← |
2022年5月 |
→ |
日 |
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
土 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
|
18 |
19 |
20 |
21 |
22 |
23 |
24 |
25 |
26 |
27 |
28 |
29 |
30 |
31 |
|
|
|
|
|
8月の暑い日の午後。 セミがうるさいくらいに鳴いている。 アパートのすぐ裏を走る電車は通るたびに轟音とともに部屋全体を揺らし、アパート正面の道路はひっきりなしに走るトラックが排ガスを撒き散らしている。隣の部屋からは全く理解できないラップ調の音楽が聞こえ、近所の犬は通行人に向かって盛んに吠えたてている。この暑い中、どこで遊んでいるのか子供が大騒ぎをしている。 久しく掃除はしていなかったな。ゴミも溜まってしまっている。夜ともなればゴキブリがちょろちょろと這い出し、俺の体を食い漁るだろう。 何のことはない。金にまつわる話だ。 まっとうでない方法で得た金の配分を巡って奴と口論になった。奴は俺が先導してやった割には取り分が少なすぎると言いだしたのだ。しかし俺とて同じ仕事をしている。むしろ俺の方が嫌々付き合ってやったんだから、俺の取り分の方が多くもらってよかったはずだ。 それがなんともぶざまな結果になりやがって、金を奪うと言うだけで、人を殺すなんて聞いていなかった。 俺と奴は一緒に地獄へ落ちる身になったのだ。 蝉は相変わらず鳴いている。蝉は持って生まれた本能で鳴き続ける。奴はもともと血の気が多く、札付きの悪であった。持って生まれた本能で殺しを働いたのか。 そんな奴と分け前を話し合うのは無駄だったのだ。俺が刺殺されたのもあっという間だった。奴が立ちあがったかと思うと持ってきたセカンドバックの中からナイフを取り出し、俺のことを刺してきやがった。奴のナイフを見て俺も身構えたものの体当たりされてどうにもならなかった。俺はのたうち回ったがやがて絶命した。 奴は俺を刺した後、俺の取り分の金を掴むとアパートからゆっくりと出て行った。結局俺はいいように使われて刺殺され、挙句に捨てられただけだったのだ。 セミは成長して一週間から、せいぜい一カ月程度で死ぬと言われている。 俺はどうかな。俺のこの体は一週間持つかな。この暑さではすぐにでも悪臭を放ちはじめるだろう。 絶命してから3時間が経つ。刺された時の悲鳴は隣に聞こえていただろうに警察はまだやって来ない。まだ誰にも気づかれていないのか。 部屋の冷房を強めにしてあるから俺の死体は長持ちする可能性はある。無駄か。この暑さではいくらきっちり窓を閉めているとはいえこんなボロアパートでは冷房なんか焼け石に水だ。夜寝ていても時折外から排ガスの悪臭を感じる時がある。じきに俺の死臭も外に漂い始め、近所中で大騒ぎになるだろう。 いつまで俺の死体がここに放置されているだろうか。 時間がない。 警察に見つかり、捜査後に下手に供養なんてされて無縁仏に埋葬されようものなら奴の復讐が出来なくなってしまう。このまま白骨化して放置されていた方がいつまでも亡者として彷徨する事が出来る。 このままでは死んでも死にきれない。 いつまでも自分の死体を眺めるのはやめにしよう。 かならずや奴を俺と一緒に地獄へ導いてやる。 ただ、俺も、奴と一緒になって殺してしまった何の落ち度もない女性の怨恨がどのような姿で現れるのか怖くてならない。
|
■講評を書く
■ Trackback Ping URL
外国のスパマーへのトラップです(本物は下のほうを使ってください)
http://www.kaisyu.info/2009/entry-blog/trackback.cgi20090914220909
■トラックバック
この記事へのトラックバックURL(こちらが本物):
http://www.kaisyu.info/2009/entry-blog/blog.cgi/20090914220909
