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粉々蝶々
紅メーヴェに跨って県道を南下して。初めての道に回って帰る途中だったんだけどね。結構飛ばしたよ。
自分、超カッコイイ!的な気持ちでさ。バカだよね。
久しぶりに充実した休日でね。そう、このときまではね。
お家に帰るまでが遠足ですって、名言だよね。

あ、そこ、流してくれないの? うっかり喋っちゃったんだよ。見逃してよ。ダメ?

紅メーヴェってのは、私のホンダちゃん。当然紅ボディ。
この色に惚れて、本格的にバイクに乗り始めたんだよね。
ただこの紅メーヴェってのは私が心の中だけで呼んでる名前。
いい年して、軽いジブリオタクだなんてヤバいし。
ってナウシカはジブリじゃないか。あは。こんなこと知ってるのがもうオタクの域かもね。
だからー! メーヴェっていうのはナウシカの白い乗り物のことなんだって! そこからかい? 一般人!

あ、いやいや。脱線しちゃった。
バイクの名前なんてもういいって。
それでね、走ってたらすごく綺麗なヒマワリ畑が見えたの。
もうここって南プロバンス!?ってレベルのよ! すごいの!
慌ててハンドル切っってね、なんか小さな橋渡ってさ。
で、誰もいなかったしバイク止めてさ、休憩したのよ。ヒマワリ眺めつつね。ヘルメットとったら、ぶわって風が来てさ。

うん。ほんとはすごく気持ちいいシチュエーションのはずなのに、なんかゾッとしたんだよね。今思うとここから怪しかったんだよ。その風、なーんか粉っぽくてさ。鼻がむずむずして喉もいがいがしてさ。気持ち悪かった。
目もショボショボしてさ、思わずこすったら痛くて。
ああ、なんかまずいなって。



で、痛いの我慢して目、開けたとき、ヒマワリ畑のに隙間から竹林が見えてね、そこに銭湯を見つけたのね。
あんなところに銭湯があるんだって思ったよ。で、粉っぽいのも気になってたし、ちょっと入って行こうかなと。
目も洗えるし、ちょうどいいからね。
助かったって思ったよ。そのときは。バカだよね。
ヒマワリ畑の脇に畦道みたいなところがあって、バイクは押して行ったよ。走るのは無理そうだったし。

まぁ、もうそこからなんかおかしかったんだけどね。
ふーふー言って押してさ。何が何でもそこに行くんだって、無理やり行った感じでさ。

びっくりするくらい汚い建物だったよ。民家みたいで。
あんまり細かいことは覚えてないけど、サッシの引き戸だったことははっきり覚えてる。銭湯らしくないなぁって思ったもん。とにかくなんか不潔でさ。なんでそんなところでお風呂に入ろうなんて思ったのかが、もうね、謎。

で、ここからがもっと変なんだけど。
番台とかの記憶がないのね。もっと言うならいつ服を脱いだかとかも覚えてないし。気が付いたら裸でさ、風呂場にいるのよ。なんか変な臭いがしたけど温泉の臭いかなって、そのときはね。みょーに薄暗くて煙ってた。湯気かなって思ったけど、そんなに暑くないし。それに粉っぽい感じがほんと酷くなってきてさ。目だけじゃなくて鼻とか喉の奥が痛痒くて。



先客、洗い場に小学生くらいの女の子がいてね。
頭洗ってる最中だったの。両手ぶんぶん振り乱してさ、もうガンガンにわしわしって。
とりあえずかかり湯しなきゃと思って、その子から一番離れた蛇口のとこに座ったの。でも水もお湯も出なくて。蛇口は回るんだけど、全然出ない。イラッときたし、すぐ場所をずれたのね。でも、そこも出ない。女の子は髪洗ってるんだし出ないわけないだろうって思ってさ、汚いし古いし、設備にガタがきてて出るところが限られてるのかもなって。
髪洗ってる傍に行くのも、ほら、泡とか飛んできそうで嫌じゃない? だから行儀悪いけど湯船から汲もうとさ。出ないほうが悪いんだし、他に誰もいなかったし、いいかなって。

洗面器持って湯船に行ったのよ。
で、モヤってて近づくまではよく見えなかったんだけど、その、湯船の中に溜まってたのってお湯じゃなくて!
変なこと言うけど、私、おかしくなったとか思わないでね!
いや、もう十分変なこと言ってるけど。
その、さ、湯船いっぱいに虫が入ってたの。虫っていうか、うん、虫なんだけどさ。
最初、自分が何を見てるか判らなかったよ!
黒っぽいなんかで湯船が埋め尽くされてて、お湯じゃないってことだけはすぐ判ったんだけど、なに? これ?って。
気持ち悪いけど気になるじゃない? んー?って顔を近づけて、うわ! 虫だ!!って。

小さくて、私の小指よりも全然小さい虫が溢れそうに溜まってるの! 全部、蝶々!
ただ翅がないの。翅がない蝶々の身体だけで、もう満杯なの!
なんで判ったのって、そりゃあの口のぐるぐるストローみたらすぐ判るよ。とにかく、ヒッて尻もちついたよ。

翅をもがれたかなんかだけど、死に切れなくて動いてたのね。
肢とか動いてたし、胴体がヒクヒクしてたし。それがでっかい湯船に、いっぱいいっぱいに詰まってんの!

