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レギニータ
―1.大地から2,000メートル―
 夜は朝日に殺されるまで、通奏低音を鳴らしている。
 多くの人間は大人になるまでにその音を忘れてしまうが、暗い部屋で、目を閉じていると、それはだんだんと頭の後ろの高いところから聞こえてくるのだ。音に意識を合わせれば、次第に身の内の鼓動や、血の走りが鮮明になり、手足が微かに痺れ、意識が遥か遠くに融けてゆく塩梅となる。
 青年がギターを抱えこみ、夜の低音にアルペジオを奏でていた。天井がごく淡い光を放つ応接間。照明は最低限。青年は砂鉄色のパンツをはいた脚を組んで、ソファに掛けている。痩せた体に、頼りなさを隠すような大き目のジャケットを着て、肩にストールを巻いている。ストールの白色が、暗い室内に光を跳ね返していた。髪の色も夜に溶けこむ黒。耳に橄欖石のピアスが光っている。感受性の強そうな顔立ちで、今は長い睫毛を閉じ合わせていた。
 躊躇いがちに口を開いた。掠れた歌が薄い唇から零れ落ちた、その時。
 彼は切れ長の目を見開いて激しく咳きこんだ。ギターを寝かせて体を屈め、せわしなく背中を膨らませたりへこませたりしている。酸素を求めて呼吸すればするほど、それが喉への刺激となって次の咳を誘発し、ますます呼吸を妨げる。口を押さえるハンカチが血痰で赤く染まった。咳の発作は数分の間続いた。不用意に声を発したことを後悔させるに足る時間だった。やがて咳も止まり、荒い呼吸が残った。
 それも収まってくる頃、廊下でエスカレーターが起動した。虫の羽音にも似た機械音に、青白い顔を上げると、両開きの自動ドアが開いた。廊下は明るさに満ちていて、塗ったように、光が四角く床に落ち、その真ん中を従者の影が縦に貫いた。
「ミナシキ様。接見の用意が調いました」
 従者の声に感情はない。最後に寄越された従者には、お粗末ながらも声に表情をつける機能がついていた。今ではそれすらも、彼の相手には勿体ないということだ。
 ミナシキと呼ばれた青年がギターを置いて立ち上がった。機械の召使いはローブを翻し、ミナシキに先立った。
 部屋の外は太い吹き抜けとなっている。狭い回廊がこびりつくように右回りに渦巻いており、頭上にも、また足元にも、エスカレーターのチューブが引き延ばされていた。張り渡された鎖のようなチューブを透かして、回廊の向かい側が薄暗く見える。
 エスカレーターに乗ってみれば、足元はずっと遠く、薄闇に紛れている。さらにその底に億の人々の暮らしがある。

 『輪廻の鯨』というのが、この建造物の名だ。高度二千メートルを越す巨大な四角錐で、世界の人々はすべて、鯨の中に存在する。
 鯨の最上部には人々の生活を維持する機構の首脳部が集められている。そうした機構に囲まれて、王に連なる人間たちが棲みついている。
 一方最底辺は、地上から高さ百メートルを越す幾層もの迷宮となっている。その間に第一層から第三層までの人間の居住区が設けられており、さらにその中で層が形成され、貧しいものや後から来た者は鯨の低い部分、外側の部分へと、富める者職を持つ者は、鯨の高く深い部分へと、棲み分けが成されていた。
 迷宮は地上からの敵の侵略を拒む為に造られたものだ。迷宮の、更に底に広がる暗闇から、ある日人間が押し寄せた。人間たちは群れをなし、暗黒の迷路に恐れ、はぐれた者から敵に襲われて命を落とした。敵の多くは羽虫を模した機械だった。無数の棘の生えた細長い脚が、ぬっと行く先の曲がり角から現れて、人間を引きずり寄せては頭を潰し、四肢をもぐ。遠くから、近くからの、嬲り殺される同胞の悲鳴に囲まれて、人は暮らしていた。
 生きている人間は、僅かな光源を取り囲み、それを聞いて笑っていたように思う。
 遠い声が、あるいは誰か人間の名を叫ぶ時があった。撃たれたように叫び返し、暗闇に駆けてそれきり戻らなかった人がいた。その背を指差す人もまた、薄笑いを浮かべていたのである。何であれ、取り巻く日常を喜劇としてとらえることは、深い知恵であった。
 妙なのは、当時あまりにも幼かった為、それが本当にあったとしても覚えているはずがないのだが、まあ、そういう事も有るのだろう。
 そして赤土の荒野に輪廻の鯨を抱くこの世界は、名を『レギニータ』という。

