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スワンソング
僕の声ははっきりと聞こえていますか?
初めてテープに声を吹き込むので、少し緊張しています。
このレコーダーを手にとってくれた、貴方は誰でしょうか。
一番最初に聴いてるのは、おかあさんかな。
病室を勝手に抜け出してごめんなさい。
僕には手術を受けない理由があるんです。


父が単身赴任先で死んだのは、去年のことでした。
無事故無違反だった父の車は、見晴らしの良い一本道で突然、蛇行運転をし、そのまま電柱に突っ込んだそうです。
警察も、親族も、首を捻っていたのを覚えています。
僕は父の書斎を譲り受け、自分の部屋として使うようになりました。
父の匂いや身の回り品が残る部屋で暮していると、父がそばにいてくれるような気がして、悲しみに耐えることができました。


父の遺品の中に、年代物のエレキギターがありました。
もっともただ古いだけで、価値はあまりなかったようですが。
中学に入り、僕はギターに熱中しました。本当は大音量でかき鳴らしたかったけれど、説教が怖くてもっぱらイヤホンをアンプにつなぎ、父の遺した黙々とコピーする。毎日そんな調子でした。


異変が起きたのは1ヵ月後、下手なソロが弾けるようになった頃です。
いつものように弾いていると、不快なハウリングが耳をつんざきました。
配線やギターをチェックしてみたのですが、異常はありません。
ハウリングは僕の耳の中でしていたのです。
断続的なハウリングは、やがて幾重にも重なったノイズへと変りました。
昼夜問わず突然鳴り響く轟音。夜も眠れず周囲の音は聞こえない。
一歩踏み出すごとに、ふらついてしまう。
僕の神経は1弦のように、どんどん断裂していきました。
その頃には確信していました。父もきっと、この音に取り殺されたんだと。


母に引きずられるようにして、病院に運ばれました。
僕の耳の中に巣食う虫、ミミヒゼンダニというそうですが、この虫が外耳道を食い荒らし、音を立てている、と。
災厄の元凶はギターではなく、ヘッドホンだったのです。
父のヘッドホンに潜んでいた虫が、僕の両耳に侵入、繁殖し、いまや三半規管まで食い荒らし、耳鳴りや眩暈を起こしていたのです。
手術さえ受ければ回復できると、先生は筆談で僕に告げました。


だけど僕は、手術を受けようとは思いません。
僕の耳の中では今、世にも美しい曲が鳴っているのです。
幾重にも重なったノイズが、重厚で荘厳な、感情を魂を存在を揺さぶる曲を奏で続けています。これからの音を全て引き換えにしてもいいくらいの快楽が、直接脳を揺さぶっているのです。
父もおそらく、この曲を聴きながら死んでいったのでしょう。
この曲は父と僕が、未来と引き換えに生み出し育んだスワンソングです。
この世から抹消してしまうなんて、僕にはできない。


僕は今から、可能な限りの場所に、耳の中の虫を放しにいきます。
公衆電話。CDショップの試聴機。飛行機からヘッドホン売り場まで。
一匹でも誰かの耳に入れば、あとは僕と同じように。
世界中の人に直接、僕の歌は広がっていくでしょう。
僕を探して感染源を聞こうとしても無駄です。
命は惜しくはない。もう歩けなくなったらこの世を去るつもりですから。
ここまで長々と聴いていただいてありがとうございます。もう、移動したことでしょう。
聞こえてきませんか。幽かなノイズが。僕らの壮大な曲のイントロが。
ねえ、レコーダーに厳重に固定されたイヤホンでこれを聴いている貴方。
僕の声はまだ、はっきりと聞こえていますか?



