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永遠にともに
「適当なところに座って。ビールとワインがあるけどどっちがいい?」
 彼に言われるまま、私は壁にもたれるように座り、室内を眺める。
 ワンルームには小さなテーブルと液晶テレビ、スリムな書棚があるだけで、とても綺麗に片付いていた。
 参った。私の部屋とは大違いだ。
 玄関には脱ぎ散らかしてペアが崩れまくった靴が転がり、そこからベッドへ向かってセンターラインのように衣類が転々と放置されている部屋を見せたら、彼は絶対に逃げ出すだろう。
 やばい。いずれはあの部屋に彼を呼ぶことになるかも知れない。
「それじゃビールをお願い。それにしても素敵な部屋ね」
「そうかな。気に入ってくれて嬉しいよ」
 彼はにっこりと微笑み、私にビールを差し出した。
 ナチュラルに良い男だよなぁ。

 彼――須藤巧は会社の後輩だ。
 雑誌モデルのような甘い顔とその素直さは、既婚者を含めた女子社員全員の心をたった一日で捕らえた。
 好きなカードを選ぶ権利があった彼が、どういう訳か私を選んだ時は、何かの罰ゲームじゃないかと思った。
 私は自分で言うのも変だが、普通だ。
 美人でもなければブサイクでもない。
 存在が忘れられるほど地味でもなく、噂が立つほど派手でもない。
 ドラマで言えば「社員A」くらいの、何処にでもいるごくごく普通の女だ。
 そりゃ、部屋はちょっと汚いけど、業者を呼ばなければ片付かないほどの汚部屋でもないし、同期の子達も似たり寄ったりの一人暮らしをしてる。
 先輩としていろいろ教えたり手伝ったり、時にはフォローもしたけど、それだって当たり前のこと。
 その優しさが好きだと彼は言った。
 嬉しかった。
 嬉しかったけど、やっぱり不安だ。

「それじゃ乾杯しよう」
 二つ年下なのにタメ口。でもそれが気にならないどころか、嬉しいくらい。
「何に乾杯するの?」
「んー、どうしよう……それじゃ、ふたりの夜に」
「クサいなー。でも、まあ、いっか……ふたりの夜に」
 ジョッキをこつんと合わせ、ビールを口にする。
 その時、彼の手が私の肩を引き寄せた。
 私がそっと目を閉じると、唇にそっとぬくもりが重なる。
 そして唇を開き、舌で互いの存在を確認し合う。
 その舌先に一瞬、さらっとした細い物が触れた。
 ……髪の毛?
 思わず唇を離す。
「どうしたの?」
 彼が不思議そうな表情で私の顔を見る。
 その距離の近さに改めて気づき、頬が火照った。
「た、巧君、舌に髪の毛が付いてない? 今、髪の毛の感触が」
「ああ、違うよ」
 彼が微笑む。
「君のこと、気に入ったみたい」
 改めて言われると、ちょっと恥ずかしい。
 ――あれ? 今の言い方、ちょっと変だ。
「……みたい、って?」
「うん。今までの子たちはみんなダメだったんだよ。でも、君のことは気に入ってくれたみたいだ」
 何かおかしい。
「僕ら、これからもきっと、うまくやっていけるよ。彼女たちも祝福してくれているみたい」
「彼女たち、って?」
 答える代わりに、彼が口を大きく開いた。
 その舌の上に、大量のゴキブリが乗っていた。
 ――さっき触れたのは、触角――!?
 その瞬間、部屋の明かりが消えた。

 ――違う。
 彼女たちが、部屋を埋め尽くしたんだ。
「君の方からも、応援に来てくれたみたいだよ」
 ってことは、この半分くらいはうちにいた――。
「幸せになろうね」
 闇のどこかで、彼の声がした。



10:16, Sunday, Aug 30, 2009 ¦ 固定リンク ¦ 講評(15) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(4) ¦ 携帯


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» 【0】永遠にともに [せんべい猫のユグドラシルから] ×
 読みやすくて展開もテンポが良いです。 ただ、あっさりしすぎている感じがします。 オチは遺伝元の「最期のくちづけ」のバリエーショ�... ... 続きを読む

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» 【0】永遠にともに [もけもけ もののけから] ×
読みやすい話です。でも、オチが弱かった。想定の範囲内でした。残念。ちなみに…タイトルは、コブクロから?(・ω・ )【アイデア縲... ... 続きを読む

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» 【0】永遠にともに [日々、追憶…から] ×
読みやすい作品だったと思います。長さ的にも好みです。他の子達も、似たり寄ったりの生活環境(汚い部屋)ならば、主人公の女の人が何謨... ... 続きを読む