 分岐した時と歴史の数だけ、人間世界は重なりあいながら枝葉を広げていた。そのように展開した世界は総て『世界樹』という概念で表される。
 とある枝(時間軸)上の複数の葉(世界)に、ある日『蟲』が送りこまれた。
 遺伝子操作で巨大化された蝿が、確認される最初の侵略の形である。その蝿は見る間に子孫を増やし、人間を襲撃をした。人間側が反撃にでると、次は地球にとって未知の物質で造られた兵器に変わり、別の葉に対する侵略の手口も、実験のように繰り返された。侵略のシンボルが虫の形で現れるのは、それがより多くの人間に強い忌避感を抱かせるものだからであろう。鳥や、魚や、鉱物や植物より。
 つまり、『蟲』を地球に送りこむ者どもは、地球人の性質をよく知っているのだ。
 各世界がほころび始めると同時に、それぞれの世界を結ぶ通路が観測され始めた。通路は穴とも呼ばれたが、今は『橋』という呼称で収まっている。直ちに橋の調査が始まり、それがまだ十分に為されぬうちに、人間はまだ侵略の始まっていない別の世界へと逃げ始めた。その結果『蟲』の侵略は拡大され、それぞれの世界が混乱に陥ったぶん、人が蟲に立ち向かう有効な手立ても損なわれていった。
 レギニータは世界樹の、恐らく最果てに存在する。他の世界へ繋がる橋が一つしかないことが、そう考えられる理由だ。橋は一つ渡るたび、つまり元いた世界が一つ遠ざかるたび、新しい世界に適応させる為に、人間から少しずつ記憶や人格を奪ってゆく。
 人間たちが巨大迷宮で殲滅されるのを待っていた日々、乳飲み子を抱えた女が喋る剣を拾った。
 輪廻の鯨は高い文明力を持つ『先住者』たちが作り上げたものだ。その剣もまた、滅ぼされた先住者の残した遺物だった。
 剣の声に導かれ、女は人々を鼓舞し立ち上がる。隣接世界やそのまた隣から、人を吸い上げ、物資を吸い上げ、迷宮を制覇して人間が住む第一層に到達した。
 死に絶えたのは先住者ばかりで、輪廻の鯨の全機構は活動を続けていたのだ。
 最上部に辿り着いた女と取り巻きの者たちは、この建造物を統括する人工知性体から様々なことを教わった。まず、その知性体を『インカーネイト』ということ。人類の勝利と再生を目的として作られた。建造物の名前や構造、それを作った人間が滅んでしまったこと。喋る剣の正体。剣には『ReRouE(リルーイ)』と呼ばれるインカーネイトの末端が付与されていたのだ。インカーネイトは女に、人間を統治する王となることを提案した。
 女の名はレンシディ。
 彼女は人間の男から言い寄られているところだった。亡くした夫を思うと気が向かぬが、そばにいて自分を支える人間も欲しかった。強い絆で結ばれた相手が。その男が、成人した聡明な娘を連れていることもまた、気を緩くさせた。
 レンシディは再婚してすぐ、取り返しのつかない選択をする。
 その時になって彼女は、レギニータというのがインカーネイトの擬似人格を表す名前だと知るのだ。
 王の息子、ミナシキは、十二歳になっていた。五つ下の妹分がいた。
 血のつながりは無いが、いつもミナシキを好いて後を追ってくる子だった。母と共に蟲どもの巣へ赴こうとするミナシキにしがみつき、「行くの、行くの」と泣いて怒っていた。十になるまでは駄目だよと、銃を手放して慰めたものだ。ビルキエというそばかす顔の女の子だ。