01:19, Wednesday, Sep 16, 2009 ¦ 固定リンク ¦ 講評(16) ¦ 講評を書く ¦ トラックバック(4) ¦ 携帯


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なるほどね。一見、ショートとして上手く纏まっているように見えます。ただ、「耳の中の虫を放しにいきます」で違和感が。自分の意思で... ... 続きを読む

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 綺麗にまとまっていると思います。 ただ、最後はあまりにも語りすぎかなぁ。『僕は今から〜』から『〜この世を去るつもりですから』ま�... ... 続きを読む

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根本的な間違いだと思うのだが、ミミヒゼンダニは耳垢などを食餌としているので、他のダニ類と違って皮膚を穿孔する事はない。つまり、ダニによるアレルギー反応で炎症を起こす事はあっても、耳の中を食い荒らす事はないのである。また、ペットを飼っている人には馴染み .. ... 続きを読む

受信: 00:42, Tuesday, Sep 29, 2009

■講評

私には新鮮でした。
良質だと思います。

アイディア 1
描写力   0
構成力   1
恐怖度  −1

名前: ユーコー ¦ 21:25, Wednesday, Sep 16, 2009 ×


私には新鮮でした。
良質だと思います。

アイディア 1
描写力   0
構成力   1
恐怖度  −1

名前: ユーコー ¦ 21:25, Wednesday, Sep 16, 2009 ×


細かい設定の不備が気になります。
ダニが耳から出て行く理由や、居なくなったら主人公に聞こえる曲は変化しないか、とか。
感染者のものと知っていて、ヘッドホンを使う人がいるとは思えません。
もう少し調律が必要な一作だと思います。

アイデア+1
裏づけ−1

名前: もりもっつあん ¦ 02:00, Friday, Sep 18, 2009 ×


発想ー1 文章0 構成0 恐怖ー1
イヤホンを介して不特定多数に虫を感染させるという結末は、どうにもお粗末といわざるをえません。
この方法で世界中に広がるかというのも疑問ですし、聞いた時点でレコーダーを処分、手術を受ければ治るようだし。

名前: 戯作三昧 ¦ 07:36, Monday, Sep 21, 2009 ×


恐怖度 1
雰囲気 1
恐ろしくも美しい物語だと思います。虫、というよりは、音楽に取り付かれた物語であると感じました。

名前: 白長須鯨 ¦ 19:42, Wednesday, Sep 23, 2009 ×


いろいろと考えておられるのですが、やはりダニや伝染の設定はかなり飛躍しすぎな気がしますし、書き出しも少し変に感じます。
最初に聞いているのがお母さんかな?と喋るのなら、親子の間で分かりきっているだろう父の話から始めるのはちょっとおかしいような気がしました。
リアルさを出そうとこのように書かれたのかもしれませんが、いっその事、母以外の相手を最初から想定して、不特定多数に向けて喋るところから始めても良かったのではと思います。

僕が不特定多数を伝染させるに至る流れも淡々としているので、おかしくなる様子の描写も殆どなく、スワンソングにとりつかれた僕の気持ちに何とも共感しにくかったです。
生前の父の様子を事故よりも前の時点でもう少し書き込んであれば、不吉な前兆を匂わせることが出来たのではないかなと思います。

肝心のスワンソングがどれくらいのものなのか、「幾重にも重なったノイズが、重厚で荘厳な、感情を魂を存在を揺さぶる曲」では、分かるようでよく分からないので、この作品を読んでいて厭なものを聞いてしまった!という驚きと恐怖があまり伝わってきませんでした。

これを原案にして、みっしりと濃く描いたところで、街中へふらっと出ていくところで終わった方が良かったかなと思います。

名前: 気まぐれルート66 ¦ 00:42, Thursday, Sep 24, 2009 ×


 +2.5を四捨五入
・アイディア+1
 ミミヒゼンダニのやることが独創的で面白いと思う。架空ではなく実在の虫を使うことで、リアリティを増そうという企みだろうか? 感染手段も日常に溶け込んでいて、実に嫌な感じ。
・描写と構成±0
 可もあり不可もあり。発症していく様子は分かりやすくて良いと思う。「〜、重厚で荘厳な、〜」前後からは、暗黒神話的な情緒を感じた(ただ私は、まんま「冒涜的なフルートの音」とかの用語を出されたりすると、萎えて点を引く人間だが)。
 しかし、時間経過でミスをしていると思う。「異変が起きたのは〜」を見る限り、ダニの潜伏期間は一ヶ月。この話をイヤホンで聞いていただけでは、曲のイントロは聞こえてこないのではないか。既に言われている、病院に行けば治るだろう、というのは、まぁ曲が聞こえてきたら皆病院に行く気が失せるんだろう、という感じで納得できるが。
 オチの「ねえ、〜〜聞こえていますか?」は、ちょいとイヤホンの要素が唐突かと。冒頭で、イヤホンを嵌めながら聞いていることを出しておかないと。何か細工がしてあって、外そうと思っても外せない、とかだと面白いかも知れない。読んでいる人間が「あれ? さっきイヤホンしながら聞いてるって書いてあったけど、それってマズくない?」と危機感を覚えるような。
 細かいこと。「父の遺した黙々とコピーする。」、名詞が抜けている?

