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バッテリーテスト
「ねえねえ、おとうさん、これどこにでんちがはいってるの?」

5歳になる息子を、「世界の昆虫展」に連れてきた。
ケースの中を闊歩するカブトムシを指差しての、息子の第一声。
私はにこやかに答える。
「いいかい、カブトムシに電池を入れる所はないんだ」
「じゃあ、どうしてうごいてるの?」
「それは電池を食べているからだよ。一日に何十本もね。
 だからこんなに強い力が出せるってワケだ。
 人間だってそうさ。電池を食べればすぐ、強くなれる」
「でんちって、おいしいの?」
「美味しくなんかないさ。でもオトナは我慢して食べる。
 オトナのほうが子どもより力が強いのは、毎日こっそり電池を食べてるからさ」
「へえー、そーだったんだー!」


翌日、日曜出勤。
朝早く息子のために、食卓にトーストと単三電池十パックを並べる。
「おたんじょうびおめでとう。おいわいにきょうは、でんちをたべてもいいよ。
とくべつです。かまないで、いっぽんずつ、のみこんでください」
置手紙を残し、私は出勤した。


三ヶ月前に出て行った妻は愚鈍な女だった。
素性も知れない女だが子どもができたので結婚してやった。
なのに、妙な噂を簡単に信じ、結果、男と駆け落ちしやがった。
残された息子は、輪をかけて愚鈍だった。
うるさい。うっとうしい。イライラする。外に出すのも恥ずかしい。飯を出しても食べない。出さないと泣く。いじけた目でこちらを見る。同じミスを何回もする。寂しいと泣く。本当に邪魔だ。
だから入院するか死んでくれればいいと思った。一人でそっと自分から。


帰宅は深夜になった。鍵を回してもいつものように駆け寄ってくる足音はない。
真っ暗な室内。そっとドアを開け、電気を付ける。


居間が、キッチンが、瓦礫の山と化していた。
まるで爆撃されたかのような惨状の中、テーブルだけが無傷。
そして息子が、天板の上に、ちんまりと正座していた。
「おかえり」
ひどく潰れた声だった。パジャマの下腹部が異様に膨らんでいる。
「おとうさんのいうとおりだった、ぼく、つよくなれたみたい」
息子が重たそうに立ち上がり、飛び降りると床が軋んだ。
がらがら音を立てるのは、きっと体内に詰め込まれた電池。
「おもちゃのでんちも、りもこんのでんちも、ぜんぶたべたんだよ。
 ぼくもっとでんちたべたい。
 かぶとむしみたいにもっともっとつよくなりたいよおとうさん」


破壊された窓枠から夜風が吹きこみ粉塵を巻き上げる。
煙幕の中、息子の周囲には青い稲光が迸っていた。
半分ほどの身長しかない生き物を前に、足がすくんで動けない。
こんな化け物と、5年も暮らしていたのか。
いや、それなら妻も人間ではなかったのか。
一番の愚か者は、私だったのか。


「おとうさん、おとなでしょ。
 おなかのなかのでんちちょうだい」
がしゃん、がしゃん。
笑顔の息子が駆け寄ってくる。



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ストレートですね、でも嫌いじゃないです。それが恐怖に伝わるかというと難しいのですが…。読みやすくあったのですが、結局息子さんや螂... ... 続きを読む

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発想は面白い。展開もブラックでストレート。でも息子を殺すのにも色々方法はあるのに、何故電池なのか。どうしても電池なければならなら理由が見つからない。息子が異形のモノだったという展開自体は面白いし、正体を明らかにする必要もないと思うので、後は殺そうとする ... 続きを読む

受信: 21:39, Thursday, Sep 24, 2009

■講評

恐怖度0
文章力0
構成力0
アイデア0
ええ!?結局息子さんって何者だったのですか?
電池を食べるアイデアは面白いですが、それが恐怖に発展しなかったのが残念。

名前: 妖面美夜 ¦ 22:17, Saturday, Sep 05, 2009 ×


えー、人間ではなかったって、結局なんだったんですか?
裏付けが弱いなぁという感じです。
どこか見落としたのかな…?