 エスカレーターを上り詰めた先に、高いアーチの天井に護られた長い廊下がある。その先の扉が開け放たれていた。ローブのフードで顔を隠して立ち止まる従者を置いて、ミナシキは足早に廊下を渡った。
 部屋は配管に沈んでいた。王の間と呼ぶに相応しいほど絢爛豪華、色とりどりの色彩で以って――機械、機械、そればかりが、来る人を迎える。むき出しの鉄路が一筋、カーブを描いている。その先に円形に開けた空間があった。
 十歩で足る程度の奥行きだが、高く尖った天井が狭さを紛らわせる。空間の奥の壁には一際大きな鉄の箱が埋め込まれ、扇形に様々な太さと色の管が伸びて、壁や天井を這っている。箱の前は床が高く上げられ、同じような箱が安置されている――棺おけのように。
 棺おけは透明の壁で守護されている。その壁の前に人間の男女が立って、ミナシキを待っていた。
「やつれたな、王子」
 高座から、嘲りをこめて赤い髪と赤い瞳を持つ女が言った。王の再婚相手の娘、つまりミナシキの義理の姉にあたる女だ。名はロウオク。隣に父のゴドハが聳えるように立っている。六十を眼前にして、いまだ屈強な体を持つ大男だ。
 レンシディは――インカーネイトと融合し、あの棺に横たわっている。
「王のご容態は如何か」
 ロウオクを無視してミナシキは尋ねた。
「変わらぬ。思考は埋没状態にあり、ロウオクの呼びかけに応答することさえ稀だ」
「まだ蟲との意思疎通を試みておられるか」
「そうだ。依然結果は出ておらんがな」
 失敗、不能、インカーネイトは確定した過去にしか、そのような結論を出さない。レンシディの人格を呑みこんでなお、それは変わらぬようだ。敵との交信も過去から変わらず、継続中の状態にある。近頃はめっきり人間の統制に関する指示も出ない。そうした指示は時折、ロウオクに向けて出す。彼女は交信用のReRouEを埋めこんだ兜をかぶっている。
「なぜ俺を呼んだ」
「王から貴様への指令が出たのだよ」
 と、ロウオクが答えた。
「遠い枝に新しい葉が芽吹いた。人類の戦いによって生じた葉だ」
「それはどこだ」
「第一枝。最初に蟲が送りこまれたあの枝だよ」
「あの枝に......? まだ生きている葉が」
 ミナシキは率直に感心した。レギニータは第十二枝の末端に存在する。枝が遠いということはそれだけ、世界の質が違うということだ。第一枝の流民はレギニータに到達するまでに、そこでの記憶を大半なくしてしまっている。記憶喪失の度合いは人それぞれだが、何らかの思い出を残している者も、それを口にすることはない。あの枝は既にない、という印象だけが蔓延していた。
「一つだけ......いや、今は二つか。いずれにしろ滅亡に瀕した第一枝が、新たな葉を誕生させた事実は驚嘆に値する」
「発生の因果は?」
「我らが先住者と同じ事に気がついたからだよ。即ち科学力と霊力の結合。そのいずれかだけを取り上げても、人間の総力と呼ぶには足りぬ」
「王はその葉を助けよと命じられた」
「援助としてReRouEを寄越すことをお考えになられたのだ」
「その役目にインカーネイトは貴様を指名したよ」
 ロウオクはゴドハとの間に立つ台から、若草色の紗にくるまれた剣を手に取った。
「因果元の葉は科学と霊は相容れぬものとし、科学力のみで戦うことを人類の総意とした。善戦をしてはいるが、この葉は滅ぶであろう。ミナシキよ、貴様は輪廻の鯨最低部の橋を通り、派生した新しい葉に向かうのだ。貴様の記憶と人格は、ReRouEが守護する」
「この労咳病みにゆけと言われるか」
「インカーネイトの決定に誤りはないのだよ」
 ロウオクは剣と鞘に紗を巻きつけながら、ミナシキの前に歩いてきた。腕を伸ばし、切っ先を床に向けて、ミナシキに突き出した。
「この剣にReRouEを憑依させている。途上で貴様が斃れようとも、そこに人間がいる限り、ReRouEは新たな主を見つけて第一枝へ向かうだろう」
「それが母上のお望みか」
「そうだ。インカーネイトとしても、レンシディとしてもな。断る理由はあるまい?」
 唇を結び、目のうちに暗い影を落とした。
 そして手を伸ばした。
「受けよう」
 ロウオクの手から突き出た鞘を、シキは握り締めた。それは意外なほど軽かった。
「王は歓んでおられるぞ。浮かぬ顔をするな」
「出立の時は準備が整い次第知らせよう」
「今すぐでも構わんのだぞ」
 ゴドハは堅い肉に埋もれた両目でミナシキを見下ろし、笑った。
「これはこれは......」
「やる気があるのは良いことだ。以降一切の通達はReRouEを通じて行う。下がってよいぞ」
「ミナシキよ」
 ゴドハが呼び止めた。
「あの片割れがいる限り、お前はどこの次元にあっても孤独であろう」
「......心得ている」
 体を半分通路に向けたままミナシキは答えた。
「インカーネイトは唯一蟲との疎通に成功したあの女に連なる者としてお前を選んだ。レンシディはあの片割れの存在を許せぬとしてお前を選んだ。両者の、すなわち王の決定だ。このことを胸に刻みつけておけ」
「言われずとも」
 背中を向けたミナシキを、もう一度ロウオクが呼び止めた。
「大事なことを忘れておったわ。貴様の病についてだが――レンシディはまだ貴様を許さぬと仰るぞ!」
 ミナシキは苛立ちを隠そうともせず、そのまま部屋の出口へと歩み始めた。
「くれぐれも忘れぬことだな!」
 ロウオクの声が、背中から、胸にぶつかってきた。。

