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安全主義者
一、


 信号が青に変わり、横断歩道を少しばかり歩いたところであった。
 ボグッ、という鈍い音とともに、津山悟は、まるでKOされたボクサーのように膝からその場に倒れ込んだ。
「どういうつもりだ貴様ァ!」
 平和の象徴であるという、オリーブドラブ色の制服に身を包んだ安全官に怒号を浴びせられ、津山は重大なミスを犯したことに気づいた。
 狼狽して言い訳を探しながら、苦痛と怯えに歪んだ顔を上げる。
「……あ…う…す、すみません。こんな事は今まで……………」
 ブリーフケースを立て、両手でしがみつくようにして体を支えながら必死の思いでなんとか立ち上がり、膝に手をつく。
 殴られた衝撃と頬の痛みで視界が揺れ、よろけたところへ二度目の鉄拳が飛んだ。
「…グゥッ」
 眼前に火花が散ったかと思うと、再び地べたに這いつくばっていた。
 口中に広がる鉄の味に顔を顰めながら、両手をついてゆっくりと重い上体を起こす。
 鈍い痛みに思わず口を開けると、数個の白い欠片とともに赤い粘液が垂れ、アスファルトの上で小さく溜まった。
 舌で探ると前歯があるはずの場所にいくつか隙間ができている。
 呆然とする間もなく、津山は安全官に髪を掴まれ、無理やり信号脇の歩道まで引きずり戻された。
 誰も助けようとはしない。みな一様に怯えた表情で下を向き、関わるのを避けるかの如く足早に通り過ぎていく。
 安全第一、と金字の刺繍が施された帽子を目深に被った安全官は津山の髪を掴んだまま、息がかかるほどの距離まで顔を近づけると、低く押し殺した声で言った。
「……貴様、なぜ指差し確認をしない?」
 つばの下から覗く濁った眼は焦点が合っておらず、どこを見ているのか判らない。
「ち、違うんです! わざとじゃないんです! 仕事で疲れていてうっかり………」
 津山の弁解が終わるのを待たず、安全官は声を荒げた。
「いいかァア! 我が国の安全はァア! この指差し確認によってェエ! 保たれているといっても過言ではなァアイ!」
 口角に細かい泡を溜め、唾と一緒に怒号をまき散らす。
「確認もせずに渡って車に轢かれたらどうするつもりかァア! 貴様の不安全な行動によってェエ! いつ思いもよらない危機が降りかかるともしれんのだぞォオ! うっかりで死にたいのか愚か者めェエエエエエエ!」
 津山が意味を理解できたのはここまでで、あとには意味不明な言動が大音量で続いた。
 安全官は時折思い出したように叫び声を上げながらひとしきりまくしたてると、ようやく髪を掴んでいた手を離した。
 少しほっとしたのも束の間、今度は腕を掴まれ、立ち上がるよう促された。
 次は何をされるのかと反射的に体をこわばらせる。恐怖と緊張に眩暈を覚え、眼を瞑って俯く。
「おい〜、眼を見ろよ〜、ちゃんと〜」
 間の抜けた胴間声に顔を上げると、安全官は穏やかに微笑んでいた。
 落としたブリーフケースを拾い上げ、津山の手に握らせる。
 つい先ほどまでとは別人のような柔和な態度で津山のスーツに付いた汚れを丁寧に手で払い落とすと、まっすぐ中空を見つめながら優しく話しかけた。
「大丈夫ですか? すいませんねえ、痛かったでしょう。 ……しかし鉄則ですからねえ、守って頂かないと。本当は私だって面倒臭い。指差し確認なんてねえ? やらなくていいじゃないかって思いますよね、誰でも。でもやっぱりねえ、安全のためには仕方のないことなんです。 …あなたご結婚されてます? 例えば今あなたが事故で死んでしまったとしたら、奥さんと子供はえらいことですよ。ねえ? まあこれのおかげでね、我が国では事故が殆ど起こらないという事実もありますし。海外なんか見て御覧なさい、酷いもんですよ」
 安全官は胸ポケットから小さな紙片とペンを取り出すと、怯えと困惑の入り混じった表情で呆然としている津山に手渡した。
 無造作に折りたたまれたそれを広げると、A4サイズほどの書類になった。三枚綴りになっており、安全違反者講習申込書、とある。
「えーと、現住所と電話番号と、あとお名前をフルネームで書いていただけますか? ………はい、そうです。それで結構です。一応免許証か保険証を確認させて頂いてもよろしいですかね。 ………はい、結構です。 ………えーと、それじゃあこれが申込書になりますんでね。で、これあなたの控え。はい。明日、必ず講習受けて下さいね。 ……ええ、はい、もういいですよ。ちょうど信号も変わりましたんで、渡って下さい。 ……あ、指差し確認忘れないように」
 すみませんでした、と安全官に頭を下げ、まだ出血の止まらない口と鼻をハンカチで押さえながら、おぼつかない足取りで横断歩道の前まで歩く。
 右手をかざし、人差し指を立てる。
(キチガイめ)
 心の中でそう呟きながら、安全官の機嫌を損ねないよう大声で指差し確認を行う。
「右ヨシ! 左ヨシ! 前方ヨシ! ……安全ヨシ!」
 ふらふらと横断歩道を渡る。自分では精一杯歩いているつもりが、ほんの十数メートルほどの距離がやけに長く感じる。
 早く家に帰りたかった。
 まだ日没までには時間があったが、心は既に暗く沈んでいた。
(まいったな。今から間に合うかな、歯医者)
 前歯のない津山の顔を見て、驚く妻の顔が眼に浮かぶようであった。
 


