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桂木茜の部屋の前で奇妙な音がするようになったのは1週間ほど前からだった。 小さな虫が廊下の明かりのせいで迷いこみ、方向感覚を失って何度もドアにぶつかっているのか、コツ、コツ、という小さな音が断続的に聞こえていた。 最初は気にもとめていなかったが、毎晩のように聞こえることに茜が気づいて耳をすますようになると、次第に音は大胆になり、奇妙なリズムを刻むようになった。 1つの音が2つになり、3つになり、ドアの表面をざらざらした物が撫でるような音や廊下で何かを引きずるような音が混ざりはじめる。
バカな虫もいる物だと笑っていたが、次第に音が騒がしくなるにつれて笑っていられなくなってくる。 ドアスコープからおそるおそる外を覗いても何もいない。誰もいない。 とうとう勇気を振り絞ってドアを開けてみたが廊下は静まり返っていた。誰かがいたら脅かすつもりで持っていた催涙スプレーを使うべき相手はどこにも見当たらなかった。 鉄製のドアの上で無数のパチンコ玉を転がすような奇妙なノイズが響くようになり、ラジオやテレビで打ち消そうとすると、時々、どん! と何かが体当たりするような、あるいはドアを蹴り付けたかのような大きな音がするようになる。
そこで思い立った茜は日中、仕事先から廊下で妙な音がすると管理人に通報してみる事にした。もし同じ階の人が聞いていれば同様の苦情が管理人の所に行っているだろう。そう思ったのだ。 だが管理人はあっさりと否定した。そのような苦情はないという。 あれだけ大きく不気味な音がしているのに両隣の住人に聞こえていないなんてことはありえない。 つまり、その音は茜にしか聞こえない尋常でない音という事になる。
その夜もドアに砂をこぼすようなさらさらという音がして、ドラムスティックがコンクリートの廊下でパチパチと不気味なリズムを刻み、大きな何か丸い物をゆっくりと転がしているような音がしていた。 耳を両手でふさいで部屋の隅で震えていると携帯電話がイルミネーションを点滅させながら場違いともいえる軽快な音楽を鳴らしはじめる。 震える手で電話を取ると聞きなれた声が聞こえてくる。 「竹本だけど。ドアを開けてよ」 「嫌! 帰って!」
茜はとっさに答えていた。声は竹本のものだ。だがもしそうなら竹本はあの騒音の真っ只中に立っている事になる。声は本当に竹本のものなのか? 「呼んだのは茜ちゃんでしょ。せっかく来たのにそれは無いんじゃないの?」 電話の向うから聞こえる竹本の声に、不気味な息づかいや獣のうなり声のような物が混ざる。 そいつは一緒にいるのだ。竹本のすぐ隣に。
「いいから今夜は帰って! お願い!」 電話を切った。 音はまだ続いている。 ドアを叩く音と竹本の声。 「開けてくれてもいいじゃないか。茜ちゃんの顔を見たら帰るからさ。茜ちゃん変だよ。最近、大学にも顔を出してないって言うし。心配なんだよ」 「いいから帰って!!」
桂木茜の住む賃貸ワンルームにその男がやってきたのはそれからさらに3日後の夜の事だった。ダークスーツに黒の靴。多少、顔が青白いのを除けば目立つ特徴も無いどこにでもいそうな男だった。目をつぶって3分もしたら顔を思い出せなくなりそうなそんな男だ。 最上階に当たる5階までエレベータであがってから、各階を見て回る。 1階まで降りてきた所で騒ぎに気づいた。 103号室のドアが激しく叩かれている 「茜ちゃんどうしたんだよ! いい加減にここを開けてくれよ!」 「茜。どうしたのよ。何かあったならお母さんに話してちょうだい。困った事でもあったの?」 ジーンズにTシャツの若い男と大きな襟の付いたちょっと派手な白いブラウスに黒いパンツの中年の女が必死に中に呼びかけていた。
