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虹色の部屋
男は足音を耳にしてドアロックを外した。 車の近くに来てわざと音を立ててくれたのだ。 普段は狼のように
静かに歩く。
助手席側のドアが開いて、短髪でがっしりした人物が滑り込んできた。 三十代にも四十代にも見える。
「ウチの事務所ではマズイのかい。」 この、街で一番古いレジャーホテルの主人は、そう挨拶した。
男の顧客であり、友人でもある。
「念には念を。 それに、あそこで何かあったら、どうせ片付けるのは俺だから。 タダ働きになるだろ。」
お茶ぐらいは出すという主人の返答に男は鼻を鳴らした。
二人は、小高い丘に建つ市民図書館の裏駐車場にいた。 平日の午前中なので、サボりの営業車が数台停車している
だけであったが、男はそれらからも距離をとり、敷地を囲む森に尻を入れる形で停めていた。 
街でこの森だけは絶対にネットが繋がらない。
「終わったんだな。」
ひとしきり雑談を交わした後、主人の方から切りだした。
「昨日。 返すほかなかった。」男はそう言った後、大きく溜息を吐いた。その様な素振りを主人は初めて
目にした。それ故に男の苦渋が推しはかられた。

事の発端、いや、罠の発覚は四ヶ月前に遡る。
いつものごとく、ライフワークの怪異譚収集に西へ東へと電脳界を奔走していた主人は、〔金髪の九相図 〕(実写)
を載せたサイトがアップしたとの情報を得た。 死体の写真など珍しくない世界だが、東の宗教観を西洋人の死体を
使って表現しようとする意図に興味を覚え、訪ねてみることにした。
ところが、一週間を費やしても全く辿りつくことができなかった。 最新最強の検索ツールで思いつく限りの語彙を
試し、幾つもの掲示板で情報を募っても、求めるサイトへの道標さえ見つけることができないのだ。
ゴールデンウイークが三日後に迫ったところで探索は打ち切られた。 本業の書き入れ時である。
そして、大型連休が明けた数日後、唐突に〔お探しのサイトの件〕というメールが届いた。

               お探しのサイトはここから↓

                         虹色の部屋

                   http//www.△△△/koharu/



早速アドレスを訪ねてみたが、タイトルは違っていた。 どうやら、個人のHPらしい。 サイトマップにも
それらしい表記は無い。 
一つ一つコンテンツを当たり、ようやくリンク先の一つにそれを見つけることができた。
バナーをクリックして数秒後、タイトルと入退室ボタンのみの簡素なページが現れた。
タイトルは二段組で、〔の〕から生じ緩いカーブを描いて〔部〕へと広がる虹のイラストが付いている。


                          虹 色 の

                        部  屋





                        入室   退室



入室ボタンにカーソルを合わせようとした瞬間、パソコンがテーブルの上を滑り出した。
落下寸前で捕まえる。 と、床を這わせていたケーブル類が1メートル程持ち上がり勢いよく宙を引かれ、
大きな音たてて千切れた。 突然始まり一瞬で納まった。 
ふとディスプレイを見ると、ダウンロード中のアイコンが出ていた。 バッテリー内臓なので電源は切れていない。
完了の音とアイコンが出た。 有り得ない。
ケーブルの千切れた辺りに目をやると、フローリングの床に傷が付いていた。 かつて何度となく目にした爪跡
である。
カリカリというハードディスクの音が耳につく。 頭の皮がチリチリする。「ヤバそうだな。」独り言が主人の口
から洩れた。
経験上、回線が切れた状態でダウンロードが完了したことは無かったし、これほどの警告を受けたのも初めて
だった。 
ディスプレイ上では、不機嫌な時特有の移頁儀式が始まっていた。 まるで虫の群れが侵食するかのごと、
画面の表示が上部からゆっくりと潰されてゆく。
見慣れた光景は、侵食がタイトルに及んだ時に変容した。 タイトル枠内の色が反転し、右端から反時計回りに
漢字変換が解け、かな文字へ戻り始めた。
主人には最初の2文字で十分であった。 上段全てが解ける前にノートパソコンの蓋を閉じた。
電源ボタンは反応しないと考えての行為だった。
すぐさま主人は男に連絡をとった。 〔祓い〕を生業とする人間で、大切な腐れ縁である。