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» 【0】永遠とともに [峠の塩入玄米茶屋/2009から] ×
うぅ〜ん。あっさり終わってしまった感が強い。口の中のゴキブリは、口の大きさを考えると「大量」ではない方がしっくり来るかも。因果元をそのまま捻る事なく使っているため、どうしても印象が薄くなってしまう。結末も予想の範囲を越えるものではなかったため、ちょっと ... 続きを読む

受信: 20:32, Thursday, Sep 24, 2009

■講評

こういう感じの文章はいいですね。
今までに出てきていないタイプの爽やかさがあって新鮮でした。
汚宅住まいの設定が今後の伏線になってますが、ラブシーンに辿り着く迄に時間を取られたせいで結末の

「君の方からも、応援に来てくれたみたいだよ」
 ってことは、この半分くらいはうちにいた――。

何が自分の周りに起きているのか理解が良すぎる主人公も少し考えもので、またここに来るまでの間で、汚宅住まいの伏線が薄まってきたかなと感じました。
最初の伏線が十分に機能していないのは他の原因もあり、須藤巧が汚宅住まいでもないのに彼が何故大量のゴキブリと生活しているのか、そっち側の伏線が全く設定されてない点が若干説得力に欠けるように思います。

多分作者の方の構想では、境遇は違うが接点を共有する者同士が結ばれた、こういう流れで行きたかったのかなとも思ったりします。
そのへんの手薄さが勿体なかったかなと感じました。
「舌の上に、大量のゴキブリが乗っていた」も舌の面積から考えると大量のゴキブリでは難しいでしょうから、再考の余地があるでしょう。
会話の違和感から結末を導き出す方法は面白いと思いました。

生々しい話になりますが、キスの行為の時にこれだけ憧れの後輩が相手であれば、身体的な感動や感覚が描写されないと、あっさりしすぎかなと思いました。口を離した後で「距離の近さに改めて気づき、頬が火照った」があるにはありますが、マンガのコマを見ているようで、小説ならではの身体感覚の描写がばっさり抜け落ちているように感じました。
これは「永遠にともに」だけの問題ではなく、投稿作品の多くには外側からしか書かれていない作品が散見され、主人公その他の人物含めて作中の世界をリアルに体感していないように思います。

島田雅彦氏は著書「小説作法ABC」の中で「自分の恥になることを書け」と記されていますが、結局、作品に命を吹き込むのは、作者の方が日々の断片からどれだけ恥部を掬い取って作中に見せられるかにかかっている、と私は解釈しています。しかしながら単に恥や妄想を書けば良い作品になるのではなく、その好例が文庫版怪集「小春小町」と言っても良いでしょう。

講評については正直思うことが多すぎて、毎回毎回が試行錯誤の結果ですので、私の講評が多くの講評の内容・点数と一致するかどうかも分かりません。
ただ、評点は低くなったとしても、思うところを素直に述べたいと思っています。
長い講評を好まない方もおられるでしょうが、一読者として出来たての投稿作品を毎回読ませていただいている以上は、出来る限り言葉を尽くす講評をもって、次回作への期待を込めた作者の方へのメッセージとさせていただく次第です。

名前: 気まぐれルート66 ¦ 02:02, Monday, Aug 31, 2009 ×


 雰囲気はあると思いますね。
 前半の運びはすごく良かったと思います。

 ただ、やっぱりゴキブリがいた、だけではちょっと怪異として弱いかな。

【アイデア】0、【描写力】+1、【構成力】0、【雰囲気度】+1

名前: ユージーン ¦ 21:06, Thursday, Sep 03, 2009 ×


恐怖度0
文章力0
構成力0
アイデア1
ちょっと展開がよめてしまいました。寄生虫かと思いきや、ゴキブリだったんですね。何か事件が起こる前に出会いの部分で終わった感がしたので、もう少し続きを書いて欲しかったかなあ。
あとゴキブリの描写をおぞましく書くべきだったかなあ。

名前: 妖面美夜 ¦ 16:16, Friday, Sep 04, 2009 ×


「ああ嫌だ」とリアルに声が出ました。
文章が流れるようで、とても自然に物語に入り込めたのですがそれが激しい嫌悪感と直結して、大変な読後感を味わっています。

舌の上の大量のゴキブリは、子ゴキを反射的に想像してしまいました。

*文章+1 *恐怖+1

名前: げんき ¦ 23:52, Monday, Sep 14, 2009 ×


須藤君の口の中、舌先に触れる位置にゴキブリが大量にいるのに、なんで普通にしゃべれるんですかね? というのが気になって…。
まあ話としては…嫌悪感はあるけど普通かなぁ…という印象でした。


