遺伝記 蟲 
 

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約束された未来
 ――ベルゼブブが姿を消して早や五年。
破壊の限りを尽くされた地上にも、漸く復興の兆しが見え始めた。


十年前のある日、全長約二メートルの巨大蝿が突如姿を現し、街並みを次々と破壊し続けた。その尾部からスプレイされた蛆は、人に寄生し人肉を喰らい尽くしていく。
地表には無数の骨が散乱し、喰い残した歪な肉片が異様な腐臭を街中に漂わせていた。

人々は奴を畏れ、蝿の王=通称 ベルゼブブと名付けた。
当然、軍部が出動しミサイルなどで攻撃を仕掛けたが、奴には一切効果が無かった。
俊敏な動きで攻撃を躱し、スプレイを繰り返す。放たれた蛆も、鉄や強化ガラスなどは簡単に喰い千切る程までに進化していた。最早、地上には安全を約束された場所など、どこにも存在し得なかった。
と、ほぼ同時期にあらゆる虫が巨大化して人類に襲い掛かる。ベルゼブブの指示の元で動いているのかは判明していないが、こいつらが暴れている時にはいつも頭上でベルゼブブが円を描くように周回していた。
甲虫・鍬形・雀蜂…等々、それぞれの大きさは約一メートル程だったが、防御力と俊敏性は人類がまともに対峙できるレベルではなかった。こいつらの事は『蟲共』と呼んでいる。

 この事態を打開すべく生まれたのが『BEAT CRASH PROJECT』、通称 B計画である。他の拠点でも私のような科学者が集められ、色々と研究は進められているようだった。
私、松永はB計画研究所長を命ぜられ、百人のスタッフと昼夜問わず新しい武器の開発作業に勤しんだ。

我々の開発作業が一向に進まないまま月日は流れ、人類の受けたダメージは甚大なものになりつつあった。地上の風景は、重火器を用いた熾烈な戦闘により、焦土と化した。
又、ベルゼブブ配下の蟲共との近距離戦は銃器や刀類は一切通用せず、かといって見過ごす事も出来ず、多くの命を失う形で消耗戦を強いられた。

……早く完成しなければ……
スタッフの間では焦りの色が広がる。
奴らに対抗できる物質は、既に完成されている。残るのは器だけ…。

そんな最中、軍部の中で、未知の材質の収拾部隊が新たに組織された。
その部隊による採掘作業が開始されてから三ヶ月が過ぎた頃、目的の温度に耐え得る鉱石が発見された。
地下千メートルから採掘された黒い鉱石。
……これで蟲共を殲滅できる。

 耐久テストを速やかに重ねた上、漸く『B−CRASH』は完成した。
人間が簡単に担げるように、ショートバズーカーの形態を採用している。
『B−CRASH』の性能は、液体窒素より更に高いレベルでの凍結を目的に開発された『噴霧窒素α』を内蔵している。通常は気体と液体の中間に位置し、物質としての温度は−1000℃という代物だ。その新絶対零度で空中の水分共々、蟲共を凍りつける。その後の追作戦も、既に決定していた。

『B−CRASH』は直ちに量産され、特殊戦闘部隊に次々と配備されていく。
予想通り、完成した『B−CRASH』から噴霧された気体で、忽ち蟲共は凍りついた。
兵士は、間髪入れずに粉砕する。粉々になった欠片を更に火炎放射器で焼却する。
蟲の生命力は非常に高いのだ。万が一があっては、ならない。

(『噴霧窒素α』を大量にぶつける事が出来れば、ベルゼブブも倒せる)
誰もがそう思った。
しかし、戦闘で灰色の粉塵に塗れた空中から、ベルゼブブはその様子を窺っていたようだ。
通常の大きな羽音を消すように、静かにその姿を消した。

……白兵戦は、今も続いている。
だが、蟲共との戦闘回数は圧倒的に減っていった。ベルゼブブの影響が無くなった所為か、蟲共の出現回数が極端に少なくなっていったのだ。


――これで一区切りが付いた。ベルゼブブが姿を消して五年も過ぎた。
生き残った僅かな人々も、半崩壊した国の協力を得て、通常の生活を取り戻そうと街の建て直しを始めている。

 (…後は、元凶の悪魔を潰すのみ)
『B−CRASH』の完全追尾ミサイル化計画も順調に進行中だ。勿論、ミサイルの燃料が尽きる事は無い。地球に降り注ぐ宇宙線をエネルギー源とし、半永久的に目標を捕捉するまで飛び続ける。
もう少し…あともう少しで…。

そんな矢先、通路に響き渡る足音を立て、息を切らせながら研究室に採掘班隊長の山之内が飛び込んできた。
「ま、松永所長大変です!例の鉱石が採掘されなくなりました!ミサイルの完成まで、残り二百キロは必要です!」
「直ぐに新しい場所での採掘に全力を尽くしてくれ。この計画には人類の命運がかかっている」
「了解しました!現在の発掘拠点を中心に円状に拡大し、採掘作業に努めます!」