名前: PM ¦ 19:29, Wednesday, Sep 16, 2009 ×


着眼点は意外性があってよかったと思うのですが、全体的に記述されていない部分が多すぎます。
どうして主人公は、子供が電池を飲んで死ぬと確信しているのか。
なぜ、この方法を思いついたのか。
嫁および息子の正体は結局なんなのか。
これらのツッコミに対する回答がないため、ただ変な話に感じました。

アイデア+1
描写-1

名前: もりもっつあん ¦ 22:24, Wednesday, Sep 16, 2009 ×


すみません、好きになれるところがなかったです……。
こういう父親は、死んでもどうでもいいと思うし。
あ、でも走る音が「がしゃんがしゃん」なのは面白いと思います。

名前: あおいさかな ¦ 22:16, Friday, Sep 18, 2009 ×


・アイディア±0
 カブトムシの使い方が弱い。虫がテーマ、という大前提から外れているように思う(−1)。でんちでパワーアップする息子の設定はシュールで独創的に思った(+1)。
・描写と構成±0
 可もなく不可もなく。ややマイナス寄り。「妙な噂」「〜妻も人間ではなかったのか。」の辺り、説明も匂わせも無いのが悪印象なのだが、遺伝のことを考えたのかと思い、点は引かなかった。
・怖さ±0
 可もなく不可もなく。
・買っても後悔しない魅力−1
 虫がテーマの傑作選を買って、虫との関わりの薄い話が載っていたら、損をした気分になると思うので。この気持ちを覆すほど面白いとは思わなかった。

名前: わごん ¦ 23:54, Sunday, Sep 20, 2009 ×


シュールでブラック。
結構好き。
でも虫が弱くて怖くないのがネックかもと思ったり。
アイデアもよかったのですが、もう少し主人公が恐怖にやられる描写が欲しかったですね。

名前: メタ郎 ¦ 02:54, Monday, Sep 21, 2009 ×


瓦礫の山と化した室内に、ただ一つだけ無傷のテーブル。その天板の上にちんまりと正座して父を待つ息子。この表現がすごく素敵です。絵になりますね。
このラストだと多分父親は息子に殺されるんでしょうが、読んでいて正直「ザマァ」と思いました。しかし息子は純粋に父親を愛しているようだし、その後のことを考えると暗澹たる気分になりますね。

*絶望感+1

名前: げんき ¦ 22:05, Tuesday, Sep 22, 2009 ×


発想+1 文章0 構成0 息子+1
息子、ロボットみたいで超かっこいい。
お父さんの電池を欲しがる結末はちょっと安易な気がするので、もう少し話を広げてみたほうがよかったかも知れません。
正体がわからないのは気にならないです。

名前: 戯作三昧 ¦ 06:14, Thursday, Sep 24, 2009 ×


恐怖 1
不思議さ 1
父親と、「生物は電池で動いてはいない」と知らない子供の他愛も無い会話が、こんな方向に発展するとは思いませんでした。息子は一体何だったのか、気になるところです。

名前: 白長須鯨 ¦ 17:33, Thursday, Sep 24, 2009 ×


 おもしろいねえ。理不尽で。
 こういう理不尽さってなかなか出ないよね。
 どうしても理屈で人間は考えちゃうから。

 短い中にしっかりと主人公の考えている常識世界の崩壊という転換と、怪物が身近にいた驚きが描き込まれている。

 唯一、注文をつけたいのはタイトルでしょうかね。
 もっといいタイトルを考えられたはず。
 まあ、些細な問題ですがね。


【アイデア】+1、【描写力】+1、【構成力】+1、【恐怖度】+1

名前: ユージーン ¦ 21:48, Thursday, Sep 24, 2009 ×


入院したら余計に面倒では?電池飲んだぐらいで死ぬのか?
そういう疑問が立ってしまい、すんなりと読み下せませんでした。
シュールな話は好きですが、無理矢理な設定=シュールではないと思います。
キャラが先にあって、話をそれに合わせた感が強いです。