「何かあったのかい?」 ダークスーツの男が声をかけると若い男が振り返った。 「あんたは?」 「最近、入居者に不幸が続いてね。大家に様子を見てくるよう頼まれてるんだよ」 「大家って言ってもここの大家は……」 「それより何があったのか話してくれないか?」
若い男は竹本と名乗った。彼の話では住人の桂木茜はかれこれ1週間も部屋から出てこず、電話をしても要領を得ない返事しかしないという。それで心配になって茜の母親と一緒にたずねてきたとの事だった。 「大丈夫。水さえあれば2、3週間は人間は死なない」 「そんな無責任な!」 無表情にそう答える相手に竹本が逆上するが、それでもダークスーツの男は気にかける様子はない。 「返事が無い訳じゃないんだろ?」 「そりゃそうですけど……」
ダークスーツの男はポケットから鍵を取りだすと鍵穴に差し込んだ。 「失礼だがドアを開けさせてもらう。大家からの緊急の要請なんでね」 部屋の中に声をかけてから鍵を回す。大家から預かってきたマスター・キーは何の問題もなくキー・シリンダーを回転させた。 その音はそれまでのどんな音よりも茜を震え上がらせ、絶叫させた。 「開けないで!!」 意に解さずドアを開けようとしたが、やはりドアは開かなかった。 「どうなってるんですか! おかしいじゃないですか! 鍵は開いてるんでしょ!」 竹本に問われても答えようがない。ダークスーツの男を強引に押しのけてドアノブを力づくで引っ張るがやはりドアは開かなかった。
ダークスーツの男は少し考えてから、ジャケットの内ポケットからカッターナイフを取り出してドアの隙間に差し込み、刃を上からゆっくりと降ろして行く。それからドアノブを確かめると、今度はあっけなく開いた。 ダークスーツの男に続いて竹本と茜の母親が部屋に入ろうとすると目の前で再びドアが閉まった。 ドアの内側に茜がぴったりと張り付いて血走った目でダークスーツの男を見つめている。 茜は再びドアをロックすると部屋の反対側まで走り、窓の下に座って両ひざを抱きかかえた。 ドアの内側には紙で封印がしてあった。奇妙な文字や図形が書き込まれている。
「あんたがやったのかい?」 ダークスーツの男が封印の方を顎で差す。 茜がうなづいた。 「インターネットで調べて」 そう言う口元には薄気味悪い笑いが浮かび、目がすわっている。笑いと不気味な目の間に黒い影が隈となって居座っていた。
すぐにまた奇妙な音がはじまった。 ドアを叩く竹本の声をかき消す勢いでドアをツメで引っかくような鋭い金属音や、人間なのか動物なのか区別できないような奇声が上がる。かと思うと、どっと笑い声が上がる。まるでドアの外が劇場か何かのように。 ダークスーツの男は懐からタバコを一本取りだして火をつける。ドアの向うの音に耳をすましているようにも、ぼんやりと何かを考えている様に見える。だが音に動揺した様子はなかった。表情のとぼしい顔からは何を考えているのか茜には想像がつかなかった。 「あんた、ここで何をやった?」 ダークスーツの男の問いに茜は答えなかった。
ダークスーツの男がタバコを足元に落として丁寧に踏み消す。 それから鍵を外してドアを開けた。 ドアの外には竹本の姿はなく、茜の母親もいなかった。 かわりに目があった。 幅が30センチはあろうかという大きさで、その下に鼻と口までそろってる。ドアよりも巨大な顔がじっと茜を見つめていた。カチカチと歯を鳴らしながら。 それを見て茜が絶望したように頭を両手で抱えた。 ダークスーツの男がそっとドアを閉じる。
「知らないわよ! 私のせいじゃない! あの変な教官が嫌らしい事ばっかり言うからちょっとこらしめてやるつもりだったのよ。写真に針を刺しただけなのに死んじゃうなんて思うわけないじゃん! そんなのありえないよ!」 「本当にそれだけかい?」 「それ以上、何ができるっていうのよ!!」 逆ギレした茜が問い返す。 「今の顔はその教官?」 「知らない! 知らない奴! っていうか何よあれ! あんなのはじめて見た! 今までは音だけだったのに! 何てことしてくれるのよ!」 「音の主が入ってこないようにしようとしのか」 茜が小さくうなずいた。