(拙い事になった。あと一歩なのに…。今この状況で、ベルゼブブに出現されては、手の打ちようが無い。そうだ!黒鉱石の分析結果はどうなった?分析結果次第では、鋼材の配合で賄えるかもしれない)

 早速、内線で解析班に連絡を取る。
「ああ、西君か。で、どうだ?例の黒鉱石の解析結果は、まだか?」
「松永所長。…それが驚きの結果が出ております。現在、解析結果に間違いが無いかどうかの検証を繰り返している所です」
「今現在の解析結果を教えてくれ」
「主成分の一つは琥珀です」
「琥珀?色あい的にそうは見えなかったが?」
「問題なのは、もう一つの成分です!所謂、ゴキブリ…いや、ゴキブリの先祖です!」
「ゴ、ゴキブリ?!」
「琥珀に入った蚊の化石の事は、ご存知ですよね。なぜかこのゴキブリは、形状を残さずに琥珀と一体化しております。混じり合った状態です。琥珀とゴキブリの融合体とでもいったら良いのでしょうか…?」

 ……それを聞き薄ら寒いような、何か嫌な予感を覚えた。


 ――ビーッ、ビーッ、ビーッ…
研究所内に警報音が響き渡る。正面の巨大モニターに映し出されたのは、あのベルゼブブだった。
研究所の上空を嘲笑うように旋回している。

 突然、私の目の前にある電話が鳴り響く。
「緊急連絡です!特殊戦闘部隊が全滅しました!!『B−CRASH』が突然意思を持ったように動き出し、隊員全てを凍死させました!戦場には無数の隊員の氷像が残された状態です!尚、全ての『B−CRASH』は現在、ベルゼブブ…いや研究所目掛けて飛空中です!十分にご注意を…!!」

……嫌な予感とは、よく当たるものだ。
言葉が出ないまま、力なく電話を切る。

 ああ、人類の切り札の筈の『B−CRASH』がベルゼブブの配下に下ったのか…。
化石すらも、蟲だというのか…。

……間違いない。奴はあらゆる蟲を支配している。奴は本当の王になろうとしている。

 モニターに映し出された巨大な緋色の複眼が青緑色に変化していく。
(嘲笑っているのだろう。愚かな人類を…。そういえば、地球が生まれてから一番長く生き続けているのは、ゴキブリだったな…。そうか…私は憎むべき蟲の力を利用し、最高の殺戮兵器を作り上げてしまったのか…)


 ――ズドーンッ!!
 研究所に隣設された工場から爆発音が響き渡る。
(ああ、あのミサイルも開発中とはいえ、奴の支配下か…)

 瞬間、私は爆風に吹き飛ばされ、瓦礫の下敷きになった。全身には、凄まじい激痛が走り、腰から下の感覚が一切無い。
ただ見えるのは、粉塵に塗れた灰と黒のグラデーションの空だけだ。
……薄れてゆく意識の中で、上空のベルゼブブの周りに集まる無数の『B−CRASH』が確かに見えた。
足なのか正体は判らないが、確かに蠢くものが『B−CRASH』の下部に見える。

 ベルゼブブは私の生存を確認するかの様に、直ぐ目の前まで下降してきた。
静かに羽ばたきながら、複眼を琥珀色に変化させる。

――ブゥーン!!ブゥーン!!
突然、ベルゼブブは鼓膜が破れる程の音量で、二度大きく羽音を鳴らすと、上空に集まった『B−CRASH』は、四方八方に散らばる様に飛び去った。

 これで人類の滅亡は決まった。
奴は…ベルゼブブは、人類を氷に包み、完全な地球の王になるのだ。

(地球の創世記から生存し続けたモノに勝てる術など、初めから存在しなかったのか…?)
 そう考えると、全身から力が抜けゆく中、何故か笑いが止まらなかった。

 ベルゼブブは静かに目の前に降り立ち、巨大な複眼を元の緋色に戻す。
…そうか…お前も笑うか…。



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因果元の完成度が高いだけに、ベルゼブブ関係の話は因果元を上回る内容&文章力がなければ、高い評価を得るのは難しいのではないか。結局は「マンティスの祈り」の補足的なものでしかなく、二番煎じのイメージしかない。そのため評価は若干厳ししめとなる。正直、虫に「 .. ... 続きを読む

受信: 01:29, Monday, Aug 17, 2009

■講評

投稿開始初期なら評価も違ってくるかもしれませんが、「マンティスの祈り」が出てからこれだけ日が経ってしまった今では巨大生物VS人間とその結末は、もうそろそろ発想の転換が必要なのではないかと思います。
せっかく頑張って書かれているのに申し訳ありませんが、どうか次回では別の視点から物語を構築した作品を読ませていただければと願う次第です。