二、


 いつからそうなのかは判らない。
 津山が物心ついたときには既に街中に監視カメラが付いていたし、いたるところで安全官が眼を光らせていた。
 個人による乗り物の所有、運転は認められておらず、移動は徒歩、もしくはバス、タクシー、鉄道、航空、船舶等、公共機関の利用に限定されている。
 人間と乗り物の通行はそれぞれ厳密に区別されており、人間は徒歩で移動する場合、建物や歩道以外の通路を通行・横断する事は出来ない。
 交差点はもちろん、歩道が途切れている場所ではいかなる場合でも立ち止まって指差し確認を行わなければならない。
 歩行中は携帯電話の使用や、ポケットに手を入れるなどの行為は絶対禁止である。
 それらの鉄則が、玄関を開けて外へ出た時点から適用されるのである。
 違反したからといって罰金や禁固刑などがある訳ではないが、指定された公共機関での講習を強制的に受けさせられるほか、指導という名の暴力を頂戴する羽目になる。
 安全官はいかなる場合においても平等に対応した。
 指導を受けた子供や老人が、打ちどころが悪くて死んでしまったというのはよく聞く話である。
 津山も一度だけ、目の前で息子と同い年くらいの幼い男の子が撲殺されるのを目撃したことがあった。
 しかし安全官が罰せられるようなことは殆どなく、安全庁が発表する声明はいつも同じであった。
「適切な職務の遂行だった」
 津山は小さく呟くと、監視カメラを意識しながら電柱の陰に唾を吐いた。
 とたんに上顎を鈍痛が駆け抜け、顔を顰める。
(ばかばかしい世の中だぜ、全く)
 やり場のない怒りに拳を握り締めながら、いったい何度指差し確認を行っただろうか。
 ゴミを出しに行くときでさえやらなければならない。それこそ近所のスーパーへでも行くとなれば、何度やればいいのか数えるのも面倒なほどである。
 それを思えば、今まで何もなかったことのほうが却って不思議なのかもしれない。
 実際、津山の三十年の人生で始めてのことだった。
 もちろん、安全官の目を盗んでズルをした経験は誰しもあるだろうが、見咎められて鉄拳制裁を受けるというヘマをする者はそう多くはない。
 津山自身、常に細心の注意を払い、安全官達の裏をかいてうまくやってきたつもりであった。
 家族や親戚に違反切符を切られた経験のある者もいなかったし、まさか自分がそうなるとは夢にも思っていなかった。
(面倒なことになったもんだ)
 鬱々としながら歩いていると、ふと手の甲に雫を感じた。下を見ると地面に小さな水玉模様が広がっていく。
 見上げた頬に、ぽつぽつと冷たい雨粒が染みる。
 津山は舌打ちするとブリーフケースを頭上に構え、降り出した雨の中を急いだ。
(まいったな。確かこの辺りにあったはずだが……)
 目当ての場所はすぐに見つかった。風雨に晒されて黒ずんだコンクリートのみすぼらしい門には、何年も放置された廃屋のように枯れた蔦が絡み付いている。
 所々塗装の剥げた看板を見る限り、そろそろ診察時間も過ぎようという時刻である。
(大丈夫かな。 ……いや、診て貰わなきゃ困る)
 津山は門を入ると、心なしか重く感じるドアを開けた。


「……すいません」
 消毒液の臭いが鼻につく。
 妙に薄暗い待合室に、人の気配はない。
 少し遅れて、受付の奥から歯科助手と思しき女性が顔を出した。
「……あの、予約してないんですが、大丈夫でしょうか?」
 見るからに陰気そうな歯科助手は、乾いた血のこびり付いた津山の顔を見てもなんら動じるようすもない。
 さも億劫そうにのろのろと受付から出てくると、無言のまま処置室と書かれた扉を開け、再び受付の奥へと姿を消した。
 少しムッとしながら処置室に入ると、白衣を着た白髪混じりの男が、背もたれを倒した診察台に寝そべって携帯電話をいじっている。
「……ああ、お客さん」
 歯科医であろう男は津山に気づくと、慌てて診察台から立ち上がった。
 咳払いをひとつ、着崩した白衣を大仰に直しながら、片手を遣って津山を診察台へ促す。
 あまり気は進まなかったが、前掛けを渡され、まだ歯科医のぬくもりの残る診察台へ仰向けになった。
「はい、あーんして」
 さきほどの無愛想な歯科助手同様、津山の無残に打ちひしがれた顔を見ても慌てるようすはない。
 案外コノ手の客には慣れているのかもしれない。口を開けながら津山は少し安心した。 
「……ああ、こりゃひどいな。いち、にい、三本……四本目は欠け…と。 ……ええっと、神経は大丈夫だな、これなるべく残しといたほうがいいからな、うん。 ……今日はとりあえず仮歯までやっちゃうから。ちょっと時間はかかるけどそのほうがね、ご飯もちゃんと食べれますから。 ……しかし酷いことしやがるなあ、あれだろ? 安全官だろ」
 大口を開けたまま無言でうなずく。ドリルを持つ手が震えているのが少し気になったものの腕は確かなようで、歯科医はてきぱきと作業をこなしていった。
 歯科助手は相変わらず無愛想だったが意外な機敏さを発揮、要所に立ち現われては的確なフォローを見せた。
 そうしてどれくらい経っただろうか。ふと壁の時計を見ると時刻は二十二時、既に五時間ほどが経過していた。
(もうこんな時間か)
 少し驚いたものの、前歯数本でこれくらいなら恩の字というものだろう。ましてやとっくに店じまいしている時間にここまでやってくれているのである。
「……はい、お口ゆすいで下さいね。それじゃあとりあえずこれで終わりましたんでね。 ……一応まだ仮歯だから、また後日来て貰って、できればインプラントやったほうがいい。あと虫歯も少しあるね。」
 津山は口をゆすぐと、ふう、と安堵のため息を漏らし、疲れた顎を軽く揉みほぐしながらゆっくり立ち上がった。
「酷い目にあったねえ。どこでやられたの?」
 軽い口調で歯科医は尋ねた。
「……ああ、あの…あそこですよ、ほら、無死神塚の交差点の。 ……腐った奴ですよ、全く。たかだか指差し確認をしなかっただけでこのざまですからね。それなのにあいつらはなんの罪にも問われないでしょう? ほんとに世の中どうなって……」
 忌々しげに語る津山の背後で歯科医は無言で頷きながら、器具を片付けている。
「でも今日はこんな時間まですいません。もう営業時間もとっくに過ぎてしまっているのに……。いや、本当に助かりましたよ。先生は名医です。いったいなんとお礼を言ったらいいか…………」
 両手を広げて精一杯愛想よく振り返った津山の前で、歯科医は土下座していた。
「…………先生?」
 呆気にとられる津山に、歯科医は額を床に押し付けたまま、呻くように言った。
「……アレは私の………………息子なんです」
 治療費は取られなかった。