「異常が起きてるのはここだけじゃない。203でも303でも403、503でも起きてる。何が起きてるのかはわからないが失踪したり自殺したり事故で死んだりいろいろだ。みんなこの部屋の真上だ。あんたがまだ生きてて助かったよ。でなきゃ全部の部屋で家捜しする所だった」 男があがり込み、部屋の中央に立つ。 「問題は、だ」 そう言って周囲を見渡した。 「この部屋にだけはあいつらが入ってこれないって事だ。だからあんたはまだ生きてる」
ダークスーツの男がドアを開ける時に使ったカッターナイフを再び取りだして、今度はじゅうたんを切り裂き始めた。家具の置いてある場所を避けながらできるだけ部屋の外周に近い所を切って行く。 一周してから、部屋の中央にあったガラスのテーブルやその他の雑多な物を次々とベッドの上に放り投げ、邪魔な荷物が無くなった所でじゅうたんを引き剥がす。 姿をあらわした床材にはぴったりとくっついた2つの長方形が描かれていた。長方形の内側に付いている取っ手を引き上げると、床板が跳ね上がった。 「なによ。これ」 「前の住人が勝手に床下収納を作っちまったらしい」 「そうじゃなくて穴が開いてる」
茜の言う通り、床下にはさらに丸い穴が開いていた。誰かが掘ったというよりも空間にぽっこりと空洞が生じていて、どこまで続いているのか見当もつかないほど深い。ダークスーツの男が先程、火をつけたばかりのタバコを落とすと、赤い炎が闇の中をどこまでも落ちて行った。 まるで穴の底がどこかに通じているかのようにごうっと風のうなりがしばらく聞こえてから静まった。 「誰かがここで何かの儀式をやっていたんだろう。それで違う世界につながる通路を開いたんだな。この部屋は穴の底の連中が入ってこられないようにしてあったが、引っ越しで部屋を出る時に穴をそのままにしていきやがった。本当なら穴の底の連中はこの部屋を通れないから出る事も戻る事もできないんだが、君が呪いで呼び出しちまった訳だ」 「そんな事ってあるんですか?」 「もう一度、ドアを開けて見せようか?」 茜の顔が引きつる。 「け、結構です」
ダークスーツの男はしばらく考えてから口を開いた。 「ドアの外の連中はもともとこちら側の住人じゃない。だから穴の向うに帰りたいんだろう。それでドアの外で騒いでる。だが部屋に入れないから穴に戻る事ができない。だから俺たちがこの部屋から出るためには一度、連中をこの部屋に入れるようにしてやる必要がある」 「どうやって?」 「さてね。入れなくしている仕掛けを探さないといけないな。連中を通してやればドアはちゃんと廊下に通じるハズだから外に出られると思うが、部屋ごとあっちの世界につながっちまった時はあきらめてもらうしかない」 男はそっけなく答える。 「そんな無責任な事を言わないでよ!」 茜の叩きつけるような言葉に振り返った男の眼はゾッとするほど冷たかった。 「あんたに呪殺された奴もそう思ってるだろうよ。あの世に行けるんならまだマシってもんだ」 茜はそれ以上の言葉を続ける事ができなくなった。
それから1時間、ダークスーツの男は家具を動かして残りのじゅうたんをめくってみたり、天井にまで貼り付けられていた壁紙を剥がしてみたりとあらゆる場所を丁寧に調べ、ついに結論に到達した。 部屋に穴の底の住人を入れないようにしていたのは部屋の四隅にそれぞれ打ち込まれていた数本の釘だった。ちょっと見ただけでは気づかないように巧妙に隠してある。 「鋼じゃない鉄には魔除けの効果がある。他にも何かをやってるのかもしれないが、なんにせよこの釘だろう。こいつを引き抜くと連中がすぐに入ってくるはずだ」 一度抜いた釘を穴に差し込んですぐに抜けるようにした上で、それぞれに茜の部屋にあった糸を結びつけてある。 「ドアの横に立って糸を引いてくれ。外の連中が入ってきたら君は入れ替わりに外に出る。ラッシュの電車から降りる時と同じ要領だ。難しいことはない」 そう言ってポケットから取りだした黒い手袋を付ける。