―2.ヒトの祭り―
 壁は乾いていた。壁の間で階段が寝ている。天井はゆるやかな螺旋を描く階段と同じ形で遠い頭上にある。薄蒼い明かりが空間に降っているが、光源がどこにあるのか見当がつかない。ミナシキは螺旋の内側の壁に、時折手をつけながら、階段をおりていた。気温は氷水のようで、吐く息全てが白くなって見えた。彼が最上階の居室を後にしてから三日が経っていた。予定では第三階層の底辺に到達できるはずだが、時刻が昼に近付くと、次第に体の熱が上がり、たびたび咳の発作が肺の奥底から衝き上げてくる。その度に足が止まるから、本人が予想した以上に、旅は進まなかった。
 壁の中からあの低い、夜の音が聞こえてくる。
 それに気付いて、ミナシキは足を止めた。手を添える、粉をふいたような石組みの壁が微かに震えている。何か――恐らく水が走っているのだ。ミナシキはまた、微かな靴音を供に歩き始める。
 今が夜のはずがない。日の光を見なくとも、ミナシキは体調の移り変わりで今が一日のどの時間帯かが分かる。もっとも調子のいい、体の動く時間が朝。もっとも悪く傾くのは、昼の頭から日没にかけて。
 喉に何かひっかかる感触が来た。最初のそれを無視しようと、いつも試みるけれど、違和感は次第に痒みに変わり、ゴホンと吐き出したが最後、続けざまに小さな咳がこみ上げて、もう自力で止めることができない。
 よろけるように螺旋階段の裾広がりへ移動し、壁にもたれかかった。背中をこすりながら膝をつくと、若草の紗で固定した剣の鞘が、からんと音を立てた。咳はやまない。鼻の奥で血の臭いがして、口を覆う掌が赤く濡れてゆく。
 咳に混じる詰まった排水管のような音が次第に消えていき、元の乾いた音に戻って、ひとまず落ち着いた。ミナシキは黒いジャケットからハンカチを取り出し、口を拭き、右手を拭いた。
『ミナシキよ。歩けますか』
 案じるでもなく、冷ややかな女の声で、腰の剣が話しかけた。まだ息の治まらぬままミナシキは立ち上がった。
「問題ない――」
『ならばお急ぎを。現在、予定された行程よりも十一時間の遅れが生じています』
「分かってる!」
 左肩にザックを担ぎ、再び歩き出す。急かすばかりのReRouEに、ミナシキは苛立っていた。誰よりも輪廻の鯨、ひいてはレギニータからの脱出を願っているのは彼自身なのだ。ここさえ出られれば、医者に罹ることができる。立ち止まることは、それだけ寿命が削がれることを意味する。
 だが、そのように焦るのがいけなかった。呼吸が穏やかにならぬ内に、次の発作が来た。ミナシキが座りこんで咳をしている間、ReRouEは黙っていても、不機嫌な気配を垂れ流しにしていた。
 収まりかけた頃、また話しかけてきた。
『ミナシキ。人が来ます』
 ミナシキはまだ咳をしながらその音を確かめた。
 警戒しながらこの階段を上ってくる者がいる。軽い......痩せた人間だ。手前のカーブで足を止める。ミナシキは首をもたげて相手を確かめようとした。
 平たい布の靴と、足首まであるスカートの裾が目に入った。喉を押さえながら面を上げると、人間の女が、内壁に両手を添えてミナシキを見詰めていた。
 長い前髪と怯えた目が、少女のような印象を与える、田舎じみた娘だった。目が合うと白い指が、壁を引っ掻いた。
「誰?」
 また俯いて乾いた咳を繰り返す姿は、その娘の目にさえ無害な存在と映ったらしい。娘が、近付いてきて、前の段にしゃがんだ。
「......構うな」
 視界に白いハンカチが差し出された。
「大丈夫ですか? 血が......」
 返事の代わりに立ち上がり、下への移動を開始した。上に用事があるはずなのに、娘は慌てた様子でミナシキの横に並んだ。
「待ってください」
「何故こんな場所を歩いている......一般市民の知らない通路だぞ」
 振り払うつもりで言うと、口を噤んだが、ついてくるのを止めようとはしなかった。
「......いえ......そんなことはありませんよ、結構色んな人が使って......」
「上に用があるんじゃないのか」
「それは、大したことじゃ」
『ミナシキ』と、またReRouEが呼びかける。
『女の好きにさせなさい。いずれ――』
「お前は黙ってろッ!」
 びくりと体を震わせて、娘が硬直した。

 ミナシキは娘の家に案内されて、そこで顔を洗った。トイレと洗面所が一緒になった風呂の他は、調理場つきの部屋が一つあるだけで、布の衝立でベッドが仕切られていた。窓の向こうに真四角のコンクリートの空間があり、庭と呼ぶにはあまりに味気ないその場所には、鉄網の通路の模様が落ちていた。光の通りを良くするための工夫だ。壁が薄いため上を行き交う人々の声もよく通る。大人の歩みは大股で、子供らは走りながら何か喋り交わしている。
 サヤカは一本に結った長い黒髪を見せて、紅茶を淹れていた。こちらを向いてミナシキの前に置き、向かいに座った。
「散らかってて、すみません。人をお迎えしたことがなくって......」
 紅茶はかろうじてアールグレイの香りがするものの、渋み以外の味がない。ミナシキはもてなしの礼を言った。
 部屋にはエンピツの臭いが充満していた。
 窓の下に何枚も、画布が積み上げられている。イーゼルに一枚立てかけられて、こちらを向いていた。
 長い尾ひれと腹びれを持つ観賞魚が身を翻し、今にもこちらに泳いで来そうな姿を見せている。鱗の一枚一枚までもが丁寧に描きこまれており、エンピツの濃淡だけで、見事な立体感と生命感を獲得している。
「あれは、クジラです」
 か細い声で娘が言った。
「輪廻の鯨のクジラか?」
「はい。見たことはありませんけど」
 彼女が描いたものだろう。他の画材の臭いがしないことが、気になった。積み上げられた画布にも絵の具の色が見えるものがない。
「大きなお魚の形の哺乳類だって、聞いたことがあります。大きさが何十メートルもあって、何百年も生きるそうですよ。見たことありますか?」
「いや――」
「私、サヤカって言います」
「俺はミナシキ」
 歳を訊くと十九だと言った。三つ下なだけとは思えない程おどおどした、子供っぽい女だと、ミナシキは思った。
「もう一人......いませんでしたか? 誰かと話してませんでしたか?」
「あれはReRouEだ。俺の所持品に憑依させている。気にしないでくれ」
「リルーイ?」
「実物を見るのは初めてか?」
 それどころか、ぽかんとして、聞いたことすらないと言いたげな顔をしている。その略称からミナシキは説明した。
「永遠(とわ)への退路」
「〈永遠への退路〉......」
「具現結晶霊体だ。人に憑依させない限り持ち主意外に声は聞こえない。輪廻の鯨に滞留する亡者たちの念を、名前を持つ仮想人格に収斂させ、それぞれの生前の経験を集合知と呼べるレベルにまで昇華させた物で、総てのReRouEはインカーネイトによって統括される。ReRouEは他のReRouEと無意識下で集合しているが同時に独立した一つの知性体であることも求められ......」
 サヤカがぽかんと口を開けているので、打ち切ることにした。
「......つまり、人格を持ち、先住者たちの記憶に基づいて人間を補助する下すツールだ」
「よかった。じゃあ一人じゃないんですね」
 サヤカの目が笑った。
「病気の人が、たった一人で大丈夫かなって思ってました」
 それはどうだろう。
 『キセリタ』というのが託されたReRouEの人格の名前だが、彼女には指示を出す以外に能力はない。創られてから日が短い上、あの性格の悪い王女と時を共にしていたこともあって人間味も薄い。ミナシキが動けなくなれば、さっさと動く人間を捕まえてここを出て行くだけだ。
「せっかく居住区まで来られたのですから、一度お医者さんの所に行ったほうがいいんじゃないですか? あまり裕福な場所じゃありませんが、お薬を貰うだけでしたら」
「許されていない」
 サヤカが笑顔を硬直させて首を傾げた。
 遠くで爆発音と歓声が聞こえてきた。
「賑やかだな......今日は祭りか?」
「お祭りって言いますか、今日は第二階層の防人(さきもり)の方たちをお招きして、士気高揚の為の市民訓練が行われているんです」
「行かなくていいのか?」
「義務ではありませんから。それより許されてないって――」
 不味い紅茶をもう一口含んだ時。
 ギギィ――ッ! と、確実に悲鳴だと分かる音が聞こえてきた。ミナシキはティーカップを下ろした。向かいに不愉快そうに顔を顰めたサヤカが座っている。
 機械のチェーンがこすれる音の周波を甲高く増幅させたようなその音は、機械の蟲が放つ悲鳴だ。もちろん相手は痛みも恐怖も感じていないのだが、並の人間の戦意を殺ぐには十分な威力がある。
「本物の蟲を連れこんでいるのか?」
 サヤカがすっ、とぎこちない笑みを引っこめて肩をすくめた。
「手のこんだことだ」
「一応、蟲は身動きとれないように管理されているんですけど......」
「会場に行ってみたか?」
 サヤカはとんでもないとばかりに激しく首を振った。ミナシキが立ち上がった。
「あれが、上の道を通るのを見かけただけです! それですら私」
「その時女を見なかったか。髪の黒い女だ」
「いいえ。人探しですか?」
「まあ、そんな所だ」
 ミナシキは立ち上がり、剣を拾い上げた。
「場所を教えてくれないか。確認したいことがある」
 案内しろ、と言われなくて安心したのか、サヤカは外の鉄網を指差して、まっすぐ行った所だと教えた。
 玄関から出ると通路は暗く、目の前に白い塗り壁がある。隙間と呼ぶがふさわしい通路を挟んで、箱のような貧しい家が立ち並んでいる。鉄網の階段は、走るとけたたましい音が立つ。上りきると、太陽光を模した照明が強くなった。