三、


「お帰りなさい。どうしたの? 遅かったじゃない」
 安江の問いに答えるより早く、透が膝にしがみついてきた。
「パパおかえりい〜。あのね、あのねえ、やすえさみちかったんだからあ〜」
 最近のお気に入りは妻のものまねである。明日でちょうど四歳になる。
「ばっ……ちょっ、こら透! …………もう」
 照れる安江を微笑混じりに見つめながら、津山は愛息子を抱き上げる。
「起きて待っててくれたのか透〜?」
 透はつぶらな瞳をしばたかせながら津山の顔をまじまじと見つめると、内緒話をするときのように小さく言った。
「……パパどうしたの? いたい?」
 津山は動揺を隠すかのように、いつもの優しい父親の顔になるよう意識しながら息子に笑いかけた。
「……ああ、ちょっと転んじゃってね。大丈夫だよ、心配してくれてありがとう透。 ……よ〜し、おりこうさんだからいい物をあげよう。パパのクローゼットの中を見てごらん」
 床に下ろすと、なんだろ〜? と声を上げ、透は嬉しそうに寝室へと駆けていった。
 津山は安江と居間に移ると、ソファに深々と腰を下ろした。
 子供の手前笑顔を崩さなかった安江が、心配そうに尋ねる。
「どうしたのよその顔……。何かあったの?」
 血はきれいに拭き取ってあるとはいえ、左頬は少し腫れが出始め、唇はキズと腫れで変形している。
 津山は何も言わずに安全違反者講習申込書を取り出すと、安江に手渡した。
「あなた、これ……」
 表情が曇る。津山はまるで自分に言い聞かせるかのように言った。
「大丈夫だよ。それに書いてあるとおり一日で終わるみたいだし、会社はどうせ休むしかないから、帰ったら透の誕生日会をやろう」
 出来るだけ平静を装ったつもりだったが、声が少しうわずっているのが自分でも分かった。
「でも、山田さんとこの旦那さんも人が変わってしまったって…………」
 津山はソファから立ち上がると、不安そうな安江の声を遮るように笑った。
「大丈夫だって! 建前があるから表向きはわざとそういう風な行動をしてるだけさ…………。とにかく、明日行ってくるよ。 ……そうそう、透の誕生日ケーキ、買ってこないとな」
 努めて明るく振舞ったものの、それ以上言葉が続かない。俯いたまま二人は黙り込んだ。
「パパ〜、これ〜?」
 暗い沈黙とは無縁の無邪気な声に顔を上げる。
 津山はつい弱気になっていた自分を振り払うかのように笑顔を作ると、居間に入ってこようとした透を手で制し、諭すように言った。
「ストップ! ちょっと止まるんだ透。いいかい? 練習だ。そういうときはどうするんだったっけ? こないだ保育園でならったやつだ」
 透は体の半分ほどもある包みを抱えながら、父親の問いに懸命になって答えようとする。
「…………ぼくしってるもん。……う〜んと、えっと、 …………にぎよし、ひだりよし、じぇんぽうよし、 ……あんじぇんよし!」
 幼い息子は小さな腕を不器用に振ると、得意そうにはしゃいだ。
「よーし、えらいぞ透。良くできました〜。お外でもちゃんとやるんだぞ、とっても大事なことだからね」
 歯痒かった。安全官の主張と全く同じことを、愛する息子に教育しなければならないのである。
 しかしまだ幼い透が無残に殴り倒されるようすなど想像したくもなかった。
 そうならないためには、安全違反をしないように躾けるより他にない。それが現実だった。
「パパ〜、これ開けてもいい?」
 中身は透が欲しがっていた合体ロボのおもちゃである。
「ああ、いいとも。でも昨日のうちに買っておいて良かったよ、明日は買いに行けないかもしれないからな。 ……あ、そうだ。ちょっと待てよ透、誕生日は明日だからなあ。明日になるまで開けるのは我慢だ」
 さっきまでの笑顔は一転、透は泣きべそをかきながら意地悪な父親に一生懸命抗議する。
「やだ〜! きょうがいいの! だって、だってパパだってなんかもらったもん! きのうのよるママにもうがまんできないっていってたもん! おっぱいのんでだっこもしてもらってたもん!」
 思わぬ反撃に津山は赤面した。
「いや、それはその………起きてたのか。 ……わかった、わかったよ。開けていいから、な? あっ、パパが開けてあげようか?」
 うろたえる津山をよそに、安江は透のうしろでクスクス笑っている。
「……全く、敵わないよお前には。ほら」
 津山はしぶしぶプレゼントの包みを開けると透に手渡し、頭を撫でてやった。
「わー! ハンテンジャーロボだー! やったあー、パパありがとー!」
 はしゃいで飛び跳ねる透を眺めながら、津山の顔にも自然と笑みがこぼれる。
「良かったわね透〜。かっこいいの貰ったね」
 平凡だが温かな家庭。穏やかに微笑む妻と楽しそうに遊ぶ息子を眺めながら、津山は幸せを噛み締める。
 明日、講習で何をされるのかはわからない。公開されていないし、好き好んで安全官の話をしたがる者もいない。
 袋叩きに遭うのか、何か強制労働でもさせられるのか、或いは洗脳教育でも受けさせられるのか。そもそも本当に一日で終わるのかどうかも怪しい。
(何をされようと、やつらの思い通りになどなるものか。俺はうまくやってみせる)
 この幸せな生活を守るのだ。津山は固く心に誓った。
 満ち足りた気分で妻と息子を眺める一方で、漠然とした、しかし拭いきれない一抹の不安を胸に、夜は更けていった。
 夕方から降り出した雨は、いつの間にか土砂降りになっていた。