「何をするの?」 「連中を直接つかむとどんな感触がするか知ってるか? 素手で触るなんて絶対にお断りだ。君も絶対に手を触れるなよ。何が起こるかわからない。一瞬であの世行きってこともある」 「あなたは大丈夫なの?」 「俺はもう死んでるからな。道連れに穴の底に連れて行かれるのはゴメンだがね」 茜が渡された糸を取り落としそうになる。 「死んでるって何よ? 幽霊って事?」 「幽霊が家具を動かしたり、大家のかわりにやっかいな住人を助けにやってくると思うかい?」 「それもそうよね」 「わかったらドアの横に立って糸を引っ張ってくれ。さっさとすませて一杯やりたいよ。こんなやっかいな仕事だとは思わなかった」 茜は、死んでても酒は飲むんだ、と言いかけてやめた。 ダークスーツの男はドアと床下の穴を結ぶ直線上から少し離れた場所、茜のいる側に立った。目で茜に合図する。茜がゆっくりと糸を引くと釘がぽとぽとと床に落ちる。さらに引っ張るとドアががたがたと揺れてから勢いよく開いた。
ドアから黒い旋風が渦巻き、部屋になだれ込む。奔流がねじれ、逆巻き、先程ドアの外に見た巨大な顔を一瞬だけ形作り、流れて消える。 押し流される空気が咆哮を上げて大地の穴の中に吸い込まれていく。 部屋が巨大な洗濯機になったようにかき回される。部屋中の物が空中に投げ上げられ、そこら中に叩きつけられた。 大丈夫。このまま終わる。ダークスーツの男がそう思った時、空気の濁流の中から人影が飛び出した。全身が真っ黒なそいつが辺りを見まわす。 とっさに飛び出したダークスーツの男が影に掴みかかったのは、影が茜に向かって手を伸ばそうとしたその時だった。 茜が悲鳴を上げる。 だが外には出られない。 まだ黒い暴風がドアから猛烈な勢いで吹き込んでいたからだ。
ダークスーツの男は影を食い止めるのが精一杯だった。引き剥がす事も蹴り飛ばすこともできない。身体が蛇のようにのたくって絡みつき、それでもなお茜に向かって手を伸ばしていた。 相手の身体をつかんで押せば押した分だけ伸び、ねじり上げればいくらでもねじれるが力が弱まるという事がない。 上部中央の突出部に顔らしきものがあり四肢もついてるが、そいつは人というより粘つくコールタールのような影だった。 ドアから流れ込む風が収まっても茜はまだ悲鳴を上げ続けていた。 「外に出ろと言ったろう! さっさと逃げろ!」 ダークスーツの男が怒鳴りつけたが茜は両足が床に張り付いたように動かない。 「教官が! 教官が!」 茜には影の正体がわかったようだった。
ドアの外から人影が身体を投げ出すように影男に飛びついた。 その瞬間、ダークスーツの男に絡みついていた影がするりと外れ、背後から跳びかかってきた人物をからめ取ったが、ドアから飛び込んできた勢いに飛ばされて床に開いている穴へと飛び込んでしまった。 今度はダークスーツの男が飛びついてドアから飛び込んできた人物をつかんだ。 それは茜の母親だった。 泣き叫ぶわが子を見た彼女は考えるより先に身体が本能的に動いたのだろう。
穴の底に吸い込まれそうなのをダークスーツの男が必死で引き上げようとするが上がらない。竹本もすぐに加わるが2人がかりでもどうしても引き上げる事ができなかった。 茜の母親の足首に影男が絡みついていた。 粘つく身体の肩らしき部分がコブのように盛り上がり、蛇のように伸びて鎌首をもたげると、先端がパックリと口をあける。そいつが茜の母親のふくらはぎに食いつき、肉を食いちぎりはじめる。
なんとか引き上げようとがんばったが、とうとう3人の力に限界がやってきた。 握力が限界を越えて茜の母親の腕がゆっくりと滑り落ちはじめる。 「茜の事をよろしくお願いします」 そう言い残して彼女は闇の中へと吸い込まれて行った。