・怖さ+0.5
 耳垢のついた自分のヘッドホンが気になった。変な虫が繁殖しない内に、掃除をしようと思う。
・買っても後悔しない魅力+1
 ミミヒゼンダニを曲や三半規管に絡めた使い方が独創的で面白いと思ったので。

名前: わごん ¦ 16:45, Friday, Sep 25, 2009 ×


大筋はとても良いかと思います。
あとは今のままではちょっと無理のある細かい設定の裏づけと、それらの整合性が取れれていれば、もう1点差し上げたいところですね。

名前: PM ¦ 19:47, Saturday, Sep 26, 2009 ×


恐怖度0
文章力0
構成力0
アイデア0
アイデアは素晴らしいと思いますが、ちょっとこれだけでは物足りないです。
主人公の独白だけで終わりなので、もうひと展開欲しかったです。

名前: 妖面美夜 ¦ 22:30, Saturday, Sep 26, 2009 ×


この作品は、六文節目までの雰囲気が秀逸です。
さあ、どうなって行く?と期待を持たせて戴いたところで、いきなりトーンが上がり過ぎてしまったような印象を持ってしまいました。
その部分が評価の分かれ目だったと思います。
但し先にも述べましたように、ゼロやマイナスを付けるという部分にまでは至りませんので、この評価でお願いしたいと思います。

名前: 籠 三蔵 ¦ 22:43, Tuesday, Sep 29, 2009 ×


美しい話ですね。しかもしみじみ怖いです。少年の信念は、もちろん他人には狂気としか映らないでしょう。しかし心の奥ではうっかり理解してしまいそうで、怖い。そういう種類の恐怖がすごく伝わってきました。

*文体+1 *恐怖+1

名前: げんき ¦ 00:01, Wednesday, Sep 30, 2009 ×


 嫌な話だねえ。
 でもまあ、嫌な話だと思わせたら勝ちのゲームだからね。
 おみごと。

【アイデア】+1、【描写力】+1、【構成力】0、【恐怖度】0

名前: ユージーン ¦ 00:16, Wednesday, Sep 30, 2009 ×


事前の下調べは徹底して行うべきです。残念ながら、感染は望めないでしょう。この少年は、犬死にですね。

アイディアは良かったのですが、活かしきれていません。

発想・0 構成・-1 文章・-1 恐怖・-1

名前: 三面怪人 ¦ 01:25, Wednesday, Sep 30, 2009 ×


ミミヒゼンダニが耳の中で奏でる音楽が美しかったという設定は分かるのですが、誰に感染させても同じように聞こえるのかという点と、そこまでして感染を広げさせたいという動機部分がちょっと弱いように思いました。

アイデア    1
文章      0
構成     −1
恐怖度      0


名前: 鶴の子 ¦ 03:01, Wednesday, Sep 30, 2009 ×


とても好きな文章です。ただ本当に素晴らしい音なのか、感染して脳が錯覚しているのかどっちだろう・・とつまらない疑問をもってしまったせいで怖がりきれませんでした。
ところで、スワンソングとは?と思ったのは自分だけなんでしょうか?結局、調べてしまいました。

名前: 読書愛好家 ¦ 20:16, Thursday, Oct 01, 2009 ×


 実は独白形式って一回しか書いたこと無いから参考になることは言えないケド……。
 ちょっと主人公が大人しすぎるかな。だから淡々としたまま流れてしまった。書くまでは作者の中にしか存在しない肝心のスワンソングの在りようを突き詰めて、その正体に出来る限り言葉を迫らせていくプロセスが大切だったと思うんだ。
 その段階があるからこそ、広めようとする主人公が狂気の人となるか、熱心な普及少年となるかが分かれるんだと思います。
 

名前: あおいさかな ¦ 23:37, Thursday, Oct 01, 2009 ×


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