四、


「……イチ! ニイ! イチ、ニイ! …………ゼンタァーーーイ、止まれ! 右向けェエーーーッ、右! ……右ェエーーーッ、ならえっ! ……直れ! ……休め」
 昨日の雨は嘘のように上がっていた。
 かわりに焼けるような陽射しがじりじりと照りつけ、蝉が暑さを鳴き渡らせる。 
 安全学校に着くと簡単な健康診断のあと、作業服と半長靴を渡された。
 やらされたのは基本教練であった。
 グラウンドには津山の他にも数名、同世代くらいからやや年配の人まで年齢層はさまざまだった。成人男性が殆どだが、若い女性や小学生くらいの子供もいた。みな顔のあちこちに青痣を作り、表情もなく黙然と隊列に加わっている。
「気をつけェエーーーッ! 教官に向かってェエーーーッ、敬礼! ……直れ! ……休め。 気をつけ! ……回れェエーーーッ、右! ……右向け前ェエーーーーッ、進め!」
 教官の号令に従って延々と動作を続ける。 
「……貴様、今間違えたな? ………よし。全員腕立て伏せの姿勢をとれェエーーーーッ」
 ミスをすれば連帯責任である。しかしそう頻繁にミスなどしない。日常的に誰もが慣れ親しんでいることであり、例え見知らぬ者同士でも数分もすれば指先まで一糸乱れぬ動作をすることができる。
 思わぬ講習内容に津山は拍子抜けした。もっと酷い目に遭わされるものだとばかり思い込んでいたのである。
 正直暑さには辟易したが、基本教練など小中高と学生時代はもちろん、社会人になってからも毎日やらされていることである。つらいどころか教練中に何度もあくびが出た。
 それを見咎められて教官の拳が飛んでくるようなこともなく、結局、午前中はただひたすら行進や整列を繰り返し、基本教練だけで終わってしまった。
(何だ、大したことないじゃないか。次は座学だと言っていたし、こりゃ楽勝だな)
 今朝は涙ながらに妻と息子を抱擁、まるで戦地に赴く兵士のような心持で家を出たのである。
 バカバカしい。津山は苦笑した。


「……えー、法規に関しては以上である。次は危険予知をやってもらう。 ……えー、ここに一枚の図がある。見ての通り交差点で沢山の人間が信号待ちをしている。この図に潜んでいる危険を予測して、それを回避するためにはどうすればよいか、具体的な対策を述べよ。例えば……」
 午後からは安全法規と危険予知であった。
 これもすでに何度もやったことがある。 
「……えー、津山悟、答えろ」
 椅子から立ち上がり、気を付けの姿勢で声を張る。
「……はい! 不用意に横断歩道を渡って信号を見落とした車に轢かれ! 最悪の場合死亡します!」
 教鞭を手で弄びながら、満足そうに教官は頷く。
「よろしい。ではどうすればこれを回避できるか…………その通り。指差し確認だ。 ……貴様らはこれができないからココにいる訳だ。たかが指差し確認、されど指差し確認、車は急には止まってくれないぞ、ええ? 歩行者より車が優先だ知らないのか? 全員一回ずつ答えて貰うからな。じゃあ次は……」 
 実はこれから何か酷い目に遭わされるのではないかと訝る津山だったが、退屈な講義が続くばかりで待てども何も起こらない。
 試しにわざと寝たふりをしてみた。しかし津山が机から顔を上げたのは、休憩のチャイムが鳴ってからのことであった。
「……よし。現時刻を以て座学の時間は終わりである。次の時間は徒手格闘訓練を行う。十分後、全員グラウンドに集合。遅刻のないように!」
 津山は身をこわばらせ、密かに拳を握り締める。
(格闘訓練? ……これから地獄のシゴキが始まるに違いない)
 おそらく津山と同じように察しているのだろう、教官が教室から出て行ったあとも、みな思い詰めたような表情で俯いたままであった。