自分が何見てるか、まだそのときちゃんと把握してなくて。
とにかく頭の中にクエスチョンマーク乱舞でさ。なんか理由を探したくって、座り直したの。そんでもっとよく見ようと湯船に這い寄ったのね。ほんとバカなんだけど。
そしたらまるでタイミングを見計らっていたように、ぶわってなんか出てきた。

どんだけ溜まってたか判らないけど、とにかくすごい数の翅なし蝶々がぶわって盛り上がって!


うはぁあはぁああぅあぁはぁ。


みたいな、なんかこう、ぬめっとした感じの嫌な声が響いてね、さっき頭洗ってた女の子が湯船の中に立ち上がったの。
笑ってた。
洗い髪が固まってて、すすいでないのかなってぼんやり思った。
他に思うことあるだろうって話だけど。バカだよね。
おかっぱで、前髪が長くて目がちょうど隠れてて。ほっぺたがむちって盛り上がってて、なんか必死で笑ってるって感じだった。大口開けて笑ってるんだけど、歯が見えなくて風穴みたいな口でさ。その口の端から、笑い声と一緒に翅なし蝶々がぼろぼろ湧いて落ちてた。

さっきからの嫌な臭いが急にキツくなって、認めたくなかったけどこの臭いって湯船と、そしてこの女の子からしてるんだって判ったの。あのね、女の子の髪の毛ね。シャンプーの泡で固まってるのかなって、最初。
それ、間違いでね。
あんまり言いたくないんだけどね、湯船に入ってるのと同じモノをぐちゃぐちゃに塗りつけていてね。それでね。




それでお終い。
え? だからそこからがなにも判らないのよね。
うちの近くのコンビニの駐車場で、缶コーヒー飲んでたんだもん。
うん、次の瞬間っていうかなんかちょっと間が空いてる感じはあったけど。だってヒマワリ畑に着いたのは午後三時過ぎくらいだったんだけどさ、コンビニにいたのはもう夜の八時近かったし。あの県道沿いからうちまでは渋滞入る時間帯だったけど、それにしてもかかり過ぎ。五時には帰りつくつもりだったのね。

パニック起こして逃げ出したとしてもさ、記憶ぶっとばしたまま何時間運転したんだって話になるし。
ひょっとしたら居眠り運転で夢見つつ帰ってきた、なんて怖い話にもなるじゃない? どう転んでもまずいよね。

いや、だからそれで終わりなのよ。ほんとバカみたいだけどさ。
夜になんか出たとか、そんなのもないし。ただ変で不思議でしょって話。やたら喋ると、私、ラリってたみたいで疑われるよね。

怪我とかなにもないよ。目とか鼻とか、痛痒いのも消えてたし。
そういえば、あれもなんだったんだろうね。
なんかさ、どっかから流れてきた変な粉、吸って、


え、翅?
蝶々の? なかったよ。見なかった。
ん? 鱗粉? なに、あ。
粉っぽかったのって、それ!? 
え、やだ、そんなの。
やめてよ。



だからー! 
帰り、ちゃんと服も着てたんだって!
そこかよ、突っ込むとこは。



01:15, Thursday, Aug 13, 2009 ¦ 固定リンク ¦ 講評(12) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(4) ¦ 携帯


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う。 これはちょっと私には受け入れられない。話の内容がではなく、この文体が苦手。超ー1で目にしたものに良く似ていて既視感を覚えてしまった。内容は程良く気持ちが悪くて良いのだが、文体で損をしている。硬質な文体で書かれたものであったなら、随分印象も違った ... 続きを読む

受信: 21:33, Tuesday, Sep 15, 2009

■講評

翅がない蝶々の身体は気味が悪いですね。この作品で好きなところです。
この長さと喋り方で書かれてなければ、もう少し面白くなっていたかもしれないですね。
そこが残念でした。

描写力・−1

名前: 気まぐれルート66 ¦ 20:06, Thursday, Aug 13, 2009 ×


恐怖度0
文章力0
構成力0
アイデア0
会話調が妙に読みにくい感を受けました。内容的には怪異もちょっと作られすぎていて自然でないかなあと。普通の文章で書かれた方が伝わりやすかったと思います。