それから約三ヶ月の間に、この件は密かに大事となっていった。
男とは翌日に会って以来、昨日まで電話でのやり取りだけになっていた。最初の経過報告まで十日あまりあった。
主人が誘い込まれかけたサイトは、死体に強い関心を持つ人間を狙って仕掛けられたものだった。
サイトの中には7つのコンテンツがあり、全てに、ゲストを自覚のないまま、呪詛の道具かあるいは対象そのもの
にしてしまう細工が施されていた。
二度目の報告は翌月の中旬だった。
〔金髪の九相図〕は、ゲストを道具とする類のコンテンツ内に、2つの役目で存在した。
主人の場合同様に、ゲストを獲得するための餌。
あくまで〔日本女性の九相図〕にこだわるメンバーを選るためのフィルター。
三度目はすぐ翌週で、最後の経過報告となった。
〔黒髪の九相図〕が見つかった。
それは進行中の呪詛だった。
対象者も見つけた。 
九相図はその女性の写真を加工して作っていた。
メンバーは写真の女がまだ生きているとは知らずに、その腐れていく様を妄想し、目にすることを願ってアクセス
する。
「胸糞の悪い。  回数いかないと次の相が見られないよう、ゲーム感覚で作ってやがる。」電話の向こうで
男は毒づいていた。
腐れ進む事を願ってクリックする度、その念は呪詛を進め、自らは深く深く関わることになる。
主人が女性の容態を尋ねると、重態だと答えた。 病床のあちらこちらで蛆虫を見かけるようになったとも
付け加えた。  
しばらくは団体行動になるので連絡しない旨を伝え、男は報告を締めくくった。
そして昨日男から主人に連絡があり、今結末が語られようとしている。

「かけられていた呪詛は解いた。 ただし、生きていけるかどうかは俺にはわからない。」男は言葉を切り、
唇を噛み締めると続けた。
「呪詛は、何も知らずに加担してしまったメンバーに跳ね返る。 死人が出ると思う。」
「申しわけない。 俺のせいでキツイ思いをさせてしまった。」 主人は心から男に詫びた。
男は何も言わずただ頷いた。 皮肉屋で、時として横柄な主人の、この一本気が好きなのだ。
木漏れ日の下、主人は小春という画家を、男は仕掛けの張本人を捜すことを心に決めた。



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 呪いのロジックはいい発想だと思います。 惜しむらくは、そのロジックに至るまでの物語が平板で場面転換も唐突、登場人物の会話も当人達... ... 続きを読む

受信: 23:07, Wednesday, Dec 16, 2009

■講評

攻殻機動隊とネットに興味がない人は
「…だから何だろう…?」
と思うと思います…。
小春がとってつけた様に出てきて、印象をさらに悪くしているような…。
もうちょっと、読みやすくする工夫をしてほしかったです。

名前: ほおづき ¦ 14:50, Tuesday, Dec 15, 2009 ×


「……を元に警察の捜査が始まった。」で終わる松本清張の短編があったなぁ。手元にないから正確じゃないけど、「鬼畜」だったっけ。
ただこれは、二人の「捜査」が始まるそれ以前に「何が終わっていたか」、それが殆ど書かれていなくてもどかしいです。ここから二人が何をどう調べて何が明らかになるのか、読みたかったなぁ。
多分、従来のホラーにない、新しいことをやりたかったんだと思います。それは大変なことです。
茨の道を突き進みましょう……お互い。
頑張ってください(+1)。

名前: あおいさかな ¦ 21:41, Wednesday, Dec 16, 2009 ×


なんという寸止め。
好みの世界観と題材だっただけに、リアルに肩を落としました。
妄想や脳内補完は趣味ですが、もうちょっと材料が欲しかったというのが正直な感想です。

*設定+1 

名前: げんき ¦ 21:49, Wednesday, Dec 16, 2009 ×


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