「……それではこれより! 徒手格闘訓練を行う! 徒手格闘とは! 当身技! 投げ技! 関節技及び絞め技を総合的に駆使し! 敵を殺傷又は捕獲するための! 自衛隊時代から続く! 伝統的な! 戦闘手段である! 格闘に当たっては! あらゆる状況を冷静かつ瞬時に判断し! 旺盛な敵愾心を持って! 初動よく敵の死命を制しなければならない!」
 そんなものがなぜ安全の講習に必要なのか解らないが、理由などいる筈もない。
(これからみんな悲惨な目に遭わされるのだ)
 津山はそう確信していた。体で覚えろなどと言われて殴られるのだろうか。もしかすると隣り合った者同士殴り合いをしろと言われるかも知れない。
「えー、講習時間もあと二時間ほどしかないのでパパっと駆け足で進めるが、これには午前中の基本教練同様、規律心と体力を養うという目的がある。ダラダラやるのではなくて、気勢を充実させて、キビキビと動けよ。これで最後だからな、頑張ってやれよ。いいな? ……ではまず型から始める! 私の動きに合わせて動作するように!」
 教官の手本に合わせて、気合いとともに拳を突き出す。しかし体捌きだ、突きだ蹴りだ、お次は連撃だなどと言われても、運動の苦手な、ましてや格闘技などやるどころかテレビで見たことすらろくにない津山にはさっぱり解らず、動きについて行けない。
「貴様、なんだそのヘッピリ腰は。 ……いやらしい奴だなくねくね動かすんじゃない。タコ踊りの訓練じゃないんだぞ!」
 思わず噴き出しながら怒鳴った教官につられ、どっと笑いが巻き起こった。図らずも場が和む。
「いやぁ……はは、どうも」
 頭を掻きながら苦笑する。結局、型などよく解らないまま次に進むことになってしまった。
「よーし! 次は組手を行う。」
 津山は表情を尖らせ、鋭くみなのようすを窺う。
(そうら、来た。やはり殴り合いをさせるつもりだ。女性や子供もいるというのに。 ……怖ろしい)
 不安に心臓が早鐘を打つ。教官はグラウンドの隅を指差すと、そこへ行くように促した。
「あそこのプレハブに防具があるから各自取ってくるように! 全員グローブと胴当て、エルボーガードとニーパッドを必ず着用すること。 ……津山! お前は念のためヘッドギアも着けろ」
 津山は防具を着けながら首を傾げる。
(どういうことだ? これでは安全ではないか……)
 どうにも腑に落ちない。いつ酷い目に遭わされるのだろうか。
「みんな着けたな? それでは二人づつ順番に組み手をやってもらう。まずは津山悟、お前からだ。相手は、えーと、君、出なさい。君ぐらいが実力的に釣り合うだろう。怪我をしないように注意して行うように。では構えて…………始め!」
 津山の相手は、小学生の女の子であった。
(まいったな。子供相手に本気で殴る訳にはいかないし……)
 適当に受け流すだけにしよう、そう思って構えるやいなやである。
「痛い!」
 左太ももに衝撃が走った。子供の蹴りにしてはやたら重い。
 少女は鋭い目で津山をまっすぐ見据えている。何か格闘技でもやっているのだろうか、明らかに素人の構えではない。
 太ももを庇いながら中腰でうろたえる津山に鋭い連撃が入る。
「わっ、ちょっと待っ、痛っ! ぐふぅっ」
 脇腹に手を遣りつつ片手で待てのポーズをするが攻撃は止まず、臀部を蹴り上げられた。
 堪らず尻を押さえながら倒れた津山に対し、少女はなおも蹴りを入れてくる。
 津山は必死に立ち上がると、そのまま背中を向けて遁走した。
「うひぃっ……」
 素っ頓狂な悲鳴を上げながら、十メートルほど走ったところで足をもつれさせ、転んで顔面を打った。
 あまりに滑稽な津山の失態にみな指をさし、腹を抱えて笑った。
「よーし、そこまで!」
 教官は、肩で息をしながら放心している津山に駆け寄ると、どうにも笑いを堪え切れないといったようすで津山の頭を軽く小突いた。
「貴様あ! …はは、小学生相手に何やってふふふ…全くしょうがない奴だ……ははっ、ふ…ぶふっ、ぶはははは」
 止まない大爆笑の渦の中で、津山はひとり違和感を覚えていた。
(何なんだ、この穏やかな雰囲気は………)
 とりあえず、一緒に笑った。



五、


 徒手格闘訓練が終わると、教官がみなにジュースを奢ってくれた。みかんジュースであった。
 ちょうど疲れきっていたところであったから、みな歓声を上げて喜んだ。
(おっ、つぶ入りか?)
 みかんの粒にしてはいささか小さすぎるような気がしたが、特に気にするほどのことでもない。
 少し陽が傾いてきたグラウンドに座り込んでぼんやりとジュースを飲みながら、津山は一日を振り返った。
 酷い目に遭わされるどころか教官は意外と優しかったし、講習自体は疲れたが心地良いと感じることが出来るていどの疲労で、寧ろ良い運動になった位である。
 みなの間にも妙な連帯感が生まれ、仲間意識のようなものが芽生えつつあるのか、さきほど数人に囲まれ、今度全員で飲みに行きませんかと誘われた。少し戸惑いながらも、それも悪くないか、と感じる自分がいる。
 確かに厳しい世の中だが、津山が思っているほどではないのかも知れない。今まで独り善がりな思い込みによって、必要以上に社会を嫌悪していたのだろうか。
 考えれば考えるほど、そう思えてくるのであった。或いは夕日を眺め過ぎたせいだろうか。


