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 聞いてくださいよ。
 寝てたら足元の箪笥の上に蒸発した父がいるんです。どうせ物の加減でそう見えるんだと思って、眼鏡をかけたらホントに父がいるんですよ。「おいM、おいM」って笑うんですよ。

 ろくでもない男でした。死んでいればいいと思います。それも思いっきり不幸で目も当てられない死に方だったらいいと思います。

 小学一年生の頃です。長野に行きました。兄と二人だけでいると、優しいタクシーの運転手さんがカブトムシを三匹とってきてくれました。私は嬉しかった。虫かごにいれて旅館まで連れて行きました。そのまま名古屋まで連れて帰って飼うつもりでいました。だけど翌日死んでしまいました。真夏日に、車の中に入れたまま周囲を観光したからです。車に戻ると車内の暑さにうだって死んでいました。あの男は私に「お前が殺したんだ、罰があたるぞ、お前の後ろに一生殺されたカブトムシがついて来るんだ」と言ったんです。虫が死ぬことぐらい大人のあいつならとっくに予想がついていたでしょうにね。私はカブトムシに申し訳なくて、タクシーの運転手さんに申し訳なくて、それ以来虫が苦手なんです。
 虫を殺すと死んで虫に生まれ変わって人間に殺されると言われました。
 願ってもいないことじゃないですか。
 虫けら以下が虫けらになれるんだから。

 仕事を辞めさせられました。
 人員整理のためにです。会社の都合のためなのにもっと向いてる仕事を探せばとか分かったようなことを言うんです。だから、入る日数少なくていいから、時間も少なくていいからって言ったら翌月シフトが二日しか入っていないんですよ。半月で八時間。あはは。生活できると思います? だから私今日限りで辞めますって言ったんです。そしたら「ああご苦労さん」って引きとめもしなかった。あいつら最初ッからそう言わせたかったんですよ。ええ。フリーターってのはそういうものです。分かってます。私も自分の夢のために、やりたいことに専念するためにそうなることを選んだんですから。でもそれにしたってあんまりじゃないですか。一緒に働いた年月ってナンなんですか? 私は結局製氷機に入ってたナメクジよりも、お客さんに出す食器にくっついてたゴキブリよりも価値がなかったんですね。
 いっそ殺してくれればよかったのに。
 刺してくれればよかったのに。
 私には他の生き物や人を殺す度胸などありません。

 だって、そんな気を起こしたら、殺したいほど何かを憎んだら、部屋にさしこむ街灯が作る影が、あの男になって、本棚や脱ぎ捨てた服や机の足元からお前も所詮俺の子供だなってそういう目で見るんです。
 気が変になりそうです。
 胃が痛い。助けて。
 私には助けを求める方法が書くことしかないんです。
 泣きつける友人はもういません。
 親友だと思ってた子がいましたが、私に何も言わずに死んだから、私が勝手にそう思ってただけかもしれません。私彼女が死んだ数日後にメールを出したんです。文芸部の部誌ができるから、もらってくれないかって。部誌ができることなんてもう何日も前から分かってたのに。その時メールを出していれば死なずにすんだかも知れないのに。
 だけど彼女は知っていたかもしれません。私が本当は誰も信用していないことを。他人を信用できない浅ましい人間だということを。私はいつも自分のことばかり話していたように思うのです。思い出す彼女の姿はニコニコ笑って話しに頷いている姿ばかりなんです。

 私が人に言われるままに、一時でもかわいがった虫の亡骸を道端に棄てるような人間じゃなければ、墓を作ってやれる優しさのある人間だったらこんな人間には育たなかったと思うんです。
 黙って死んだイキモノだけが優しいです。
 夢の世界じゃ遠いけど、目が覚める瞬間だけは、傍にいる気がして、でもすぐ気のせいだと分かるんです。