穴の淵で泣き叫ぶ茜をなんとかなだめてから竹本に預けて部屋から送り出す。 ダークスーツの男が携帯を取りだそうとした時に竹本が振り返った。 「僕たちがどうやっても部屋に入れなかったのにどうしてあなたは入れたんですか?」 「それは俺が死んで……企業秘密だ。これ以上は答えられない。答えるつもりもない」 立ち去る竹本を見送ってから、ダークスーツの男は電話をかけた。
翌朝、数人の作業員があらわれ、茜の部屋の洗浄を始めた。もちろん、水や洗剤だけではない、非常に特殊な目的のための洗浄作業員だ。 作業員の一人が廊下で所在なげにしていたダークスーツの男の所へ来た。 「どうやら子供を生け贄にしていたらしいです。それも5人以上。もしかしたら10人以上かもしれません。最近、増えてる例のオカルトめいた宗教の奴でしょう」 昆虫はさなぎになると、その固い殻の中で身体を溶かし、どろどろのDNAのスープになる。そのスープの中から身体を再形成してまったく違う姿となって生まれ変わる。 その昆虫の能力を手に入れて、さなぎとなって生まれ変われば何度でも若返り、永遠に生きられるようになるとそのオカルト宗教は説いてた。
「んな事ができる訳ないのにね。生まれ変わってる訳じゃなくて、生まれた時から体の中に成虫になるための細胞を持ってるだけなのに。なんとか子供を守ろうとして死んだ親が多かったから孤児がひどく増えたせいで施設が一杯でね。手が回らないもんだからよからぬ事をする奴が増えちまって。この先、この国はどうなっちまうんでしょうね」 ダークスーツの男が懐からタバコを出して火をつけてから話しはじめた。 「ここはベールゼブブの死体を埋めてあるんだ。そこに首都復興事業庁の傘下の住宅供給公社がワンルームマンションを建てた。連中の身体には超自然的な力が働いてるから、ふさわしい処理の仕方をしないと大変な事になると警告があったんだがな。昆虫は生物学的、物理学的に見て2メートルもの巨大化は不可能だ。その前に自重を外殻で支えられなくなって潰れて死ぬ。奴らは自然に生まれたんじゃないんだ。死体の処理に困ったんだろうが、物事には順序ってのがある。復興にはやるあまりいい加減な事をすれば痛いしっぺ返しを食らう」 「なるほど。そうなってるんですか。でも、今は連中を何とか撃退して、めちゃめちゃに破壊された首都の復興が最優先課題ですからね。首都復興事業庁のやる事には逆らえませんよ」 「あんたらみたいな下請けは儲かってしかたないって訳だな」 作業服の男が苦笑いする。 「そっちだって同じでしょう」 「やっかい事を押しつけられるだけさ。連中は面倒な事はみんな他所に押しつけるからな。おかげで長続きしないで廃業する所も多いよ。仕事がなくなる心配だけはないがね」
作業員が帰り、ダークスーツの男がいなくなると、住宅供給公社はすぐに新しい入居者を探しはじめた。
しばらくの間、そのマンションでは夜になると時々、母親を恋しがって呼ぶ女の声がしたという。 数ヶ月するとその声も聞かれなくなった。
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受信: 00:55, Monday, Sep 28, 2009
■講評
謎の結社、謎の男たちという都市伝説のアイテムは、個人的にすごく好きです。遺伝元の呪術的な世界観も、うまく作者さんの持つ内的世界で処理できていらっしゃる。ベールゼブブは『自然に生まれたんじゃないんだ』という考え方をもってくるところに、とくにそれを感じました。
それだけに! なにか一つでいいから目新しいものが欲しかった!! 人間でもアイテムでもいい、『異世界に繋がる穴』『正体不明の仕事人』という要素を持つ遺伝もとの物語に、変化を加えうるのは、あなたが新しく持ちこむ『何か』です。何でもいいんです。だけどその『何か』がなく、ただ引き継いだだけになってしまっている。 それが本当に惜しい。加点できない理由はそれです。 まだあと三日+アルファあります。頑張って!!