 着替えを済ませて受付で受講証明書を貰うと、津山は安全学校をあとにした。
 家に向かう途中、電柱に貼ってあったポスターに思わず足を止めた。
<君も安全の虫になろう! 安全官募集中>
 どうやら安全官の求人広告である。青空をバックに、制服を着た二人の男女が敬礼している。 
 ふと、まるで虫のように床に這いつくばったあの歯科医の姿が脳裏に浮かんだ。
 津山はため息をつくと、しばし黙考した。
 息子が安全官になってしまったとは、同じ一人の父親として心中察するに余りある。
 もし透が、など考えるのもおぞましい。 
 給料が良いとは聞いたことがあるが、安全官は誰もが忌み嫌う存在である。よほど職と金に困っているか、でなければ頭のおかしい輩だというのが庶民の一般的な見方なのである。
 もしかするとあの津山を殴った歯科医の息子も、何か事情があって安全官になったのだろうか。
 もともと心根の優しい息子であったが故に仕事だと割り切ることが出来ず、心と現実とのギャップに徐々に精神が崩壊、気が違って凶暴な人格に変異してしまったとは考えられないだろうか。
 だとすると、彼もまた被害者なのかも知れない。都合よく楽観的な想像に過ぎないことは自覚していたが、そう思いたかった。
 理由もなく狂ってしまう人間などいない、と。



「大丈夫? 怪我は? 何ともないの?」
 玄関のドアを開けると、すぐに安江が駆け寄ってきた。
「ああ、ピンピンしてるよ」
 よほど心配してくれたのだろう、安江は泣きはらした眼に涙を溜めながら津山の顔をじっと見つめると、倒れるように体を預けてきた。
「良かった。 …………安江、さみしかったんだから」
 津山は安江を抱きしめると、指でそっと涙を拭い、優しく額にキスをした。
「全然大したことなかったよ。基本教練とか座学とか、まあ格闘訓練はちょっと疲れたけどね」
 安江は両手で包み込むように津山の頬を撫でると、なおも心配そうに言った。
「ほんとに大丈夫? あなた何かあったら私…………」
 津山は安江に微笑みかけると、穏やかに言った。
「大丈夫、いつもの俺さ。まあ俺もどんな酷い目に遭わされるのかと思ったけど、拍子抜けするくらい楽勝だったよ。 ……そうそう、教官がジュース奢ってくれたんだぜ……」
 不意に眩暈に襲われ、津山はよろけた。
 安江はとっさに津山の体を支える。
「あなた! 大丈夫?」
 津山はすぐに持ち直すと、片手で額を押さえながら笑った。
「……ああ、大丈夫大丈夫、ただの眩暈だよ。ちょっと疲れたのかな。 ……透は?」
 少し気丈さを装っているようにも見えたが、安江は涙を拭いながら、ようやく笑顔を見せた。
「寝てるわ。園から帰るなり今日はパパの絵をたくさん描くんだってはりきってたんだけど、疲れちゃったのね。 ……起こしてくるわね、誕生日会するんでしょ? 大丈夫よ、お昼寝いっぱいしたから」
 安江はそう言うと、寝室へと歩いていった。
 津山はひとり居間に入ると、ソファに腰を下ろした。
 ふとテレビに目を遣ると、津山の好きな芸人が漫才をしている。
「ははっ! はははははっ!」
 思わず大声で笑った。
 いつもの日常に帰ってきたのだ。心配するようなことなど、最初から何もなかったのだ。
 この幸せな日々は、これからも続いていくだろう。
「パパ〜?」
 寝室のほうから、まだ眠そうな透の声が聞こえた。
 すぐにぺたぺたと愛らしい足音が聞こえてくる。
 津山はかわいい息子を出迎えようと、ソファから立ち上がる。
「パパきょうねえ、パパのえいっぱいおえかきしたの〜」
 画用紙を嬉しそうに頭上に掲げながら居間へ入ってきた透の腹を、津山は思いきり蹴り込んだ。
 小さな身体は居間の外まで簡単に吹っ飛ぶと、くの字に折れ曲がって床を滑った。 
「透? ……透!」
 安江が悲鳴を上げながら透に駆け寄る。
「はっ…か…っ……はあっ…こっ……」
 透は涙で濡れた幼い眼と口をあらん限り開きながら、蹴られた衝撃で止まった呼吸を必死で取り戻そうしていた。
 もがく力を持たない小さな四肢がまるで震えるように痙攣すると、喀血した。
 べちゃっ、と不安を煽るような音が、赤く床を汚す。
「……嫌よ、透! 透ー!」
 泣きながら取り乱す安江をよそに、津山は何が起こったのか理解できなかった。
(俺はいったい何を……。とにかく透を早く病院へ連れて行かないと)
 心とは裏腹に、思わぬ言葉が口をつく。
「だめだぞ透、ちゃんと指差し確認しないと」
 安江は恐怖と驚きの入り混じった表情で津山を見上げた。
「…………あなた何言って……」
 津山の意思とは無関係であった。気づけばそう言っていたのである。
(何かされたのか? いつ? まさかあの……)
 しかしその疑念はすぐに意識の奥へと呑み込まれていった。ぼんやりと浮遊しているような、奇妙な感覚が心を支配する。
 悪い夢を見ているかのように実感がなく、まるで人ごとのようである。
(なんとかしなければ、家族を守らなければ……)
 一応頭の中に言葉は浮かぶものの、それを強く想うことが出来ない。
 透を抱えて逃げ出そうとした安江の髪を掴み、無理やり引き戻す。
 強引に天井を仰がされた安江の顔面に、津山は容赦なく拳を振りおろした。
 潰れるような、鈍い音がした。血がボタボタと音をたてて床に滴る。
 ゆっくりと拳をかざし、何か珍しいものでも見るようにまじまじと眺める。殴った衝撃が心地良い余韻となって残っていた。
「安江も指差し確認しないとね。まず親がちゃんとやらないとさ、子供に示しがつかないからね。 …………ほら、早くやれよ」
 起き上がろうとした安江の腹に蹴りを入れる。
「ふうっ…」
 津山は、くぐもった呻き声を発して床に倒れた安江の髪を再び掴むと、無理やり起き上がらせた。
「ほら、指差し確認だよ? ちゃんとやらないと」
 安江はあさっての方向に曲がった鼻から鼻汁交じりの血を滴らせながら、弱々しく右手をかざし、人差し指を立てると、か細い声で呟くように言った。
「……右ヨシ……左ヨシ……前方ヨシ…………安全ヨシ……」
 津山が掴んでいた髪を離すと、安江は眼を閉じてぐったりとした透にしがみつき、声を立てずに泣いた。
 津山は二人を冷たく見下ろしながら、暴力によって他者を従わせるという快感に酔い痴れていた。
 まるで眩暈にも似た、ぞくりとするような感覚が体中を駆け巡っているのが判る。
 津山は勃起していた。