» 【−3】怨み死に [もけもけ もののけから] × う〜ん。淡々と終わってしまいました。何か山となる部分が欲しかったです。【アイデア】−1、【描写力】0、【構成力】−1、【恐怖�... ... 続きを読む
受信: 00:35, Tuesday, Sep 15, 2009
» 【−3】恨み死に [せんべい猫のユグドラシルから] × なんというか、最後に大きな肩すかしを食らった感じです。 怨霊になろうとする男が、殺した女を怖がるかなぁ。 自分の死体も気にしす�... ... 続きを読む
受信: 21:22, Thursday, Sep 17, 2009
» 【−1】怨み死に [日々、追憶…から] × 主人公が死んでいた…という話は余程のインパクトがないと難しくなっていると思います。淡々と独白が続き、そのまま終わってしまった感じ�... ... 続きを読む
受信: 15:58, Friday, Sep 18, 2009
» 【−3】怨み死に [峠の塩入玄米茶屋/2009から] × 何というか、雰囲気だけのような。山場らしい山場もなく、独り言で終わっている。これから化けて出ようという人間が、途方にくれてどうする、という感じである。まあ実際は途方にくれているのではなく、思案を巡らせているのかも知れないが、残念な事にあまりに淡々とし .. ... 続きを読む
受信: 18:17, Tuesday, Oct 06, 2009
■講評
雰囲気がすごくいいですね。 周囲の音や匂いに気を配ったり、自分の死体を眺めたり、冷静な主人公が不気味です。案外、一回死ぬと冷静になれるのかも。 女性の遺恨のくだりはやや唐突な印象です。複線を張っていただきたかった。 ことの発端としては十分、ただこれ一本だとやや弱いかな、と思いました。
文章+1 雰囲気+1 オチ-1 |
名前: もりもっつあん ¦ 00:14, Friday, Sep 18, 2009 ×
発想ー1 文章−1 構成ー1 恐怖0 うーん、セミを例えに使う必然性もないし、魅力的な設定もない。 復讐のためいつまでも亡者として彷徨する事が目的であるのに、このままでは死んでも死にきれないというのも変です。 オチで女性の怨恨が…とありますが、読んでいるほうはそもそも女性が殺されているということを知らないし、話の中で示唆されてもいない。 このオチにしたいのであれば、女性の死に関してなにか伏線を張っておく必要があったと思います。 |
名前: 戯作三昧 ¦ 00:32, Wednesday, Sep 23, 2009 ×
・アイディア±0 死者の語り、というのもよくある手法かと。内容はドロドロッとそれっぽくて良いかと思うが、プラスにするほど独創的には感じなかった。 虫の使い方……、遺伝元の設定を考えるに、死者=蝉、という扱いで、これは虫を使っている、と考えるべきなのだろうか。関係ないが「夜の蝉」と並んでいるのが面白い。 ・描写と構成±0 可もなく不可もなく。書くべき事は書けているかと。 ・怖さ±0 多少雰囲気はあると思うが、あまり怖くは感じなかった。主人公も女性の怨恨を恐れているのは、面白い。そこを発展させると怖く感じたかもしれない。最後に主人公が、被害者の女性の視線を感じるとか。 ・買っても後悔しない魅力±0 可もなく不可もなく。悪くはないと思う。 |
名前: わごん ¦ 06:56, Wednesday, Sep 23, 2009 ×
途中、蝉の描写が入ってくるんで、なんかこう上手く絡んだオチになるのかなぁと思ったら、何も関係ない結末を迎えたので、逆にビックリしました。 これといって目を引く所もなく、なんていうか平坦な話だったなぁという印象です。
|
名前: PM ¦ 19:41, Wednesday, Sep 23, 2009 ×
恐怖度0 文章力0 構成力0 アイデア0 亡者の無念は伝わってくるのですが、これだけでは事件の全貌がわからないので、いまいち状況がリアルに浮んできませんでした。最後に唐突に出てきた女性って誰ですか? |
