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おう、人面疽の熊八ってもんだ。よろしくな。 こん間、呪詛に呼ばれてよぉ、とある人間の右足の裏に憑いたんよ。したらそいつ、酷ぇ水虫で。冗談じゃねぇ。爪先に近かったもんだから、瞼は痒い、鼻ん穴はムズムズして水っ垂れが止まらねぇ、唇の皮なんかベロンベロンと剥けやがる。てめぇ、笑ってねぇで想像してみろや。日中、蒸れた安全靴ん中に足ごと突っ込まれてる俺っちの苦境をよ。 手がねぇから掻くことも出来やしねぇんだ。 そん時ゃ古式ゆかしく恨み言ぉ呟きながら広がってって、そのまんま俺っちの居座った右足が頭、奴さんの頭が右足、ってな具合に躯を乗っ取ってやるってぇ趣向だったんだが……、相手の腰辺りから自分の腕が生えてきた時ゃぁ本当に快感だったぜぇ……。一日中、痒い所を掻きまくってた。 でもな、いいことばかりじゃねぇ。あろうことか、水虫まで俺っちの成長に合わせてついてきた。全身の皮膚に広がり始めやがったんだ。 逆に、躯を奪われる当人は清々しい表情してやんの。見ろよ、この右足の裏の豆粒。これが、そいつ。痒みは全て俺っちが引き受けてっから、こいつには伝わらねぇ訳よ。 ……あん、何か言ってんな。んだと? てめぇがてめぇで儀式して? わざと……自分の足ん裏に俺っちを取り憑かせたってのかぁっ? 水虫から逃れる為だけに、こうなることが分かってて?! っざけ……おい、幸せそうな顔して消えてくんじゃねぇよ!! ……ちっ、完全に俺っちに吸収されちまったな。こうなると、この躯は晴れて人面疽の物ってことになんだが……、畜生! 痒い!! 肌は菌でふやけきっちまってグズグズ、眼球も濁って物が良く見えねぇ。立てば全身痒みの焼き鏝刑、座れば膝ん裏と尻ん谷間でカイカイダンス、インキンタムシィぶらっ下げて歩く姿は水虫ゾンビっとくらぁ! 堪らず爪で掻きゃぁ、血が滲むわ膿が出るわ。治る時の瘡蓋が余計に痒くなるし……、気ぃ狂うぜ……っ!! 最近じゃぁ魚の目まで併発して、肌やら腹やらゼニゴケみたいによう。こっちは服ぅ着てると痛ぇんだ。 ヒヒヒ、俺っちも誰か仲間の人面疽ぉ喚んで、足の裏にひっつけてみっかなぁ。お前ぇとか。 それとも、こんな席に何食わぬ顔で混ざって妖怪の怪談話ぃ盗み聞きしてる、そこの人間とかよ。
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» 【+2】水虫と人面疽 [もけもけ もののけから] × これまた、トリッキーな(笑面白いですよ。よく考えられていますよ。でも、オチだけは別な方が良かったと思います。(もっと強烈で繝... ... 続きを読む
受信: 16:13, Wednesday, Sep 16, 2009
» 【+2】水虫と人面疽 [せんべい猫のユグドラシルから] × おいおい熊さんよ、あんた、病院嫌いなのかい?(^^; そんなヤボは置いといて。 うん。大いにアリです。この感じ。 ラストは�... ... 続きを読む
受信: 23:38, Thursday, Sep 17, 2009
» 【+3】水虫と人面疽 [日々、追憶…から] × なるほど、と。恐怖は感じない、でも面白い。発想が凄いのと、それをうまく楽語調に仕立て上げた筆力が素晴らしいと思いました。【ア�... ... 続きを読む
受信: 18:50, Saturday, Sep 19, 2009
» 【+2】水虫と人面疽 [峠の塩入玄米茶屋/2009から] × なるほど。考えたなぁ。確かに「虫」には違いない。ここは発想勝ちと考えても良いだろう。キャラもなかなか味わいがあって良い。ただ、恐怖は感じなかった。ラストは前半に比べるとやや印象が薄いので、別な展開があってもよかったのではなかろうか。発想 + ... 続きを読む
受信: 03:07, Monday, Sep 28, 2009
■講評
こいつはよろしゅうございますな。 水「虫」の地口でルールを上手にかわしなさった。嫌いやおまへんな。 全体を通しておかしみがあって、せやけど最後にはヒヤッとさせる。 よお出来たお話やと思います。こうゆうの見たかったんですわ。わたい。
構成+1 キャラクター+1 絶望(水虫の)+1 好みで+1
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名前: もりもっつあん ¦ 00:52, Friday, Sep 18, 2009 ×
発想+1 文章0 構成0 恐怖0 人面疽が憑いた先で水虫に侵されて、というアイデアは面白いと思いました。 宿主が幸せそうな顔して吸収されていくところも、笑いを誘って良かったです。 それだけにそのあとの展開にあまり意外性がないのが残念だなと。 |
名前: 戯作三昧 ¦ 20:26, Tuesday, Sep 22, 2009 ×
なるほど。 良い発想ですね。 怖さはないものの、展開や人面疽の使い方がよく練られていて、面白かったです。
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名前: PM ¦ 20:01, Wednesday, Sep 23, 2009 ×