<君も安全の虫になろう!>
 あの求人が、今はとても魅力的なものに思える。
「講習も結構楽しかったような気がするしなあ。 ……あ、しまった。透の誕生日ケーキ、買ってくるの忘れてた。よーし、今から三人で買いに行くか?」
 すでに動かない息子と、呆けたように宙を見つめている妻に話しかけながら、踏みつけていた絵を拾う。
 子供特有の拙い歪な線で、画用紙からはみ出しそうな大きな笑顔が描いてある。
「おっ、パパを描いてくれたのか」
 二人のほうを向いて、顔の横に絵を掲げる。
「よく描けてるじゃないか透、そっくりだ」
 津山はそう言うと、嬉しそうに笑った。



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■講評

恐怖度1
文章力1
構成力0
アイデア1
長かったけれど、飽きさせずとっても面白かったです。みかんジュースに何か仕掛けがあるという事ですね。安全の虫って一体。気になります。

名前: 妖面美夜 ¦ 16:34, Saturday, Aug 15, 2009 ×


最初は少しとっつきにくい印象がありましたが、読み進めていくと独特の雰囲気があって面白いと思いました。
ただ、津山が狂うまでの経緯とオチが簡単すぎるのが難点のように感じました。
おかしくなっていく過程と津山の意識をもっと丁寧に書かれていれば良かったかと思います。

アイデア・1

名前: 気まぐれルート66 ¦ 22:18, Saturday, Aug 15, 2009 ×


個人ではどうすることもできない絶望感を強く感じました。
長さを感じさせない力作だと思います。

アイデア 1 筆力 1

名前: もりもっつあん ¦ 10:55, Sunday, Aug 16, 2009 ×


まず些事からの指摘となってしまい申し訳ありませんが……
〈喀血〉は気管支(つまり肺や呼吸器)から出た血を吐き出すことで、たとえば結核の患者などが吐き出したりする血のことを言います。作中の透くんの場合は〈吐血〉が正解でしょう。明らかな単語の誤用だったので。
教習所での諸々の描写に、女性的な細やかさを感じ、好感が持てました。

「やだ〜! きょうがいいの! だって、だってパパだってなんかもらったもん! きのうのよるママにもうがまんできないっていってたもん! おっぱいのんでだっこもしてもらってたもん!」

この台詞さえなかったら、私はあともう一点付けていたでしょう。

文章―+1
構成―+1
恐怖―0

名前: あおいさかな ¦ 00:36, Saturday, Aug 22, 2009 ×


 序盤、ちょっとダラダラとした感じに思えましたが、ちゃんと最後につながってくるんですね。
 なかなかおみごとでした。
 また、なごやかな講習会風景も非常に効果的です。
 よく考えてありますね。

 もうちょっと私の好みと違うので3点と言う事でご勘弁を。

【アイデア】+1、【描写力】+1、【構成力】+1、【恐怖度】0

名前: ユージーン ¦ 23:08, Wednesday, Sep 02, 2009 ×


非常に印象的で、面白かったです。
途中で先が予想出来てしまったのはちょっと残念ですが、世界観がしっかりしていて、長さも気にならない文章には非常に好感が持てました。


名前: PM ¦ 18:59, Tuesday, Sep 08, 2009 ×


面白かったです! 
わけが判らないまま読み進めていくうちに、徐々にこの世界の仕組みが判ってくる構成が、すごく良かったです。不条理さと絶望感に抗うことも戦うこともできない、雁字搦めの恐怖が素敵でした。