名前: 妖面美夜 ¦ 20:25, Thursday, Sep 24, 2009 ×
オチの女性、初読時は遺伝元のあの人かなと思ったのですが、再読してどうも違うようだと気付きました。それでどうしてもこの女性が誰なのか知りたくて想像したり、再読を繰り返したりしたのですが、私にはとうとう判りませんでした。作品の雰囲気はとても好みなのですが、オチが気がかりすぎて怖いと思う余裕がなくなってしまったのが残念です。
雰囲気+1 恐怖−1 |
名前: げんき ¦ 23:47, Saturday, Sep 26, 2009 ×
淡々と事実だけを説明しただけのように思えます。 淡々と書きながらも、読者を惹き付けるのは大変難しく、この作品においてはそれが裏目に出ているようです。 もう少し色をつけて、まずは見せる文章・起伏のはっきりした文章を書いてみるのも手です。そこから引いていくと、狙い通りの淡々とした文章に辿り着けるかもしれません。
発想・0 構成・-1 文章・-1 恐怖・0 |
名前: 三面怪人 ¦ 23:55, Monday, Sep 28, 2009 ×
無常感はあるのですが、どうも淡々と何も起こらずに終わってしまった感じです。 セミとの文中の繋がり具合も、どうも収まりが悪い気がします。
アイデア 0 文章 −1 構成 −1 恐怖度 0
|
名前: 鶴の子 ¦ 08:07, Tuesday, Sep 29, 2009 ×
丁寧に書かれていると思います。 自分が死んでいる必要はないんだけど、最後のオチを導くために読者を疑問符を使って上手く引っ張っている。
でも、ちょっともったいないかな。 自分が死んでいる、自分を恨んで死んでいる人がいる、自分は生から死へと状況が変化している。 この3要素を組み合わせれば、展開は確実に、「自分が死んだら殺した相手が待っていた」とつながるはず。 逆に、読者がそう予測しているのなら、その予測を上手く裏切る展開もできる。 そこからぐーんとお話の展開は広がったんじゃないでしょうか。 実にもったいない。
【アイデア】+1、【描写力】+1、【構成力】0、【恐怖度】0 |
名前: ユージーン ¦ 20:01, Tuesday, Sep 29, 2009 ×
出だしのの雰囲気も良く、主人公の恨み節もすんなり感情移入が行える。ありきたりゆえの入りやすい導入。これがこのまま終ってしまっているのは勿体無いかなと。蝉やその他の小道具を駆使して、刺し殺した相手をどう追い詰めようかというところまでは、何とか描いて欲しかったかも知れません。そこにまた、殺された女を上手く絡めれは、結構な秀作になったかも知れません。 この評価でお願いいたします。
|
名前: 籠 三蔵 ¦ 07:22, Wednesday, Sep 30, 2009 ×
あ、あれ?ここで終わってしまうとは・・・。 いろいろあって死んでいった主人公ですから、死後ももっと活躍させてほしかったですね。 見つかった後の方が作品的には盛り上がっていたと思うので、読者としてはそのへんを見たかったです。
アイデア・−1、描写力・−1 |
名前: 気まぐれルート66 ¦ 18:21, Wednesday, Sep 30, 2009 ×
悪者(古い表現ですみません)が主人公だと基本的に自分は何とも思わないんですよね・・・。 世の中には、このパターンでも怖い話はあるんですが、それらは一体どういう条件だろうか?と考えてしまいました。 |
名前: 読書愛好家 ¦ 20:50, Thursday, Oct 01, 2009 ×
死んで腐ってもまだ恨んだり、恐れたりとは、なんと浅ましくも哀れなことでしょう。汚部屋の話かと思ったらそういうことだったんですね。 札つきの悪とは生きてる内に縁きっとかなきゃ駄目だねw。 これも文の始めに一字空けがあるとよかったな。 |
名前: あおいさかな ¦ 23:41, Thursday, Oct 01, 2009 ×
|
|
QRコードの中に 潜む実話怪談

|
■■■ ◆◆◆
|