文章についてですが、『A(人物)はBしていた』という文は、主語Aを抜いても意味が理解できそうな場合、抜いちゃったほうがスッキリしますよ。 また「ダークスーツの男」というのも長いので、固有名詞をあげちゃった方が良かったかもしれません。 |
名前: あおいさかな ¦ 18:40, Saturday, Sep 12, 2009 ×
前後半で全く違う話になったように感じました。 蟲とこじつけるために、ベルゼブブを持ってきたみたいです。 異形に囲まれている緊迫した状況下で、台詞回しや文章に隙が多かったのも残念でした。
構成-1 文章-1
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名前: もりもっつあん ¦ 01:12, Thursday, Sep 17, 2009 ×
しまりがない…という印象です。 要素と要素を結ぶ線が妙に頼りない感じで、なんだか無理矢理展開してるようにも思えました。 展開はこれで良いと思うので、もうちょっと構成の整理をして欲しかったなぁと思います。
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名前: PM ¦ 18:32, Monday, Sep 21, 2009 ×
・アイディア−1 虫要素は、最初の音の喩え、最後のさなぎ宗教、ベールゼブブの死体、だけ。話のメインである穴には絡んでこず、おまけ程度に設定で出されただけ。虫の使い方が弱いと言って差し支えないと思う。申し訳ないが、この時点で私の点の付け方だと−1になる。 穴の設定などもありきたりに感じた。 ・描写と構成−1 描写、可もなく不可もなく? 文章がこなれていない気もする。出来事を淡々と描写していくだけで、ノリが悪いというか。 構成、「音に怯える茜、ダークスーツの男の登場と穴、翌朝からの締め」、大別して3シーンあるように思うが、場面が繋がっている意味・因縁が薄く、接続がちぐはぐに感じた。 もっとも他の要素に関わらず、虫の全く出て来ないコンセプト違いに思える穴のシーンを延々と読まされた時点で、私は−1にするが。というか、そんなに虫を使うのが嫌なのだろうか。呪い話なら絡めやすいと思うのだが。釘を虫に変えることすらしていない意味が分からない。 ・怖さ±0 最初の怪談めいたシーンは良いと思ったのだが、ダークスーツの男が出てきてからは、伝奇小説調になってしまったようで、いまいち。異常が日常の伝奇ノベル的世界観だと、読み手の私もそれに対応して身構えるので、恐怖を感じるハードルは跳ね上がる。話の展開そのものが、もっと怖くないと。 オチの怪談の定番の終わり方も、今さら感が漂うように思う。 ・買っても後悔しない魅力−1 虫がテーマの傑作選を買って、虫との関わりの薄い話が載っていたら、損をした気分になると思うので。内容自体も、普通を下回っているように感じた。 |
名前: わごん ¦ 06:57, Tuesday, Sep 22, 2009 ×
発想ー1 文章0 構成ー1 恐怖0 別にダークスーツの男じゃなくてもいいんじゃないでしょうか、主人公は。 心霊・妖怪系の話かと思ったので違和感が。 ベールゼブブもこの内容には合わない気がしますし、唐突感があって混乱しました。
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名前: 戯作三昧 ¦ 04:59, Wednesday, Sep 23, 2009 ×
冒頭から竹本が茜のケータイを鳴らすまでは、非常にわくわくと読み進めることができました。しかし残念なことにこの竹本の電話から、話の展開に混乱を感じてしまい、物語世界に充分に浸ることができませんでした。