*文章+1 *構成+1
*恐怖+1

名前: げんき ¦ 23:24, Thursday, Sep 10, 2009 ×


・アイディア±0
 安全の虫という使い方は肯定するが、肝心の内容や見せ方をあまり面白くは感じなかった。
・描写と構成−1
 ネタを書くために必要なのなら長いのは構わないし、文章自体は悪くないと思った。が、みかんジュース一つで洗脳が済むのなら、講習会の風景は何のために読まされたのだろうか?
 少し洗脳方法が安易。長文で積み重ねてきた情緒や想いは、同等の丁寧さでのみ昇華されるのだと思う(「怖さ」の所で後述)。
 講習会前後の津山の落差を描くだけなら、もっと根本的に縮められると思う。
・怖さ±0
 安全違反者講習会の授業そのものに罠があって、そこで津山が徐々に洗脳されていく、という展開を期待していたのだが。というか、そうでないと長い意味がないように思うし、作中でもそんな風に煽られてきたと思うのだが。落とし方は読めていたが、課程が面白ければ否定材料にはならない。過程が面白ければ。
・買っても後悔しない魅力−1 積み重ねてきた物が、みかんジュースの安易さと講習会の無意味さで台無しになってしまっている印象。

名前: わごん ¦ 01:51, Friday, Sep 18, 2009 ×


平和の象徴であるという、オリーブドラブ色の制服に身を包んだ安全官。説明的で回りくどい文章だと思います。平和の象徴だろうが何だろうが構わないと思ったのは私だけでしょうか。
それから、台詞で全てを説明するのは作者の怠慢としか思えません。
ドラマなどで良くある、相手の居ない携帯に向かって演技をしているようなものです。
世界観や話の流れには人目を惹くところがありますので、少々残念ですがこの点数で。

発想・1 構成・0 文章・-1 恐怖・0

名前: 三面怪人 ¦ 14:36, Friday, Sep 25, 2009 ×


最期まで引っ張られて、飽きずに読めました。
ただ、物語全体としては既視感が感じられるパターンであり、さらに途中で結末が分かってしまいました。
結末か、その前辺りに工夫がいったかなと。


アイデア  0
文章    1
構成   −1
恐怖度    1

名前: 鶴の子 ¦ 20:55, Friday, Sep 25, 2009 ×


独特の世界観を作り出していますが、話の展開は講習が出たところで読めてしまったのが残念。
また、文章は手馴れていて、とても読み易かったのですが、講習での格闘訓練など
あまり必然性の無い描写が所々であったように思います。

名前: 水本しげろ ¦ 21:34, Sunday, Sep 27, 2009 ×


発想+1 文章+1 構成0 恐怖0
講習風景は穏やかですが、お役所仕事は体面上一見意味のないようなことをしますからね。
津山が狂っていくさまは、もっと丁寧に書いたほうがやはり良いでしょう。ちょっと急に飛び過ぎかと思います。

名前: 戯作三昧 ¦ 02:08, Monday, Sep 28, 2009 ×


追記:
 この作品のテーマは「狂気はどこから来るのか」って所にあると思うんです。
 で、私は狂気ってのは人間の内側から来る物だと思っているんです。
 外部からやってくるように見えても、それは内部の狂気と呼応する事によって引き出される物だと思っているんです。

 でも、この作品では残念ながら、その「狂気がどこから来るのか」ってのが弱いんですね。
 得体の知れない卵で終わってる。
 狂気はどこから来るのかっていう根源的なテーマから避けているのが私には非常に残念なんです。
 最後に息子を蹴り殺すってところが実に衝撃的で、その絵を考え出したって点についてはものすごく評価するし、それだけで点数を付ける価値があると思うんだけど。

 人間っていうのは完璧だからいいんじゃなくて、欠けている所もあるから素晴らしいと思うんだよね。
 狂気ってのを内側に含めた物が人間であり、狂気こそ愛おしい。
 愛ってのは、何かにこだわりを持って不合理な行動を取る状態を愛って呼ぶんだと思うんだよね。
 だからもっと狂気と向き合って欲しいと思うんですね。
 そうなった時に、主人公にものすごく感情移入できるようになる気がするんです。

 もちろん、それは私がそう感じてるってだけのことだから、「勝手な事を言いやがって」って思われてもしかたないんです。
 また、私の感じた通りに書いても点数がたくさんもらえるとは言えないし、むしろ下がる可能性が高いです。w
 だからそう思われたらごめんなさい。
 この内容は無視して下さい。

 それが私が4点を付けずに3点にした理由です。

名前: ユージーン ¦ 02:10, Wednesday, Sep 30, 2009 ×


気持ち悪い話が多くバイオレンスはあまりなかったので、この作品の暴力シーンは素直に怖かったです。物語を作る上で本質的な恐怖は必要ですね。

名前: 読書愛好家 ¦ 23:39, Thursday, Oct 01, 2009 ×


[追記]
 ふと、言い足したほうがいいと思ったもので。

>この台詞さえなかったら、私はあともう一点付けていたでしょう。

 っていうのがね、別に私が「台詞が下品で嫌だ!」っていうわけじゃなくてw(むしろそういう耐性は高いほうです)、せっかく密度の高い内的世界が作者さんの中にあって、しかもそれを書けているのに、この台詞が悪い方向に壊しているんですよね。
 多分、後で「平和な家庭」をぶち壊すために「いかにも」なカンジで馬鹿馬鹿しく(皮肉っぽく)書いたと思うんですけど、その「いかにも」の度が過ぎているというか、見極めきれていないというか。
 という意図です。

名前: あおいさかな ¦ 07:24, Saturday, Oct 10, 2009 ×


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