名前: 気まぐれルート66 ¦ 22:00, Tuesday, Aug 04, 2009 ×


恐怖度0
文章力1
構成力0
アイデア0
小説というよりは専門用語が多いせいか、学術論文を読んでいるような感じがしました。それに非常に勝手で申し訳ないのですが、新生物に人類がのっとられるという展開に少々あきてしまったというべきか…。
とてもよく書かれているので凄いとは思うのですが、説明よりももっと心を揺さぶるような心理的な怖さを感じたいのです。このままだと続きが読みたいという感じがしないかなあ…。おそらく魅力的なキャラクターがいればもっと感情移入できるのですが。

名前: 妖面美夜 ¦ 13:05, Wednesday, Aug 05, 2009 ×


うーん…、正直、この世界でのこういう展開はもういいかなぁ…。
“遺伝”というルールがある以上、もう少し展開に捻りを入れて欲しかったところです。
虫の化石というアイテムの使い方は良いとは思いますが…。

名前: PM ¦ 19:51, Monday, Aug 10, 2009 ×


 これもまたいろいろと考えてありますね。

 で、こちらも登場人物はすべて省略、と。
 このシリーズでどれだけ続くのかだんだん楽しみになってきた。^^;;;

【アイデア】+1、【描写力】+1、【構成力】0、【恐怖度】0

名前: ユージーン ¦ 20:45, Wednesday, Aug 12, 2009 ×


ガブリエラーゼと同じ臭いがする。
 ――ズドーンッ!!
とか
――ブゥーン!!ブゥーン!!
とか、擬音も悉く安っぽい。それ以外の台詞も、思考もです。
好きなこと以外も書く努力をしてください。

文章―−1
構成―−1
恐怖―−1

名前: あおいさかな ¦ 15:30, Saturday, Aug 22, 2009 ×


設定が細かいものが好みなので、そこが面白かったです。文章も展開も硬派な印象を守り続けていたことが、ラストの「笑う」というオチを際立たせていると思います。双方の「笑う」は全然違うものですけど。
軽く緊張しながら読んでいたこちらの感情も一緒に緩んで、私には効果的でした。

*展開+1

名前: げんき ¦ 23:51, Sunday, Aug 30, 2009 ×


怖い話より戦闘シーンが書きたいのかな、と思いました。
世界を破滅させてしまうと、遺伝も何もなくなっちゃうので、そこも含めて厳しい点を付けさせていただきました。

名前: もりもっつあん ¦ 01:42, Tuesday, Sep 15, 2009 ×


・アイディア−1
 自分たちの作った兵器が裏目に出て滅ぼされる、というのは、ありがちながら悪くはないとは思ったが、↓
・描写と構成−1
 ↓専門家ではないので間違っていたら申し訳ないが、絶対零度とは通常、物質の原子の振動がほぼ完全に止まった状態、約−273℃のことを指す。それを上回る新絶対零度、−1000℃とはどのような状態を指すのだろうか。そこが作中で存在できるように説明されていない限り、幼稚という批難を免れないと思う。
 また、ショートバズーカー型と描写されているB−CRASHが勝手に動き出すシーン、「足なのか正体は判らないが、確かに蠢くものが『B−CRASH』の下部に見える。」というのを早めに説明しておいてくれないと、光景が想像できない。
・怖さ±0
 普通。
・買っても後悔しない魅力−1 個人的に、新絶対零度がとても悪い方向のツボに入ったので。

名前: わごん ¦ 21:40, Wednesday, Sep 16, 2009 ×


先行作品よりはSF色が少ないので読みやすかったです。
燃やすのがダメなら凍らせるという発想も、なるほどと思った。
ただ、「マンティスの祈り」ではSF的要素だけではなく、登場人物の葛藤なども書かれていため、作品に深みが出ていたのですが、この作品では人物がただの記号になっているため、ドラマ性が薄いように感じた。

名前: 水本しげろ ¦ 19:56, Wednesday, Sep 23, 2009 ×


どうも昔の少年誌の科学読み物のような感じで、小説としてはどうなのかと。
挿絵があったら面白いかも知れないが。

アイデア  0
文章   −1
構成   −1
恐怖度   −1

名前: 鶴の子 ¦ 02:30, Thursday, Sep 24, 2009 ×


とんでも科学小説とでも言うのでしょうか。この作者得意の分野だと思うのですが、それだけに人物描写や心理描写が浅く弱く、何も印象に残らない作品になっています。
特に三点リーダを多用した文章は、作者が思ったような効果は得られておらず、リズムを悪くしているだけのような気がします。

発想・-1 構成・0 文章・-1 恐怖・0

名前: 三面怪人 ¦ 12:06, Thursday, Sep 24, 2009 ×


完全にあり得ない話では怖く感じないと思っているのですが、不思議とこの作品はすんなり怖いなと思いました。人の動きが自然なんでしょうか。

名前: 読書愛好家 ¦ 23:30, Thursday, Oct 01, 2009 ×


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