発想・0 構成・0 文章・0 恐怖・0

名前: 三面怪人 ¦ 21:38, Friday, Sep 25, 2009 ×


息子が死んでしまっていて、バチバチ電気火花を放つ電撃系の幽霊になっているとか、それなりのモンスターの枠に入っているのが分かれば何とか腑に落ちるのですが、これだと正体不明のままですね。
意外性はあると思いましたが。

アイデア   1
文章     0
構成    −1
恐怖度     0


名前: 鶴の子 ¦ 09:18, Sunday, Sep 27, 2009 ×


子供の時分はそうでもないんですが、いい大人になるとこういう発想はなかなか出ないですよね。
というか、この話の冒頭には今日的な社会批判が含まれているのかなと、この度読み返してみて気がつきました。
そのように読むと明るそうな親子の会話にも、不穏な空気を感じることができるように思います。

この主人公も最初は真面目そうな口ぶりながら、子供に電池を飲ませてどうにかなるとか、愚鈍に相応しい思考と行動の持ち主ですね。
子供もそうなら親もそうであるかもしれない、愚鈍の循環がキレ良く決まった話だと思います。

アイデア・1、構成力・1

名前: 気まぐれルート66 ¦ 16:01, Tuesday, Sep 29, 2009 ×


 追記:
 電池を喰って強くなるなんてことはありえないんだよね。
 でも、そのあり得ないって事を考え出したのが素晴らしい。
 人間はどうしても無意識のうちに理屈の通った事を考えてしまうからね。

 そしてこのお話の素晴らしい所は、その現実から浮かび上がったありえない地点に向かって、現実っていう出発点から正確にジャンプ台が築かれている所。
 お話全体がその目標に向かって全てが的確に配置されていて無駄な所がなく、コンパクトにまとめられている。
 その完成度の点でその他の作品から頭ひとつ抜けていると思います。
 すごく良かったです。

名前: ユージーン ¦ 02:17, Wednesday, Sep 30, 2009 ×


これ、ホラーですね。
なかなか素敵なホラーかも知れません。私的に細かな部分とタイトルがいまひとつ?(父親がバラされてしまう暗示?)なので満点は付けられませんが、乾電池を腹いっぱいにしたアレな子供が迫ってくる様子がともかく秀逸に感じました。
リアルです。楽しまさせて頂きました。

名前: 籠 三蔵 ¦ 20:26, Thursday, Oct 01, 2009 ×


追記2:
 主人公は奥さんが逃げてしまったという些細な理由で子供を殺そうという狂気にとらわれる。
 もちろん、奥さんが逃げてしまうってのはまったく些細ではないんだけど、子供を自らの手で殺害するという重大な結果の前では些細と言えるでしょう。

 その上で電池を食べさせて殺そうとする狂気。
 もちろん、電池を食べて死ぬ訳がない。
 それを主人公自身もわかっている。
 できもしないとわかっているのにやってしまう愚かさ。
 その刹那的に馬鹿げた行為にすがる人間の弱さ。

 そうしたエスカレートして行く狂気と人間の愚かさ、弱さが、とんでもない化け物を産みだしてしまう。
 そうした一連の流れが私には心地よかったんだな。
 うん。自分が感じた事を上手く説明するのは実に難しい(笑)。

 もしかすると、最後の「がしゃん、がしゃん。 」がちょっと弱かったかもしれません。
 ここをもっと不気味な感じのする表現にできたらなお良かったかもしれない。
 ん〜〜ん、どういう書き方が正解か? と私に質問されてもこたえられないんだけど。
 ^^;;;

名前: ユージーン ¦ 18:18, Friday, Oct 02, 2009 ×


[追記]
 ユージーンさんの講評を見ていたら、独特の良さというか、もの悲しさが理解できて来ました。これは初読時より好きになれそうです。
 今更遅いですが……作者さんは心の中で+1くらいしておいてください^^;

名前: あおいさかな ¦ 04:24, Saturday, Oct 03, 2009 ×


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