 家々の外装が豪華になると共に、道幅が広まり、素材も石材に変わった。坂の下に広場が見えた。人の頭が埋め尽くしている。
 目立たないようジャケットで覆った剣を提げ、坂の上から様子を見下ろした。
 広場の奥で、円形に空間が割れている。その中央に磔台があった。それは蟲を縛り付けるために誂えたもので、大きな卵型をしている。
 ミナシキは薄暗い路地に飛びこみ、ホテルの非常階段の柵を乗り越えた。
 階段は途中で折れ曲がりながら四階分、屋上まで続いた。広場側の手摺りから身を乗り出すと、今正にクレーンが新しい磔台を起こすところだった。その隣でまた不快な悲鳴を、死にそびれた蟲が放った。
 掌で鼻を隠した。
 強酸を使ったらしい。噎せるような刺激臭が立ちこめている。
 広場を埋める群集の前列は、支給された物と思しきマスクをつけている。磔台の後ろで、粗末な、見せかけだけの鉄条網に囲まれて溶けたり焼け焦げたりした蟲が積まれていた。
 巨大な鉄の槍斧が、磔の前に持ち出された。
 群集の前列には、まだ小学生ほどの子供たちが集められている。軍服の男が槍斧で、特殊なワイヤーで雁字搦めにされた鮮やかな蜂をつつきながら、急所を説明している。蜂は毒針を抜かれており、黄色と黒の縞模様の尻をしきりに子供らに突き出していた。その大きさだけでも子供たちの身長分ある。やがて子供らが並べられ、槍斧を持たされた。
 えーいっ、と声を上げ、少年が蟲の一番下の足の付け根をついた。
 甲高い蟲の悲鳴をかき消すように、群集が囃したてた。槍が次の子に渡り、重みによろめきながらも、防人の指示した場所に武器を振り上げた。ガッ、と金属音が響いた。二回目。今度はうまく急所に入った。
『ここにレーコはいないようです』
 ジャケットの中からキセリタが言った。同時に蜂の隣の、まだ壊れていない機械の蟲がつられて悲鳴をあげた。
 槍が三番目の子供に渡ろうとしている。
「第二階層の防人とやらは、随分愉快なことを考えるな。ここにいる蟲を破壊しても、そいつらの得た情報は他の蟲に飛ばされるはずだろう」
『彼らは輪廻の鯨の防衛力を過信しすぎている節がありますね。報告が必要でしょう』
 巨大な蜂を前に、三番目の子は後ずさり、腕を伸ばそうとしない。
 怖気づいている少年には、父親がついていた。父親が少年の頭を叩き、罵声が飛んだ。
『戻りましょう。ここに手掛かりはありませんよ』
 涙まじりの掛け声をあげて少年がとうとう槍を突き立てた。だが力が全く入っていない。弾かれてよろめく我が子を父親がぶん殴った。
 その光景にうんざりして、ミナシキは柵に背を向けた。折りしもヤケになった少年が、今度は思いっきり斧を縦に振り下ろしたところだった。狙ったのか、たまたまなのか、それは深く蟲の脚に食いこんだ。一際高い悲鳴と歓声。少年は刺さった槍をそのままにして、群集の隙間を縫って逃げ出してしまった。
 ホテルの壁を民衆の声との衝立にしながら、非常階段をおりた。
 通りに出る前に、足を止めた。
 建物の角に小さな点がついている。虫――『蟲』ではない。少し離れた位置からその姿を凝視した。黒々とした背中の外周は赤茶。長い触角が二本そよいでいる。大きさは五センチ程度。映像資料でだけ、同じものを見たことがある。
「アブラムシじゃないか......」
 呟くと、自分のことを言われたと分かったのか、なんと虫が声を発した。
『わっ!』
 そして猛然と壁を伝い、ミナシキの頭上を這って逃げ出した。
 ミナシキは銃を抜いた。三点バースト付きの機関拳銃だ。
 壁に撃つと素早くかわして、アブラムシが地面に落ちた。
「待て!」
『やめてよ、わぁっ! 怖いヒトだなあ! 別になんにもしてないだろぉ!?』
 少年のような喋りくちだが、声は中年男の声だ。
「待てと言っているだろう!」
 それは路地を曲がり、壁沿いに走っていた。すかさず拳銃を撃つが、いかんせん的が小さい。弾が跳ね、惜しくも標的は壁にあいた穴に入っていった。
 ミナシキはそのまま佇んでいたが、肩で息をついて銃をしまった。
「......キセリタ、今のは何だ?」
「不明です。我々と会話を交わす虫の存在の報告は受けておりません」
 キセリタの返答は簡素だった。
「インカーネイトに問い合わせろ」
「了解」