私の理解力が足りないのか、ノリノリでリズミカルな文章の筈なのに、するするとは頭に入って来にくかったです。 所々で何度か後ろに戻りながら、ここはどういう表現・描写なんだろうかと考え考え読みました。
人面疽と水虫をくっつけるアイデアはそうそう出てくるものでもないので、これだけでもなかなかの想像力だと思います。 ただ、最後の呼びかけは結構見かける手法なので、その点での目新しさは感じなかったです。
アイデア・1 |
名前: 気まぐれルート66 ¦ 21:48, Wednesday, Sep 23, 2009 ×
+2.5を四捨五入 ・アイディア+1 人面疽の独白、人間の目的、などがユニークで個性的だと思った。 ・描写と構成±0 可もなく不可もなく。「見ろよ、〜。これが、そいつ。」のくだりは、急展開のテンポがあって良いと思う。 ・怖さ+0.5 「〜、気ぃ狂うぜ……っ!!」までは、「ああ、嫌だねぇ」程度の気持ちだった。しかし、「魚の目まで〜ゼニゴケみたいによう。」、ここがかなり嫌だった。 最後の一文はありがちすぎて、直前までの評価を大幅に下げていると思う。無いと物足りないが、別の気の利いたオチなら良かったと思う。 ・買っても後悔しない魅力+1 個性的だと思ったので。人面疽や水虫の特性も上手く使われていると思う。 |
名前: わごん ¦ 23:38, Wednesday, Sep 23, 2009 ×
恐怖 1 発想 2 書き出しから目を引くものでしたが、読んでみるとますます面白かったです。水虫から逃れる為に消えることを選ぶ、という、妙な価値判断がまた笑えました。恐ろしいはずの人面疽が、不思議と可哀想に感じました。 |
名前: 白長須鯨 ¦ 16:48, Thursday, Sep 24, 2009 ×
恐怖度0 文章力0 構成力0 アイデア0 独白型で皮肉が利いていておもしろくはあります。ただ、少しも恐怖を感じなかった所が惜しいです。 |
名前: 妖面美夜 ¦ 12:50, Friday, Sep 25, 2009 ×
語り口調がお話に合っていて、面白かったです! 特に誰でもないのですが、塩辛声の中年男性の声で自然に脳内再生されました。
>肌やら腹やらゼニゴケみたいによう。 ここが最高に厭な描写です。真剣に厭です。皮膚に異常が現れるのって、根源的な恐怖を感じてしかたありません。
*文体+1 *描写+1 *恐怖+1 |
名前: げんき ¦ 00:50, Sunday, Sep 27, 2009 ×
これはまた、大変によござんす。聴いていて、こう、すかぁっとしますな。大変にお話の上手な方とお見受けいたしやす。わたいもね、こういう世界は嫌いじゃありやせん。 むしろ大好物でして。
発想・1 構成・1 文章・1 恐怖・0 |
名前: 三面怪人 ¦ 00:31, Tuesday, Sep 29, 2009 ×
人面瘡が、うまい具合にオチと矛盾せず妖怪の怪談会に出られたところに力業を感じました。
アイデア 1 文章 0 構成 1 恐怖度 0
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名前: 鶴の子 ¦ 09:09, Tuesday, Sep 29, 2009 ×
なるほど。 お話を全部ひっくり返す手際はおみごと。 笑わされました。 自分で自分を呪うってアイディアはおもしろい。
でも、なんで自分を消滅させたのか、ってのが気になる。 そのあたりを広げて行くとさらにおもしろくなっていくと思うんですよ。 がんばってみて下さい。
【アイデア】+1、【描写力】0、【構成力】0、【おもしろ度】+1 |
名前: ユージーン ¦ 20:42, Tuesday, Sep 29, 2009 ×
落語チックな文体と、これを短く纏め上げた点がいいと思います。ただ、人面疽があまりにも爽やか過ぎて、本当に落語の小噺のように落ちてしまっていて、ホラーという視点の計りに掛けてしまいますとストレート過ぎるかなというのが正直な印象でしたのでこの評価で。 仮に「創作怪談」というくくりでしたら、かなりな秀作かなと思いました。 |
名前: 籠 三蔵 ¦ 07:13, Wednesday, Sep 30, 2009 ×
大抵の水虫は痒くないんですよ。と関係のないことを思ってしまい、うまく入りこめませんでした。 しかし、しつこい疾患なのでネタとしては良いと思います。
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名前: 読書愛好家 ¦ 20:47, Thursday, Oct 01, 2009 ×
ビジュアルが想像しにくかったです。特に > それとも、こんな席に何食わぬ顔で混ざって妖怪の怪談話ぃ盗み聞きしてる、そこの人間とかよ。 のトコとか。主人公語り形式の弱点を補えていないです。
よく駅とか繁華街とかで、薄汚れた身なりの50くらいのオジサン(ちょっとイッちゃってる)が政治や日本の将来について大声でまくし立てたりしてたりしますが、あんな情景を思い浮かべていました。 |
名前: あおいさかな ¦ 01:40, Friday, Oct 02, 2009 ×
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QRコードの中に 潜む実話怪談

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