関を出た。
 建部は地下を勧めたが、彼女は美由紀に最後の別れを告げたくて、その申し出を断った。
 街路灯が真新しい花束の数々を照らし出している。
 明実はその前に跪くと手を合わせ、そっと目を瞑った。
 建部も彼女の隣に立ち、それに習う。
 静寂がその一角を包む。
 明実は黙祷を終えると立ち上がり、花束に背を向けた。

 その明実のすぐ目の前に、それはいた。
 美由紀の姿をした影が。
 その顔に、寂しげな微笑みを浮かべて。


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■講評

いやぁ、上手いです。
メリハリが利いてて、読んでるうちにぐいぐい引き込まれました。
満点にするかどうか迷ったのですが、個人的には展開にもう一捻り欲しいなぁとも思ったので、この点数でお願いします。

あと、本筋に関係ないところで気になったのですが、お母さんが滋賀に住んでて、二人の故郷は岐阜なんですかね?
ここだけちょっと引っかかりました。


名前: PM ¦ 19:30, Saturday, Jul 18, 2009 ×


かなり面白かったです。長文ではありますが、それを感じさせない文章で、スラスラと読めました。足りない部分も無く、お手本にしたい位です。

名前: kazuo ¦ 18:04, Sunday, Jul 19, 2009 ×


上手いです。

名前: kojima ¦ 14:58, Monday, Jul 20, 2009 ×


 丁寧に良く書かれていると思います。
 怪物の設定もおもしろい。

 怪物が出るだろうという所にやっぱり怪物が出て終わっているのがもうひとつ物足りない感じですね。
 連鎖させることで余韻を作り出しているのも面白いんですが、クライマックスを飛び越えてエピローグには行ってしまった感じかな。

【アイデア】+1、【描写力】+1、【構成力】0、【恐怖度】0

名前: ユージーン ¦ 20:54, Wednesday, Jul 22, 2009 ×


ああ、これはいいですねぇ…しっかり練り上げられた構成と、達者な文章力が相まって、読み応えのある作品に仕上がっています。もう一捻りあれば、フルスコアも間違いなかったのでは。

発想・1 構成・1 文章・1 恐怖・0

名前: 三面怪人 ¦ 00:34, Saturday, Aug 01, 2009 ×


アイデア 1
描写力 1
構成力 1
恐怖度   1
長文ですが、すんなりとストーリーに入れて大変読みやすかったです。また情景描写もしっかりされているのでシーンが描き出し易かったです。姉妹の日常が明るめに描かれているのも怪異との暗とのコントラストが出てよかったと思います。
蟲柱を霊と結びつけたのは斬新ですね。
東京という街や建物の感じなど設定がしっかりしているので不自然さがなかったです。やはり設定は大事ですね。リアルにするためにも。
非常にそのあたり勉強になりました。
絶望的なラストも圧巻です。姉妹のメールの絵文字が個人的に好きです。

名前: 妖面美夜 ¦ 00:31, Monday, Aug 03, 2009 ×


・アイディア+1
 羽虫の習性(?)が恐怖譚らしくて非常に良いと思う。『違う……!』のくだりなども。
・描写と構成−1
 文章の巧拙以前に、前振りが長すぎる。必ずしも必要でない贅肉的な描写がかなり多い(特に心情描写のくどさ、同じ内容の繰り返し)。オチの為に想いなどをしっかり説明しておかねば、というのは分かるが、せめて、「それは隆史の影などではなかった。」からのテンポの良さで前半も読ませて欲しかった。
 「昼休み、〜」からや「どういう事なんですか?」からの場面など、RPGのおつかいイベントの退屈な部類になってしまっている気がするのも残念。役目のあるシーンだというのは分かるのだが。
 全体的に長編の手法で短編を書いているなぁ、という印象で、もういいから早く怖い部分やオチに入ってくれ! というのが読中の正直な感想。読み進めるのが苦痛だった。
・怖さ+1
 怖がりたい部分で怖いことが起こったのは良かった。また、虫を無機質に描きながらも、悪意らしき物を匂わせている書き方も良い。
・買っても後悔しない魅力±0 虫柱のアイディアは本当に良いと思う。しかし、コストパフォーマンスの問題で、「こんなに長く文章を読まされてこの程度のオチ?」と強く思ってしまう私がいる。