名前: PM ¦ 20:17, Tuesday, Sep 15, 2009 ×


多いですね、キスの話。
食虫よりソフトだからかな。
前半部のさらりとした日常描写の書き方のまま、怪異を描いてしまったように感じました。
部屋を埋めるゴキブリの気持ち悪さ、須藤の異常さを、もう少し煽って欲しかったです。

アイデア-1
遺伝元とのリンク+1
描写(日常)+1
描写(怪異)-1

名前: もりもっつあん ¦ 02:22, Wednesday, Sep 16, 2009 ×


う〜ん、気持ち悪いだけじゃ弱いなぁ。オチに対して長さもここまでは必要ないです。

名前: あおいさかな ¦ 22:08, Friday, Sep 18, 2009 ×


・アイディア+1
 ディープキスをして、舌先に相手の口腔にいたゴキブリの触覚が触れる。その一点のみにおいて。
・描写と構成±0
 読みやすくて良い文章だと思った。しかし、「――さっき触れたのは、触角――!?」以後、あっさり終わってしまったのが物足りなくもあった(構成、締めるのが早すぎる)。
 細かいこと。舌の上は「大量のゴキブリが乗って」いられるほど広くはないと思う。積み重なっていたとしても。描写を変えるか、何かフォローがあるといいと思う。
・怖さ±0
 嫌な話だが、怖くはない。ゴキブリの大群を出すよりも、須藤巧が口の中にゴキブリを存在させていることに焦点を絞った方が面白くなったかと思う。
・買っても後悔しない魅力±0 インパクトは感じたが、プラスにするほどでも無かった。キスにはとんと縁がないので、具体的に実感できないのかも知れない。

名前: わごん ¦ 02:07, Saturday, Sep 19, 2009 ×


嫌悪感は感じとれますが、何処と言って特徴のない文章が影響したせいか、アッサリした作品になりました。オチも想定内です。

発想・0 構成・0 文章・0 恐怖・0

名前: 三面怪人 ¦ 16:18, Friday, Sep 25, 2009 ×


恐怖 2
雰囲気 2
(疑問点 1)
ラストに現れるゴキブリの大群が、気持ち悪さを感じさせる一方で、2人の門出を双方の家に住んでいたゴキブリたちが祝福しに来てくれたようで、妖精譚にも似た可愛らしさも感じます。ただ、「大量のゴキブリ」が下の上に乗っていたら、すぐ判りそうだし喋りづらいのではないか、という疑問点もありましたので、その点の分をマイナスさせて頂きました。

名前: 白長須鯨 ¦ 17:23, Friday, Sep 25, 2009 ×


発想ー1 文章0 構成0 恐怖0
うーん。舌の上に大量にのっていたのに触れたのが触角だけ、というのは腑に落ちないですね。やっぱり。
彼氏の身体の中にぎっしり詰まっていたとしても、部屋を半分埋めるほどの量というのは無理があります。
そんなことはいちいち突っ込まなくてもいいんですが、作品に対して特に感じるものがないので、ついアラ探ししてしまうんですね。

名前: 戯作三昧 ¦ 07:26, Saturday, Sep 26, 2009 ×


髪の毛と触覚を間違えたというのだから、そこから誘導されて舌の上のゴキブリのサイズを読者はイメージすると思うのですが、そうするとけっこう大ぶりの奴を思い浮かべるのではないかと。で、「大量に」というところでつっかえました。
チマチマしたことなんですが、重要なシーンなのでもったいなかったです。

アイデア   1
文章     0
構成    −1
恐怖度     0

名前: 鶴の子 ¦ 03:44, Sunday, Sep 27, 2009 ×


オチとしては想定内でした。普通にゴキブリがたくさんいるだけでは恐怖感が薄い気がします。
文書としては読みやすくよかったと思います。

恐怖感 -1
文書構成 +1
アイデア -1

名前: ktbk ¦ 16:24, Sunday, Sep 27, 2009 ×


う〜ん。前振りだけで終わってしまった感じです。ここから惨劇なり、事件なり、異常な世界観なりに発展して欲しかった。大量のゴキは気持ち悪いけど、それだけでは恐怖までは行かないです。

名前: 水本しげろ ¦ 21:17, Wednesday, Sep 30, 2009 ×


結構この「幸せになろうね」の響きは好きかもしれません。
ただ、このお話単体だと、彼はゴキの何なの?という部分に遺伝元を遡る必要を感じ熟成仕切れていない印象を持ちました。
筆運びもお上手ですし、もっと欲しい部分が。

名前: 籠 三蔵 ¦ 21:08, Thursday, Oct 01, 2009 ×


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