 帰りのバスでうたたねしました。
 幼い頃の夢を見ました。
 琵琶湖に行って浮き輪で泳いでたんだ。浜のほうはすごい人だったし親の目もあるし一人になりたくて沖のほうに浮き輪にしがみついてどんどん泳いでいったんです。ヨットに乗ってる人たちもいたけど、それもいなくなって、私はいつからか湖に突き出ている鉄塔を目指してた。
 鉄塔の水面に足場のようなところがあって、そこにびっしり若い男女が腰掛けてて。水着着てビーチサンダル履いて、私は近視が進んでたけどその人たちがつまらなそうな目で私を見てるのはよく見えた。
 それで泳ぐのやめてふと思った。
 浮き輪をはなしたら足がつかないって。砂地はこの濁った水のずっとずっと下にある。
 で、その時の気持ちで目が覚めたんです。
 もうすぐ死ぬような。
 そういえばこの記憶は変だって思ったんです。湖の沖に普通鉄塔なんて建ってますか? サンダル履きのままやビーチボール持ったまま泳げますか?
 ただそれだけ。ごめんね。

 死んだら虫になると思う?
 嫌なんですよ。暑いのは苦手なんです。
 助けてください。言葉をください。
 どんな人間でも救済しうる言葉を教えてください。



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受信: 22:58, Saturday, Aug 01, 2009

■講評

いろいろ詰めこんできてるけど現実的な失業ネタが一番怖いですよ!ナンテコッタ!
子供の頃脅された「虫になるぞ」という話が怖かったのか、親父さんが怖いのか、失業が怖いのか(笑)、幼い頃のことを夢で思い出して目覚めたときの不安な気持ちが怖かったのか……どれか一つに絞って、あとは引き立て役に回すべきでしたね。友人の話なんかはどう考えても要らない。お父さんの幻覚に怯える心理はうまく書けてるのに、無駄なところで相殺されてしまっている。
怖さ-0
文章-+1
構成-−1

名前: あおいさかな ¦ 20:42, Tuesday, Jul 28, 2009 ×


なんだか錯乱状態が程よく出ているようにも思いますが、なんだかよく解らないまま終わってしまったように思えます。
結局何で怖がらせたかったのかも伝わってきません。
いや、この不安定具合が味なのかもしれませんが…。
すみません、私の好みではありませんでした。

名前: PM ¦ 18:40, Thursday, Jul 30, 2009 ×


アイデア 0
描写力 1
構成力 1
恐怖度 0
完全な鬱や精神病な人にありがちな被害妄想的な考えはよく表現されていると思います。すべての原因は他者にあり、自分にはないと考える所とか。幼いころタクシーの運転手さんからもらったカブトムシの思い出からはじまる虫への執着みたいなものをもっと異常なまでに描かれると怖かったかも。父に対する憎しみが少しあっさりしすぎているかなあ。もっと八つ裂きに殺してやるぐらいのぶっとんだ表現とか、具体的にどんな心身的暴力を受けたかという所まで描くと物語に深みが出たと思います。

名前: 妖面美夜 ¦ 12:40, Friday, Jul 31, 2009 ×


最初の父の話で、おっ?と惹きつけられたので、結構面白いかもと期待して読みました。
ただ残念ながら、主人公の私が終始ぼやきで完結していて(しっかり描写を入れるあたりは良かったと思います)、嘆きのコラージュだけが残ってしまった感じがします。
また、作中には手紙による語りが使われていますが、助けを求める方法が書くことしかないだけでは、手紙である必然と効果が今ひとつ薄いのではないでしょうか。
もし自殺か何かを暗示する手紙であるなら、手段としてはやや古いかと思います。

蒸発した父を最初から持ってきているので、このアイデアの方を主体にして作品の内容を拡張してみれば(例えば父目線の話にするとか)もっと面白い話が生まれていたのではないでしょうか。せっかくの導入部分が活かしきれずに勿体ない感じがしました。