ベールゼブブの死体を埋めてあるとかオカルト宗教団とか、心ひかれる設定も垣間見えているのですが、お話から少し浮いているようにも感じられました。
個人的嗜好が大きく絡んだ感想で失礼しますが、茜本人ではなくお母さんが犠牲になるのが少し納得いきませんでした。
*冒頭、竹本が出てくるまでの流れ。+1 *恐怖−1 |
名前: げんき ¦ 19:20, Wednesday, Sep 23, 2009 ×
恐怖度0 文章力0 構成力0 アイデア0 出だしは良かったのですが、読みすすめていくうちにどうも物語りに引き込まれず、集中して読むことができませんでした。頑張って長く書かれているとは思います。 |
名前: 妖面美夜 ¦ 01:51, Thursday, Sep 24, 2009 ×
御自分なりの世界観があっていいんじゃないでしょうか。 特に前半は丁寧に書かれてあると思います。
後半と前半のギャップがはたして受け入れられるかという所がある種のハードルでしょうね。 その辺りで好き嫌いがわかれるのはしかたないでしょう。
【アイデア】+1、【描写力】+1、【構成力】0、【恐怖度】0 |
名前: ユージーン ¦ 23:29, Thursday, Sep 24, 2009 ×
異音発生からダークスーツの男登場までは期待もあり、かなり面白かったのですが、やはりオチの部分はとってつけた感が強いです。 これを単体で読んだ人には、よく分からないのではないかと思いました。
アイデア 0 文章 0 構成 −1 恐怖度 0
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名前: 鶴の子 ¦ 19:15, Monday, Sep 28, 2009 ×
想い描いた事の3分の2も書けてないのではないでしょうか。構成も文章も纏まりがありません。 語る文章ではなく、見せる文章を考え、不要な情報を整理すれば、かなり印象は変わると思います。難しい試みではありますが…。
発想・0 構成・-1 文章・-1 恐怖・0 |
名前: 三面怪人 ¦ 20:26, Monday, Sep 28, 2009 ×
どうにか最後まで読みましたが・・・。 全体的に、時間の経過がそれほど長くない場面で、文章がむやみに長いように思います。 穴の底の住人にピントをあわせて、もっとシンプルな話にしても良かったんじゃないかなと感じました。 テレビや映画などの映像作品と、文章で書かれた小説とは、得意とする分野が違う部分もありますので、後半の話を中心に再度、粗筋から立ち上げられた方がいいかもしれません。
あれもこれもと、恐らくは読者を愉しませようとされて、めいっぱい作品に詰め込まれた気持ちは大切ですし、作品からもそれが良く分かるのですが、最後に情報のドル箱タワーで解説されるのは少々しんどいかと思います。
描写力・−1、構成力・−1 |
名前: 気まぐれルート66 ¦ 00:16, Wednesday, Sep 30, 2009 ×
冒頭のノリで最後まで言ってほしかったです。キーワードとなるベールゼブブの使い方もやや荒いです。何か別の設定を考えられてくっつけたほうが冒頭の奇怪なシーンが輝いたかも知れません。 とりあえずこちらの評価でお願いいたします。 |
名前: 籠 三蔵 ¦ 02:53, Thursday, Oct 01, 2009 ×
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QRコードの中に 潜む実話怪談

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