(「レギニータ」02へ続く)

【事務局注】
この作品は、送信された作品ファイルサイズが非常に大きく、1エントリ分で作品全てを表示することができないため、事務局側の判断で複数エントリに分割していますが、全て合わせて単独の一作品として応募を受け付けた作品です。
このため、先頭エントリ部分のみトラックバック/コメントを受け付けるとともに、先頭以外のエントリではトラックバック/コメントを受け付けないようになっています。
これはエントリーblogのCGIの仕様上の制限に基づく特別措置であり、「レギニータ-XX」を全て合わせて1ファイルの単独作品であるとして、先頭エントリ部分にのみトラックバック/コメント講評を頂戴いただけますようお願いします。

なお、正式タイトルは「レギニータ」で、XX部分の数字はエントリ分割に伴う、事務局による補足的なものです。


08:38, Thursday, Aug 20, 2009 ¦ 固定リンク ¦ 講評(13) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(4) ¦ 携帯


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■講評

大変な長文です。
早読みの私でさえ途中クラクラしました。
が、
十五年くらい前の富士見ファンタジア文庫には、
こんな感じのファンタジー物がたくさんあったなぁ…と何とも懐かしい気もしました。
失礼ですが、何だか色んな物が混ざった感じ。
そして、怪集の趣旨を忘れていらっしゃるなぁ…という気持ちがいたしました。

この話、途中で終わっていますが、
きっと筆者さんの中では最後まで出来上がっているのではないでしょうか?
完結させたら怪集に発表する意味は無いと、
お気づきになったのか、ただ長いので終わらせたのか…。

この話にこの先の枝葉を付ける方はいらっしゃらないと思うんです。
完結しているであろう話に、
わざわざ違う話を付け加える様な方はいらっしゃらないと思うので。
加藤一氏の何ともオソロシイ遊び心と企みを、
完全無視していると思います。
この大会で「競い合え」とおっしゃっていますが、
語られないまでも随所に「そして共に楽しめ」と言うメッセージが
隠れていると思うのですが、完全に自己完結している作品ばかりが送られて来たら、この大会は何ともつまらない物に成り下がるだろうと思うのです。

厳しい事を書きましたが、
「黒衣レイコ」と言う得たいの知れない「妖女」を
感情のある「個」へと引き上げた腕の持ち主なら、
この事を鑑みて更に、高みへと昇華された作品を提示してくださる物と
強く願って講評させて頂きました。

猛者達が「楽しみ」あって互いを高めるのを一行ごとに感じ、
「ああ、やはり!私この方を推していたのよ!」と
読みながら打ち震える。
それが楽しみ方の一つである者も居ります事を、お知りおきください。

文章1 恐怖0 絶望感0

名前: ほおづき ¦ 19:51, Thursday, Aug 20, 2009 ×


恐怖度0
文章を書く根性1
構成力0
読み疲れました-1
非常に超大作すぎて読むの大変ですね・・・。言葉の羅列の渦に巻かれてストーリーの真意がわからなかったです。
結局はミナキシとサヤカのラブストリーだったのでしょうか?ファンタジー小説のようにも見えますがよくわからなかったです。
もう少しわかりやすい文章と言葉で書いてくださるのも読者に対しての愛かなあと思うんですが。これだけの長い文章を書かれる根性はすごいと思います。認めたいのですがいかんせん疲れました。