構成力・−1

名前: 気まぐれルート66 ¦ 18:22, Friday, Jul 31, 2009 ×


 追いつめられた人間の描写はお見事ですね。
 吐き気がしてくる。

 でも事件は起きず、主人公に変化も起きず、何も無いまま終わってしまいます。
 それをひたすら読まされる方もちょっと辛い。

【アイデア】0、【描写力】+1、【構成力】0、【不快度】+1

名前: ユージーン ¦ 01:16, Monday, Aug 03, 2009 ×


最初から最後までグズグズと泣き言ばかりの奴だな、と言うのが正直な感想です。
主人公に人格高潔な優等生を求めるわけではありませんが、暗い面やコンプレックスを魅力にしたいのならば、多くのページと時間をかけねばならないと思います。
残念ながら、この主人公には、その手間暇が掛けられなかったようです。

読者が感情移入し、何らかの感情を得た主人公は、最後まで見捨てられることはないでしょう。

発想・0 構成・-1 文章・-1 恐怖・0

名前: 三面怪人 ¦ 21:19, Thursday, Aug 06, 2009 ×


・アイディア±0
 些か虫の使い方が弱いように感じたが、「死んだら虫になると思う?」など最後まで虫と絡めようとしている意志を感じたので、マイナスにはしなかった。蒸発した父と殺されたカブトムシが最後まで付きまとうとか、そういう流れを期待したかった所。
・描写と構成±0
 可もなく不可もなく
・怖さ+1
 怖かった。ただし恐怖小説としてではなく、これを書いた奴は現実で事件を起こさないだろうな、という。そう考えると、最後の二行は綺麗すぎると思う。もっと社会を憎む感じにすれば、さらに怖くなったと思う。
・買っても後悔しない魅力±0 インパクトはあったのだが、虫の使い方が弱いのがネック。

名前: わごん ¦ 11:56, Friday, Aug 14, 2009 ×


ちょっとした言い回しにツボを突かれるところが多々ありました。出だしの「聞いてくださいよ」とか、ラスト間際の「ただそれだけ。ごめんね。」とか。じわっと怖さを感じます。ネチネチとした甲高い声の男の喋りを連想しながら、読みました。

*文体+1 *雰囲気+1
*恐怖+1

名前: げんき ¦ 22:04, Monday, Aug 24, 2009 ×


誰に出した手紙なのかを考えると不安で厭な感じはします。
こんな手紙を本当に書くような人がいたらそれは怖いような気がしますが、実際にはもっと怖い物を書く人がウヨウヨいるわけで、冷静にそれを考えるとまだ狂気の入り口くらいの文章なのかなあ、と思えます。

アイデア  1
文章    0
構成    0
恐怖度   0

名前: 鶴の子 ¦ 13:27, Monday, Sep 07, 2009 ×


ブログっぽいなあ、と思いながら読みました。
いろんな怨念が詰め込まれてて、結果散漫になっているように思います。
金払ってまで読む文章かな、というのが、正直な感想です。

構成 −1

名前: もりもっつあん ¦ 09:14, Sunday, Sep 13, 2009 ×


非常に取りとめの無い話で、何だかよく分からない内に終わってしまった。虫の使い方も弱いし、物語性もあるような無いような。鬱っぽい感じはよく書けてると思いますが。

名前: 水本しげろ ¦ 20:28, Sunday, Sep 20, 2009 ×


恐怖 2
読みやすさ 0
場面展開が速すぎて、少しついていけない部分もありました。結局この人はどうなってしまったのか、判らないのが残念です。ただ、夏場に虫を放置して死なせてしまった経験はありますので、その時のことを思い出して辛くなりました。

名前: 白長須鯨 ¦ 17:23, Monday, Sep 28, 2009 ×


これ面白いです。 ムシが出てくる箇所で〔不安定感〕が強調されて、たいへん気分の悪い読み物に仕上がっていると思います。

アイディア 1
描写力   0
構成力  0.5
恐怖度  0.5

名前: ユーコー ¦ 02:58, Thursday, Oct 01, 2009 ×


ドロドロした作品は多分好きなんですが、ドロドロしきっていないような。主人公の性根は歪んでいてもいい、ただ悪なら悪、死なら死に染まっていて欲しい。

名前: 読書愛好家 ¦ 17:00, Thursday, Oct 01, 2009 ×


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