名前: 妖面美夜 ¦ 04:58, Saturday, Aug 15, 2009 ×


死にかけの蟲の気持ち悪さと、インパクトは出ていると思います。
前半部の喋りが浮いていること、展開が唐突過ぎるように感じたことが残念でした。インパクト 1 

名前: もりもっつあん ¦ 10:31, Sunday, Aug 16, 2009 ×


このカンジ好きです。好みです。
お風呂で怪異って、怖いですよね。全裸で無防備ですもん。文章もこれといって不可、というところはないですし、むしろ主人公(不思議な在りかたの知性の持ち主ですね)の性格ときちんと一体化しているから、キモ系だけど冷静さが保たれている。好印象です。

ナウシカってジブリじゃなかったんだ……知らなかった。

文章+1
構成+1
恐怖+1

〈追記〉
時間が経っても気になったので、やっぱりもう一点つけさせていただきます。

名前: あおいさかな ¦ 07:46, Sunday, Aug 23, 2009 ×


 この独特の味のある文章が何とも言えませんね。
 クセがあるのは間違いないのですが、一見、思いつきでダラダラ書いてあるようでいて、どういうふうに読まれるのか意識して書かれていると思いました。
 こういう書き方だとなかなかバランスよく書くのは難しかったと思います。

 謎の銭湯で気味の悪いものを見たで話が終わっていますよね。
 これではちょっと物足りないですね。やっぱり。
 おかしな銭湯はなぜあらわれたのか。それを正確に説明する必要はないんですが何らかの形で提示する。
 あるいは逃れたと思った主人公にもう一段、何かが起きる、そんな意外性を盛り込めればと思います。
 映画などでも良くありますが、怪物が死んだと思ったら実は! って奴ですね。

【アイデア】0、【描写力】+1、【構成力】0、【ていねい度】+1

名前: ユージーン ¦ 22:04, Wednesday, Sep 02, 2009 ×


ううーん、これが実話なら良かったのに…と思ってしまう…。
正直、創作としては物足りません。
文章に勢いはあるので、その勢いのまま意外なオチに持っていけてると良かったかなぁと思います。

名前: PM ¦ 18:36, Tuesday, Sep 08, 2009 ×


ハイテンションな勢いがラストまで続いたのは、カオスさに拍車をかけていてよかったと思います。
「恐怖」を感じるよりも「気持ち悪さ」を感じるほうが強かったですね。

*勢い+1 *カオス度+1

名前: げんき ¦ 20:31, Thursday, Sep 10, 2009 ×


・アイディア+1
 やや遺伝元に頼り過ぎかとも思うが、風呂の設定が良いと思う。困る→家発見のパターンにも、独自のアレンジが加えられている。
・描写と構成±0
 可もなく不可もなく。心霊話的なポイントは押さえられていると思う。笑いで締められると恐怖が薄れるので、最後の三行はいらないかと思う。
・怖さ±0
 これが実話怪談ならかなり嫌な話なのだが、創作として考えると、訴えかけてくるような怖さが足りない気がする。平均点な怖さというか。
・買っても後悔しない魅力±0 風呂のシーンが少し心に残った。悪くはないと思う。しかし、金に困ってどの本を中古屋に売るか決める時に、そもそも買っていたことを後悔しないほどのインパクトを感じたかと言うと……。+0.4を四捨五入。風呂のシーンがもう少し怖い、もしくは、逃げ帰るだけではなくて、もうちょっと話の独創的な発展があったりしたら、点が上がったかな、と。

名前: わごん ¦ 15:41, Thursday, Sep 17, 2009 ×


面白かったです。
ただ、羽のもがれた蝶の風呂桶というのは相当気持ちが悪いのですが、それ以上の展開がなかったのでちょっと中途半端な感じがしました。
女子饒舌体の文章はお上手かなあと。

アイデア  0
文章    1
構成    0
恐怖度    0

名前: 鶴の子 ¦ 08:51, Friday, Sep 25, 2009 ×


特異な文体で最後まで貫き通されましたが、こういった試みは年季の入った作家でも難しいのではないでしょうか。
何人かの講評者が、読みにくいとか、文体で躓いたと仰っているのがその証拠では。翅をもがれた蝶々の塊という発想は他に並ぶものが無いのに、文体が作品を拒否する理由になっているとすれば、これほど残念なことはありません。

発想・1 構成・-1 文章・-1 恐怖・-1

名前: 三面怪人 ¦ 13:10, Friday, Sep 25, 2009 ×


恐怖 2
雰囲気 1
読みやすさ −1
ひまわり畑という美しい光景が、その後に続く銭湯での出来事の気持ち悪さを更に際立たせていると思います。ただ、個人的な話で申し訳ないのですが、私にはこの文体が少し読みにくかったです。

名前: 白長須鯨 ¦ 17:21, Saturday, Sep 26, 2009 ×


湯船が羽のない蝶で埋め尽くされていたところは
かなり気持ち悪くて良かったです。
それだけに、この軽めの文体は勿体無い気がしました。
オチがあって無いようなものだったことも残念。

名前: 水本しげろ ¦ 19:16, Saturday, Sep 26, 2009 ×


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