名前: 妖面美夜 ¦ 21:11, Thursday, Aug 20, 2009 ×


大変に長い長い超大作でした。
読むのが遅いので2時間以上かかってやっと読み切ったところです。
これだけの分量をここまで書ききるとはすごいの一言です。私には到底真似が出来ませんので羨ましい限りです。

さて、講評ですが、怪集最初の超大作という事で中味が良ければ3点4点出すつもりでこの作品を見ました。
かなり手を掛けて頑張られているのですが、総合的には1点より上を出すことは出来ませんでした。
作者の方がとても落胆されるかもしれず、この点数を出すのは辛いのですが、思ったことを以下に書かせていただきます。

読後感としては最速でRPGを攻略しているような印象でした。
人物の出会いと事件が人と人との心の葛藤ではなく、何かが起きたから次へ進む、事件が起きたから次へ進む流れで、正直なところ誰にも感情移入が出来なかったです。
私がこの手の小説を読み慣れてないせいも多分にありますが、長編の場合は人物が生き生きと、心の中に明確な悩みなど、実際に生きている人間と同様に思わせるほどの造形でなければ、この分量で読み切るのは辛いのではと思いました。
人物が平板に見えてしまうもう一つの理由は、セリフに既視感が多々見られ、ここぞとばかりに惹きつけられるような印象深いセリフが出てこないのも起因していると考えます。
また、緊張感を持って書かれているパート03までと比べると、04からがちょっと息切れが目立つように感じました。

こういうタイプの小説に慣れている人にとっては、もしかしたらもっと良い評価であるのかもしれません。
例えファンタジー+SF風であっても、小説のどこかに人間くささを求めてしまう私の好みとこの小説が合わなかったのだと作者の方には受け止めていただければと思います。

アイデア・1

名前: 気まぐれルート66 ¦ 00:17, Friday, Aug 21, 2009 ×


アイデア+1 文章ー1 構成―1 恐怖0
個人的に話が長いのは全く気にしないんですが、それらしい熟語や表現を多用している割には文章自体あまり上手くなく、ちょっと読みずらかったですね。
長いし読みにくいのに不思議と話の進行は早い印象で、えっ、もう終わり? といった感じ。何冊もあるうちのまだ最初の1冊ような。
書くための時間がどれくらいある方なのかわかりませんが、応募期間中盤まででこれくらい書ける訳ですから、いっそのこともっと長くしても良かったと思います。せっかくの長編です、もっとあらゆる面で描写を細かく書き込んでいいのでは?
この壮大な世界には沢山の人々がいる筈ですが、名前がついている登場人物以外のイメージが殆ど湧きません。
主人公にしても、病弱で引きこもりの暗い青年みたいで地味過ぎるイメージ。実世界でとくに特徴もない男が怪異に巻き込まれるというならともかく、こういう世界観ですから、もっと外見も中身も特徴的な、感情移入しやすいキャラクターにした方がいいかも知れません。
序盤でミナキシがエスカレーターに乗って王の間へ行く途中に語られる世界のあらましも、ざっと粗筋を書いてしまうより、話の中でじょじょに解っていくようにうまく持っていって欲しかったですね。
 ちなみに余談ですが、僕はこの作品が怪集の趣旨を忘れているとは思いません。つなぎにくい話ですが、そう言う話に上手くつなげてこそ面白い話が出来ると思いますし、つなごうと思えば、例えば蝸牛だけでつなげたっていい訳です。エスカレーターのチューブでもいいでしょう。
ぶっちゃけ個人的には遺伝的に多少の疑問があっても、面白ければいいと思いますよ。
今のところ厳しい講評が多いようですが、これだけ書く根性がある人ですから、めげずに次の作品を期待したいところです。

名前: 戯作三昧 ¦ 16:59, Sunday, Aug 23, 2009 ×


面白かったです! 分割掲載ということで長さを覚悟して読み始めたのですが、面白くて一気に読みました。遺伝元の調理法が素晴らしいと思います。「おお!こうきたか!」という快感が、とても大きくて楽しかったです。
遺伝元の作品から辿って、サヤカの苦難や成長を想像したり、レーコの存在理由や遺伝元との整合性を私なりに補完してみたり、さまざまな楽しみ方ができました。
ただ、個人的な好みで申し訳ないのですが「ナイフ」「カーテン」等の英単語は違和感なく読みましたが、「ワンピース」「ストッキング」などの単語には引っかかりを覚えました。

*世界観+1 *遺伝元の調理法+1
*絶望感+1 *恐怖−1

名前: げんき ¦ 17:35, Saturday, Sep 12, 2009 ×


長くて疲れました…。
文章力はあると思いますが、個人的な印象としては、全体的に“どこかで聞いたような話”の域を出ていません。
また、各設定やそこからくる名称等がなかなか受け入れ難く、また、話の芯となる部分も解り難いため、話自体にも入り辛く、読み終えても結局何の話だったのか心に残るものがありませんでした。
一見、レギニータとかReRouEとか、蟲とか枝とか、細かく設定があって世界観としてまとまっているようにも見えますが、その割に個々があまり上手く絡み合っておらず、それぞれが孤立しているようでなんだか頼りない感じもしました。
故に、読み進めて行っても先の展開にワクワクしないというか…。
なんていうか、目の前でいきなり大風呂敷を広げて、その中身をこちらで確認する間もなく次々と渡されて、全部渡し終わったらそそくさと撤収されたような気分でした。
もう少し、この世界観に読み手をぐいぐい引き込む力があると良かったかなぁと思います。