名前: わごん ¦ 18:32, Monday, Aug 03, 2009 ×


アイデアと尺のバランスのとれたいい作品だと思う。
虫の酷く高度な戦略に舌を巻くが、最後のオチは残念ながら予想通りだった。
ここで読者を裏切るような展開があれば、本当に凄かったと思う。
恐怖度については、描写が控えめなこともあってほどほどだと感じた。

アイデア  1
文章    1
構成    1
恐怖度   0

名前: 鶴の子 ¦ 20:49, Wednesday, Aug 05, 2009 ×


丁寧に描かれた姉妹の暮らしぶりが悲劇に助走を付けていて、大変な効果を生み出していると思います。人物設定といいますか、キャラ立ちも素晴らしいですね。登場人物すべてが血の通った人間として感じられ、感情移入して読むことができました。
残念ながら私の恐怖のツボとは違ったのですが、この作品の物悲しさがとても心に残りました。

*人物+1 *描写+1
*雰囲気+1 

名前: げんき ¦ 21:16, Saturday, Aug 15, 2009 ×


フリとしての日常描写が非常に良く書けていて、最後の絶望感がより引き立てられていると感じました。
建部の描写や説明が少しくどく思われるところもありましたが、是非多くの人に読んでもらいたい良策だと思います。

名前: もりもっつあん ¦ 01:19, Sunday, Sep 06, 2009 ×


なかなか良いと思います。テーマである虫と絶望が上手く使われていますし、描写も丁寧で読みやすい。
ただ、前置きがちょっと長いかな。

名前: 水本しげろ ¦ 20:31, Friday, Sep 18, 2009 ×


これだけ書ける人だったら、きれいな起承転結に収まらずに、もっと冒険や実験をして欲しかったと思います……。

名前: あおいさかな ¦ 22:22, Friday, Sep 18, 2009 ×


たいへん丁寧に書かれた良作だと思います。
「虫柱」というアイテムの使い方も素敵です。

アイディア 1
描写力   1
構成力   1
恐怖度   0 

名前: ユーコー ¦ 23:27, Saturday, Sep 19, 2009 ×


女性週刊誌にあるような漫画の手法に近い、心理描写が多用された、怪集の種作品では個性的な作品の一つです。

なのですが、種作品公開時に、実はこの作品は最初の何行かを読んだだけで、後は全く読まずに手つかずの状態でした。
冒頭から日常が長く描かれ、先を読もうかと興味をそそられなかったのです。
細かい所から書かれるのは作品の雰囲気を作る面でいいとは思いますが、この作品は何をしたいのか、もっと最初から読者の掴みを仕掛ける積極性を持ってほしいところです。

また、明実の心理描写は分かりやすいと思いますが、思案と逡巡が何度も繰り返されるせいで肝心の物語の進行に比べてやや長いように感じました。セリフの感じも心理描写も全てが少女漫画風に読みすすめれば良いのかもしれませんが、ホラーらしい妖しげな予兆がなかなか見えてこないだけに、もうちょっと構成を切り詰める必要があると思います。

名前のミスについては、読んでいた私も所々で姉妹どっちの話をしているのか、実のところ分かりづらかった時がありました。
作者の方ももしかしたらつい間違えたのかもと想像したりしますが、言葉遣いを変えるなどして姉妹の差違をもう少し分かりやすくしても良かったかもしれません。
漫画であれば容姿で書き分けられますが、文章では人数が少なく、姉妹でもあるために、このあたりの差違が些細なところでもありながら案外難しい部分かと感じます。

終盤の、虫と隆史の結びつきには、ちょっと関係性が見えづらかったです。
正体を虫としたために、虫の能力的にはなぜにそこまでという思いの方が強く、(最初から、このためだけに……!)の気持ちにいまひとつ入り込めなかったです。
虫の関連と展開がもう少しだけ締まっていれば、もっとすっきりとした作品に仕上がったと思いますよ。

全ての投稿作品が出そろった後で評価していくと、長くて濃い作品も他にあり、この作品については残念ながらちょっと評価が高くはできなかったです。
種作品公開後になかなかリンクがない状態でしばらく続いていたのを気にしていましたが、後半では徐々にリンクが伸びていった佳作でした。

アイデア・1

名前: 気まぐれルート66 ¦ 18:49, Sunday, Sep 27, 2009 ×


長いスパンを対象とした作品は少ない中で、比較的長いスパンの物語を無理なく書ききってあると思います。

名前: 読書愛好家 ¦ 15:50, Thursday, Oct 01, 2009 ×


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