名前: PM ¦ 19:46, Tuesday, Sep 15, 2009 ×


・アイディア±0
 設定は全て独創的で優れていると思ったのだが、それらの恐怖への関わりが薄く、プラスには出来ない。
・描写と構成+1
 文章力は高いと思う。ホラーな印象を出そうとしている描写がとても多く、その観点からなら、とても有効で雰囲気が出ていると思う。残虐、暴虐表現は上手い。異常な設定や光景の説明もしっかりしてある。分割01の辺りは、読ませるためのノリが悪い気がする。
 場面の進むテンポも、分割01、02辺りは、進行上出しておかねば的なシーンが多くて、ちぐはぐに感じる部分が多かったが、以後は概ね良いと思う。
 読んでいて飽きる、ということは無かった。
 妹の使い方は大分適当に思えて、「?」となった。いきなり死んでいたり。
・怖さ−1
 怖がらせようとしている部分が無いように思う。描写と構成の所でホラーな雰囲気が出ていると書いたが、切った張ったが日常のライト・伝奇ノベル的世界観だと、読み手の私もそれに対応して身構えるので、恐怖を感じるハードルは跳ね上がる。それだけで怖がったりはしない。話の展開そのものが怖くないと。
・買っても後悔しない魅力−1
 何で、いい話で終わっているのだろうか。最低限、ヒーローかヒロインのどちらかが死んで、ゾンビになってどちらかに襲いかかる、くらいはしてこその恐怖小説なのではないだろうか。
 話自体は面白いと思ったし、これがライト・伝奇ノベルの大会なら、+1にしていたと思う。が、「怖くなるかな、この文章力でどんな怖いことをするのかな」と期待し続けて読み進め、それを裏切られたときの反動と怨念は凄まじい。

名前: わごん ¦ 17:55, Friday, Sep 18, 2009 ×


通して読み終わった現時点でも設定を半分も理解できていません。
しかし、面白かったです。
大作を書くのに必要な文章力とは、こういうものかと痛感しました。
このコンテストではなく、普通の新人賞に出したほうがいいと思います。
大団円がコンテストの趣旨から外れている点、およびその長さ故の批判を避けられない作品だと思い、高得点を付けられませんでした。
ただ感服はしました。ほんとに凄いです。

文章力+2
描写力+1
恐怖-1(ラストで)
コンセプト違い-1



名前: もりもっつあん ¦ 23:38, Friday, Sep 18, 2009 ×


文庫本換算で122頁くらいでしょうか、その分量をこれだけみっしりと書かれたのは凄いと思います。
ただ、どうも一本調子であり、緩急をつけたりとか、説明部分をもっと分かりやすくするための工夫とかが必要なのではないかと思いました。
読者を意識した書き方と言うことでしょうか。
描写に関しては、うまいと思わされる部分が多々あり、文章力は高いと思います。


アイデア   1
文章     1
構成    −1
恐怖度     0


名前: 鶴の子 ¦ 06:30, Saturday, Sep 26, 2009 ×


特に言うことはないです。

名前: あおいさかな ¦ 18:50, Sunday, Sep 27, 2009 ×


昨日、ようやく読了。メモを取りつつ読んでいたのですが、途中で取るのを止めました。
これを書いた方に、果たして読者は見えているでしょうか。
語りたいことを余すところ無く語りつくして、ただそれだけの作品に思えてなりません。
言葉少なでも読む者を惹き付けて止まない作品もあります。
こういった大会では、後者に分が有るのは仕方ない事と思います。

これだけの時間をかけて読了したにも関わらず、満足感が得られないのは残念でした。

発想・0 構成・0 文章・-1 恐怖・0

名前: 三面怪人 ¦ 23:08, Monday, Sep 28, 2009 ×


まず、これだけの分量を書き上げ、まとめた筆力は凄いと思います。
遺伝元からこれだけの独自の世界観を作り上げた発想力も目を見張るものがある。
また、世界樹やReRouEの設定もかなりキッチリしていて良い。
しかし、文章ではシーン転換部分での描写が過剰なため、話の流れを見失うことが多々ありました。
結末も壮大な物語の途中で終わっている感じでモヤモヤ感が残った。
全体的に、SFやホラーというよりはファンタジーの印象が強かったです。

名前: 水本しげろ ¦ 22:32, Tuesday, Sep 29, 2009 ×


 がんばって書かれているのはわかる。すごい。
 これだけの世界観を構築するのは。

 でも、厳しい言い方なんだけど、世界ってのはあくまで物語の舞台装置に過ぎない。
 俳優さんが出る前にひたすら舞台装置を見せられても眠たくなってしまう。
 物語の中心は人物なんだから、人物を引きたてるのが大事で、人物を引き立てないものは適当に切り捨てる方が結果としては良くなると思います。
 もちろん、書き手のこだわりがあるでしょうから、それはそれで尊重しますけどね。
 その方が読み手は楽って話で。

【アイデア】+1、【描写力】+1、【構成力】0、【恐怖度】0

名前: ユージーン ¦ 00:58, Wednesday, Sep 30, 2009 ×


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